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122.国王視点/報告
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(国王視点)
パーティーから翌日、朝から本当に慌ただしくなった。昨日は、信頼できる部下たちに任せて早めに就寝したのだが、私が寝ている間にとんでもないことが起きていたようだ。
何故なら、いつも私を起こしに来るはずの者が、今日に限って違うのだ。それだけで分かってしまった。
「お、おはようございます、陛下……!」
「ああ、おはよう」
初めての仕事ゆえにぎこちない様子、一見そう見えるのだが間違いなくそれだけではないとよくよく観察してみれば分かる。起こしに来た新人らしい男の顔には疲労の色が見える。それに何やら目のクマも……睡眠不足のようだ。
……さては、アクサンがまた何かやらかしたな。こんな若い使用人まで酷使するほどの事態を起こせるのはあやつしかおらん。
「……君、この後の手順は分かっているな?」
「は、はい! これから陛下の着替えを手伝わせていただきます!」
……やはり新人だな。彼は決して無能というわけではないのだろうが、新人を使うとはよほどのことが起こったと見える。はぁ……アクサンめ、今度は何をしでかしたんだ?
「まあ、緊張するなという方が無理なのは分かるが、もう少し気を緩んでもよいぞ。焦って失敗しては、元も子もなかろう」
「はい! ありがとうございます!」
◇
起床・着替え・朝食・その他等を済ませた国王は、早速疲労した部下たちの報告を聞いた。そして、朝起きてすぐに感じていた悪い予感が的中したことを知った。
「……すまぬ、もう一度聞かせてもらえぬか?」
「はい、分かりました」
国王はあまりの内容に現実逃避しそうになるのをこらえ、部下にもう一度繰り返し尋ねた。命じられた部下も、思い口を今一度開く。
「あのパーティーの後、アクサン殿下は密かにアキエーサ嬢に求婚して断られた挙句ベスクイン公爵に行き過ぎた愚行をさせぬためにと牢に入れられたそうです」
「……何やってんだあいつは……」
国王はげんなりと項垂れる。実の息子の行動が、そんなことをする意味が分からないからだ。
「その後では、今度はワカマリナ嬢がアキエーサ嬢とエリザ嬢にナイフを持って現れて、アキエーサ嬢を殺すなどと口にして本当に襲い掛かったそうです。幸い、駆けつけたイムラン侯爵とテール殿の手で阻止されて誰も無傷で済みました」
「あの娘も、何がしたいんだ……罪に手を染めるとは……」
国王は頭を抱える。ワカマリナの無知無能ぶりは分かっていたつもりだったが、まさか実の姉を襲撃するとは思ってなかったのだ。それも、パーティーの後とは……。
「最悪の事態が避けられたところで騒ぎを聞きつけた兵士たちとベスクイン公爵が合流し、その勢いでワカマリナ嬢を連行したようです。更にイカゾノス伯爵夫妻とも合流できたので、彼らも重要参考人として連行したそうです」
「……」
知るべきおおよその事態を再度聞いた国王はこの時点で精神的に疲れてしまった。実の息子とその恋人の手によって大ごとが起こったと予想していたが、結構面倒なことになっていた。
「あの二人の、処分は平民落ちに決まりだ……そして、鉱山送り……だな」
「陛下……」
アクサンとワカマリナのしてきたことは、パーティーの前後で多くの問題を残していた。当然、パーティーの最初から最後の内容も入っている。これらのことを考えれば、王族の面子を保つためにも極めて厳しい処罰が下されなければならない。甘いことはいていられないと思った国王は覚悟を決めた。
「となると、すぐにでも処罰を下そう。あいつらを我が前へ連れてこい。私が直々に処分を言い渡そう」
パーティーから翌日、朝から本当に慌ただしくなった。昨日は、信頼できる部下たちに任せて早めに就寝したのだが、私が寝ている間にとんでもないことが起きていたようだ。
何故なら、いつも私を起こしに来るはずの者が、今日に限って違うのだ。それだけで分かってしまった。
「お、おはようございます、陛下……!」
「ああ、おはよう」
初めての仕事ゆえにぎこちない様子、一見そう見えるのだが間違いなくそれだけではないとよくよく観察してみれば分かる。起こしに来た新人らしい男の顔には疲労の色が見える。それに何やら目のクマも……睡眠不足のようだ。
……さては、アクサンがまた何かやらかしたな。こんな若い使用人まで酷使するほどの事態を起こせるのはあやつしかおらん。
「……君、この後の手順は分かっているな?」
「は、はい! これから陛下の着替えを手伝わせていただきます!」
……やはり新人だな。彼は決して無能というわけではないのだろうが、新人を使うとはよほどのことが起こったと見える。はぁ……アクサンめ、今度は何をしでかしたんだ?
「まあ、緊張するなという方が無理なのは分かるが、もう少し気を緩んでもよいぞ。焦って失敗しては、元も子もなかろう」
「はい! ありがとうございます!」
◇
起床・着替え・朝食・その他等を済ませた国王は、早速疲労した部下たちの報告を聞いた。そして、朝起きてすぐに感じていた悪い予感が的中したことを知った。
「……すまぬ、もう一度聞かせてもらえぬか?」
「はい、分かりました」
国王はあまりの内容に現実逃避しそうになるのをこらえ、部下にもう一度繰り返し尋ねた。命じられた部下も、思い口を今一度開く。
「あのパーティーの後、アクサン殿下は密かにアキエーサ嬢に求婚して断られた挙句ベスクイン公爵に行き過ぎた愚行をさせぬためにと牢に入れられたそうです」
「……何やってんだあいつは……」
国王はげんなりと項垂れる。実の息子の行動が、そんなことをする意味が分からないからだ。
「その後では、今度はワカマリナ嬢がアキエーサ嬢とエリザ嬢にナイフを持って現れて、アキエーサ嬢を殺すなどと口にして本当に襲い掛かったそうです。幸い、駆けつけたイムラン侯爵とテール殿の手で阻止されて誰も無傷で済みました」
「あの娘も、何がしたいんだ……罪に手を染めるとは……」
国王は頭を抱える。ワカマリナの無知無能ぶりは分かっていたつもりだったが、まさか実の姉を襲撃するとは思ってなかったのだ。それも、パーティーの後とは……。
「最悪の事態が避けられたところで騒ぎを聞きつけた兵士たちとベスクイン公爵が合流し、その勢いでワカマリナ嬢を連行したようです。更にイカゾノス伯爵夫妻とも合流できたので、彼らも重要参考人として連行したそうです」
「……」
知るべきおおよその事態を再度聞いた国王はこの時点で精神的に疲れてしまった。実の息子とその恋人の手によって大ごとが起こったと予想していたが、結構面倒なことになっていた。
「あの二人の、処分は平民落ちに決まりだ……そして、鉱山送り……だな」
「陛下……」
アクサンとワカマリナのしてきたことは、パーティーの前後で多くの問題を残していた。当然、パーティーの最初から最後の内容も入っている。これらのことを考えれば、王族の面子を保つためにも極めて厳しい処罰が下されなければならない。甘いことはいていられないと思った国王は覚悟を決めた。
「となると、すぐにでも処罰を下そう。あいつらを我が前へ連れてこい。私が直々に処分を言い渡そう」
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