姉を虐げ、両親に溺愛された義妹が行方不明！？ ～そして判明するのは義妹の愚行の数々！？～

63.テール視点/幼馴染で婚約者

（テール視点）

俺の名はテール・イーリュ伯爵家の令息だ。俺は今日、愛する婚約者の提案で王宮で開かれるパーティーに遅れて出席した。何でかって言うと、俺の婚約者のアキエーサ・イカゾノス改めアキエーサ・イムラン侯爵令嬢の提案ならば絶対に受け入れるに決まっているからだ。もはや確定事項と言っても過言ではないだろう。その理由も理解している。何しろ、パーティーの主役の方に問題があるからだ。俺もそんな奴にちょっかいを掛けられたくもないしな。



俺の婚約者になったアキエーサは俺の幼馴染、子供の頃に仲良くなってから、ずっと思いを寄せていた。親の都合で数年の間に離れ離れになってしまったが、その間にアキエーサの周りの環境は悪い方に変わってしまっていた。


アキエーサはイカゾノス家の屋敷で酷く冷遇されていたのだ。愚かな父親がクズみたいな女と再婚して我儘な妹ができてから、使用人よりも待遇が悪くなったというのだ。そのうえ、カス何とかという男と無理矢理婚約させられたというのだから、そんなアキエーサの状況を大体知った俺は激しく憤った。


彼女を冷遇される環境から救い出したいと思った俺は、イカゾノス家の者に気づかれぬように密かにアキエーサに接触した。そして、アキエーサ自身が結婚を望んでいないことや家族に愛想尽きたという気持ちを確認した。……アキエーサという素晴らしい女性がいながら顔しか取り柄がない義妹に現を抜かすクズという男は本当に許せなかった！


しかし、アキエーサもただ状況を受け入れているばかりではなかった。なんと彼女は密かに商会を立ち上げて、収入を得ていたのだ。両親と義妹が勝手に自滅することを見越していたアキエーサは、イカゾノス家から自立していくための準備をすでに整えていたのだ。更に、あのイムラン侯爵とも協力関係を築いていたのだから本当に驚かされたものだった。


あれ？　これなら俺が助けなくても大丈夫じゃないのか？　俺が何もしなくても状況を逆転できるのでは、と微妙に寂しさも感じさせるほどにアキエーサは有能だった。強い味方もいるから、俺に何ができるのか全く分からないくらいだったが、せめて思いを聞いてほしいと思って俺はアキエーサに告白した。


「アキエーサ！　俺は貴女が好きだ！　今の婚約者との婚約が白紙になったら俺と婚約してほしい！」

「テール様……！」


アキエーサは目を丸くして驚いた。正直、そんなアキエーサの顔は始めて見たから俺は思わず見入ってしまった。互いに顔を見つめ続けた結果…………。



「嬉しいですテール様……！　こんな私でいいなら喜んで貴方の思いを受け入れます！」


最終的にアキエーサは受け入れてくれたのだ！　俺は初恋の女性に告白して両想いになることができたのだ！


……ただ、アキエーサが受け入れてくれるまえに「う、嘘ではないですか？」とか「どうして私なんか？」とか随分自己評価が低い様子で狼狽えたのがちょっと気になったかな。イカゾノス家の境遇のせいなのかもしれないが、アキエーサ自身は優れた女性のはずなのだ。これからはもっと自信を持てるように俺が支えていかなければ。幼馴染で婚約者なんだから！