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しおりを挟むしかし、あの時受けた屈辱は俺の心に刻まれてしまった。時々、悪夢にうなされるのはそれが理由なのだ。
「俺は、どこで間違えたんだ……?」
ふとした時にそんな疑問を口にした。しかし、本当は分かっている。全部俺が悪いということに。
『巫山戯ないでくださる? 私に対する劣等感、そんなものは貴方が努力をしない理由にはなりません!』
『マグーマ殿下、それが貴方の本心だというのなら私は貴方に決して同情できません。たとえ私に劣るのだとしても貴方は努力を怠るべきではありませんでした』
『貴方が周りに見放されたと思うのなら、それは貴方が理由をつけて怠惰になった結果です。……どうか今後は反省して私達皆を見返せるくらいには努力をしてください』
あの時のリリィの言った通り、俺が誰にも勝てなくても努力を続けていればよかったんだ。俺が怠惰で駄目な男に成り下がったばっかりに、たくさんの人を失望させて傷つけた。それが今の俺の結果……本当に自業自得だ。
そんな俺に寄り添うアノマはどんな気持ちだろう。俺の妻となり辺境の男爵夫人となった彼女は本心では何を思っているのだろう?
思い切って聞いてみたら、こんな答えが返ってきた。
「そうですね。幸せですね」
「幸せだって?」
「はい。マグーマ様のことが好きだって気持ちは事実ですし、そんな貴方の妻となって一緒に暮らせるんです。幸せに決まってます」
「だけど、ここの暮らしは貧しいし王宮どころかお前の実家よりも質素だぞ?」
「確かに生活は苦しいところもあるけど、一緒に苦労して一緒に罪を背負っていくことも妻の務めですよ。それも含めて幸せなんじゃないですか?」
「アノマ……」
俺が馬鹿すぎるせいなのか? アノマがなぜ幸せだと言うのか、俺にはわからない。一緒に苦労して一緒に罪を背負っていくことのどこが幸せなんだろう? だけど、彼女が嘘を言っているようには見えない。アノマは嘘が下手だから俺は本心から言っていると思えた。
「幸せ、そうだな……」
それに俺もアノマと一緒にいられることを不幸に思ったことはない。騙されたと一度は思ったが、ここで暮らすようになって彼女のことをより理解して好きになった。それを幸せと呼べても不幸とは呼べるはずがない。
「ありがとうアノマ。お前のお陰で俺は今日まで生きてこれたんだと思う。どうかこれからもずっと一緒にいてくれ」
「もちろんですわ! 一生ついていきます!」
アノマの笑顔、見ているだけで無気力感から脱するような気持ちになる。もっと早く彼女に出会えたならば結果は変わったのだろうか。いや、そんなことはどうでもいい。今は過去よりも未来に向けて頑張るんだ。
弟たちや家臣たち、リリィにジェシカ、あいつらにどいう思われても最早どうでもいい。ただ、アノマのために俺は自分の人生を捧げよう。彼女と生きる幸せのために。
終わり
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