150 / 248
第112話 こういうのを『ざまぁ』
しおりを挟む
これも血は争えないということなのかも……ミロアは思わずにはいられなかった。
「そして、その場で修羅場になったのですね」
「そうだな、あまりにもスターナにつきまとうハトロイに我慢の限界を迎えた私は怒りをむき出しにしたのだ。もうスターナに関わるなとな。それでも諦めるつもりのなかったハトロイは私に決闘を申し込んできたものだから見苦しいものだったよ」
「決闘までしたのですか?」
「ああ、圧倒してやったよ。そこそこの腕だったが私には敵わなかった。だが、今度はスターナに愛を訴えたものだから今度はスターナが怒りを爆発したのだよ」
「お母様が怒りを爆発……」
「見たこともないような怒りの形相で、聞いたこともないような罵詈雑言でハトロイを責め立てたのさ。ハトロイも目を丸くして言葉も出なかったよ。挙げ句、絶句して声すら出せなくなったハトロイを蹴りまくるのだから見てた私は爽快な気分だったものさ。あの時の光景は清々しくてたまらないよ」
「……」
今は亡き母の暴走(?)を心底愉快そうに笑って語るバーグだったが、ミロアは苦笑いしていた。何となく面白そうではあるが貴族としてそれはどうかとも思えるのだ。前世は日本人で今は貴族令嬢である故か。
(お父様もお母様も破天荒な人達だったのね……)
「ハトロイはそのまま気を失ってしまったからその場で放置。奴の奇行に周りがうんざりしていたから誰も介抱するようなことはなかった」
「お母様は暴行罪には、」
「ならなかったよ。正当防衛ということで話は片付いた」
気を失うまで蹴り続けるのは過剰防衛になりそうだが、当時のことをよく知らないミロアは細かいことは気にしないことにした。
「それ以降、ハトロイは私とスターナを避けるようになった。流石にスターナに暴言をはかれて暴力を振るわれると大きく印象が崩れてしまったんだろうな。奴の口から謝罪の言葉が聞かされなかったことだけは残念だったが、私達と顔を合わせるたびにビクッと震える姿は本当に滑稽だったよ。あれほど恋がれた相手に対する思いが恐怖に変わるんだ。知る者は皆して面白がったものだ。本人は嫌だっただろうけどな。くくくっ」
「……ぷっ」
バーグがあまりにも面白そうに語るものだからミロアも遂に吹き出してしまった。
(……そうか、こういうのを『ざまぁ』というのね。前世で一番楽しみにしていた内容なのね。まさか父親の口から語られるなんて、転生ならではかしら?)
バーグの昔話から前世で言う『ざまぁ』を思い出すミロア。『ざまぁ』とは「ざまあみろ」の略称であり、「主人公が悪役に復讐する」「酷いことをした者が報復を受ける」などの内容を表している。バーグの話がそうなのだとミロアは感じた。
「そして、その場で修羅場になったのですね」
「そうだな、あまりにもスターナにつきまとうハトロイに我慢の限界を迎えた私は怒りをむき出しにしたのだ。もうスターナに関わるなとな。それでも諦めるつもりのなかったハトロイは私に決闘を申し込んできたものだから見苦しいものだったよ」
「決闘までしたのですか?」
「ああ、圧倒してやったよ。そこそこの腕だったが私には敵わなかった。だが、今度はスターナに愛を訴えたものだから今度はスターナが怒りを爆発したのだよ」
「お母様が怒りを爆発……」
「見たこともないような怒りの形相で、聞いたこともないような罵詈雑言でハトロイを責め立てたのさ。ハトロイも目を丸くして言葉も出なかったよ。挙げ句、絶句して声すら出せなくなったハトロイを蹴りまくるのだから見てた私は爽快な気分だったものさ。あの時の光景は清々しくてたまらないよ」
「……」
今は亡き母の暴走(?)を心底愉快そうに笑って語るバーグだったが、ミロアは苦笑いしていた。何となく面白そうではあるが貴族としてそれはどうかとも思えるのだ。前世は日本人で今は貴族令嬢である故か。
(お父様もお母様も破天荒な人達だったのね……)
「ハトロイはそのまま気を失ってしまったからその場で放置。奴の奇行に周りがうんざりしていたから誰も介抱するようなことはなかった」
「お母様は暴行罪には、」
「ならなかったよ。正当防衛ということで話は片付いた」
気を失うまで蹴り続けるのは過剰防衛になりそうだが、当時のことをよく知らないミロアは細かいことは気にしないことにした。
「それ以降、ハトロイは私とスターナを避けるようになった。流石にスターナに暴言をはかれて暴力を振るわれると大きく印象が崩れてしまったんだろうな。奴の口から謝罪の言葉が聞かされなかったことだけは残念だったが、私達と顔を合わせるたびにビクッと震える姿は本当に滑稽だったよ。あれほど恋がれた相手に対する思いが恐怖に変わるんだ。知る者は皆して面白がったものだ。本人は嫌だっただろうけどな。くくくっ」
「……ぷっ」
バーグがあまりにも面白そうに語るものだからミロアも遂に吹き出してしまった。
(……そうか、こういうのを『ざまぁ』というのね。前世で一番楽しみにしていた内容なのね。まさか父親の口から語られるなんて、転生ならではかしら?)
バーグの昔話から前世で言う『ざまぁ』を思い出すミロア。『ざまぁ』とは「ざまあみろ」の略称であり、「主人公が悪役に復讐する」「酷いことをした者が報復を受ける」などの内容を表している。バーグの話がそうなのだとミロアは感じた。
53
あなたにおすすめの小説
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
妻よりも幼馴染が大事? なら、家と慰謝料はいただきます
佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢セリーヌは、隣国の王子ブラッドと政略結婚を果たし、幼い娘クロエを授かる。結婚後は夫の王領の離宮で暮らし、義王家とも程よい関係を保ち、領民に親しまれながら穏やかな日々を送っていた。
しかし数ヶ月前、ブラッドの幼馴染である伯爵令嬢エミリーが離縁され、娘アリスを連れて実家に戻ってきた。元は豊かな家柄だが、母子は生活に困っていた。
ブラッドは「昔から家族同然だ」として、エミリー母子を城に招き、衣装や馬車を手配し、催しにも同席させ、クロエとアリスを遊ばせるように勧めた。
セリーヌは王太子妃として堪えようとしたが、だんだんと不満が高まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる