姉を虐げ、両親に溺愛された義妹が行方不明!? ~そして判明するのは義妹の愚行の数々!?~

mimiaizu

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107.唖然/都合のいい解釈

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「アクサン殿下は壇上に上がる以前に分かっていたのでしょう、パーティーの準備に多くの不備があったことを。それだけでも十分マズい状況であるのに、多くの招待客が見ている前で不出来な挨拶をなさいました。……もうお分かりになっていたのでしょう。パーティーがほぼ失敗してしまったのだと」

「そ、そんな時に、どうしてアクサン様がお姉さまに求婚なんか……!?」

もうワカマリナは、アキエーサだけでなくアクサンのことも分からなくなってきた。何しろ、アクサンの態度が変わりすぎたのだ。少し前までは自分を『愛している』と言ってくれたアクサン、そんな男が今度は『疫病神』と言って罵った後だからこそ、ワカマリナの中でアクサンに対するイメージが大幅に揺らいでしまったのだ。

もっとも、アクサンに口汚く罵られた時から、すでにアクサンに対する不信感のような芽生えていたのだが、ワカマリナはそれでも姉のアキエーサのせいにして目を背けようとしていたのだ。しかし、肝心のアキエーサがそうはさせなかった。

「それは私がダブール商会の会長だからでしょう。おそらくアクサン殿下は私の商会の力を利用すれば、己の王太子の立場を守れるとでも思ったのでしょう。すなわち保身のためですね」

「ほ、保身……?」

「パーティーの失敗は確実、それならば失敗した責任を取り返せるようなことをしなければとでも思ったのでしょう。例えば、商会の稼いだ金を王家につぎ込めばパーティーの失敗すら咎められずに済むのでは……追い詰められたアクサン殿下がそう考えも不思議ではありません」

「……なにそれ?」

カラン、という音がなった。それはワカマリナが握っていた果物ナイフを落とした音だった。アキエーサの話を聞いたワカマリナがショックでナイフを握った手の力が抜けたのだ。

「お、お金のために……それだけで、お姉様を口説いて? わ、わたくしは? わたくしはどうなりますの? アクサン様にとって、わたくしは?」

「「………………」」

アキエーサもエリザもどう言えばいいか迷った。下手に刺激するようなことをワカマリナは言えば何をするか分からないのだ。だが、黙り続けていても怖い。だから、アキエーサはあまり刺激しないように事実を言った。

「……別れる、そう言っていましたわ」

「………!」

ワカマリナは膝が折れた。アキエーサに事実を告げられて唖然となったのだ。焦点の合っていない目で、アキエーサをじっと眺めて、震える声でブツブツとつぶやく。

「わたくしを、捨てたのですか……? あ、あんなに、愛し合ったのに……? アクサン、様が……?」

「…………」

惨めな姿でぼそりとブツブツ呟き続けるワカマリナの姿をアキエーサとエリザは哀れに思った。男に捨てられた女の姿ほど虚しくて情けないものはない。同じ女としては同情してしまうのだ。たとえ、ワカマリナ自身がどうしようもない女だとしても。




しかし、アキエーサとエリザがワカマリナに慰めの言葉を掛けようとした瞬間、事態は急変する。




「う、嘘だああああああああああああっ!」

「「!」」

ワカマリナは突如、落ち着いたかに見えた姿から、大きく豹変するかのように叫んだ。まるで獣のように。

「そんなの嘘! 嘘! 信じられない! 信じられるもんか! デタラメ言わないで!」

「ワカマリナ………!」

更に、癇癪を起こして喚き始めたのだ。やはり、ワカマリナはアキエーサの説明を受け入れられなかった。ワカマリナにとって、あまりにも酷な事実だっただけに『嘘』や『デタラメ』として都合のいい解釈にしてしまったのだ。
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