姉を虐げ、両親に溺愛された義妹が行方不明!? ~そして判明するのは義妹の愚行の数々!?~

mimiaizu

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140.アクサン視点/……の格好をした

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(アクサン視点)

私は生理的に傭兵だというこいつらと口を利くのは無理なので、細かいことはクァズに任せることにした。


「く、クァズ……とりあえずアキエーサをここに連れてきてくれ。エリザは後でもいい……」

「そうですか。では、二人ともここに連れて来ましょう。……ということで、攫ってきた女二人を連れてきてくれ」

「へへ、了解しやした。おいお前、連れてきな」

「分かりやした」


リーダー格の男が下っ端みたいなやつに指示を出す。……どうやら本当に攫ってきたのだな。これで私は本当に後戻りできなくなったわけだ。その事実を実感すると何だが複雑な気分になるのは何故だろう?


そんな風に思っている間に、数人の男達が顔を布で隠された令嬢二人を連れてきた。背格好と着ている衣服はも覚えがある。……アキエーサはよく分からないがエリザの服だと分かる。長い間、婚約者だったからな。


「……本当に二人を連れてきたのか」

「当たり前でしょう。この二人を利用しなければ我々の未来はないでしょう」

「…………」


その通りだ。エリザはともかくとして、アキエーサからは商会の情報を引き出して他国に亡命するための取引材料にする。それが私達が惨めな道から逃れるための手段だ。……その過程でアキエーサを、女性をいたぶるというのは、今更になっていい気がしなくなるな。


しかし、この姉妹には恨みもあるのも事実。もう、やるしかない……!


「……覚悟は決まった。アキエーサの顔を晒してくれ」

「へへ、了解しやした」


一人の男がアキエーサの顔を覆う布を剥がそうとする。この後、アキエーサはどんな顔をするだろうか? 勿論、軽蔑するだろうな……。そんな今の私をエリザはどう見るのだろうと思い、エリザの方に目線を向ける。


……だから気付いてしまった。


「え……おい、待て」

「どうされました?」

「彼女は本当にエリザなのか?」

「はい?」


お、おかしい。な、何故だ。どういうことだ!?


「ど、どうして、どこの女はベスクイン公爵の腕時計をつけていないんだ!?」


重大な事実に気付いた私は顔が分からない『エリザ』を指さして叫んだ。






王宮に向かう途中で襲撃されたイムラン侯爵とベスクイン公爵の馬車。その後方には貴族ではなく使用人用の粗末な馬車が連なっていた。もちろん、そんな馬車には執事や侍女といった多くの使用人が、主について行くために乗り込むのだ。


ただ、今回に限っては、使用人達のための馬車のはずなのに。


「……もう大丈夫そうですわね」

「まさか、昨日の今日でこんなことが起こるなんて……」


……その中には貴族令嬢が二人乗っていた。


「貴女のお父様の心配症のおかげですわね『エリザ』様」

「ふふふ、そうですね。それにイムラン侯爵と話し合ったおかげですわ『アキエーサ』様」


それも、侍女の格好をしたイムラン侯爵令嬢アキエーサとベスクイン公爵令嬢のエリザの二人だった。二人は襲撃してきた賊が去った後に、騎士達や使用人達が心配になって安全を確認してから場所の外に出たのだ。

「あ、アキエーサ……! 君はまだ馬車に乗っていてよ……! 俺達は大丈夫だからさ……!」

そんな二人を心配して馬車に戻るように促すのは、護衛騎士の格好をしたテールだった。

「でも……私達を狙っての行動ではないのですか? そのせいでこんな……」

「だからこそ、君たちが無事でいてほしいんだ。まだ何か起こるか分からないんだし……」

必死で説得するテールの傍に二人の大柄な護衛騎士が近づいてきた。この体格からして、その正体は……。

「エリザ! 無事か!」

「おい、もう賊は近くに居ねえぞ」

もちろん、護衛騎士の格好をしたイムラン侯爵とベスクイン公爵の二人だった。
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