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7.似顔絵?
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サエナリアの部屋を後にしたベーリュたちは、屋敷を探しまわっていた使用人の一人からまだ見つかっていないという報告を聞いた。
「やはり屋敷にはいないか。あんな書置きを残したのだ、当然だろうな(そもそも、もっと早く出て行ってもおかしくなかったかもしれん。あんな仕打ちを受けてきたのならな)」
サエナリアは別に虐待されたわけではない。ネフーミの関心がワカナにばかりに向けられて彼女自身は見てもらえなかったのだ。母親から与えられるべき愛情が妹のほうに大分偏った結果、これだけの差ができてしまったのだ。
「……失敗したな。私が仕事にかまけて家庭を見なかった結果がこれか」
ベーリュが若かったころのソノーザ家は落ち目の伯爵家だった。ベーリュが当主になった時、落ち目の立場から立て直そうと懸命に努力を重ねた。出世欲の強いベーリュは無能な父母を見捨て、血の繋がった妹すら出世のために利用した。そして、最終的に公爵にまで昇格するに至ったのだ。家族を踏み台にして成功を手にしてきたともいえる。
「今度は家族をよく見なかったせいで失敗するとは皮肉だな」
サエナリアの家出が大ごとになる前に肩をつけなくてはならない。そう考えたベーリュは側近の執事に命じる。
「すぐにサエナリアを探し出す手配を用意しろ。騎士を動かしても構わん」
「かしこまりました。では、サエナリア様の似顔絵を作成して騎士たちに配りましょう」
「似顔絵か、それなら……」
ベーリュは、妻の後ろにいるサエナリアの専属侍女に目線を移した。
「サエナリアの侍女。お前に似顔絵を頼む。できるな?」
「! はい。分かりました」
侍女は一瞬驚くが、すぐに了承した。だが、ここでネフーミが夫に疑問を口にした。
「あなた、何故使用人に似顔絵を頼むの? この娘は確かにさサエナリアの専属だったみたいだけど、それだけでしょう?」
「ああ、確かに専属侍女だ。だが、長女を蔑ろにしてきたお前や姉の名前も覚えていない娘よりもましだとは思わんか?」
夫に蔑むような目で見られたネフーミは俯いて口を閉じた。
◇
「お嬢様のお顔は………このようになります」
「「え?」」
侍女が書いた似顔絵を見たベーリュとネフーミは、一瞬だけ戸惑ったが少しだけ思い出したといった感じでつぶやいた。
「………そうか、そうだったな。私に似たのだったな」
「ああ、確かにこんな顔だったわ………」
夫婦が見た『似顔絵のサエナリア』は父親と同じ黒目で茶髪だった。妹と違って美しいというわけでも、逆に醜いというわけでもないような地味で特徴のない顔つきをしていた。
……二人は長女の似顔絵を見ても「本当に妹と比べればたいして可愛くない」と感じている。その様子が分かるほど微妙な顔つきになっている公爵と夫人。そんな二人を眺める侍女が冷たい目をしていることにも気づかない。その目には怒りすら感じられなくもない。
「ねえ! もうなんなのよ! 何で今更見なくなった女のために騒いでんのよ! お菓子はまだあ!?」
いつまでもほったらかしとなっているワカナは癇癪を起していた。周りの使用人が諫めても喚き散らしている。
「………お前は実の姉のがいなくなって心配だと思わないのか?」
ベーリュが底冷えるほど冷めた声でワカナに声を掛けてやるが、酷い返答が来る。
「何でこの私がいない女の心配をしなくちゃいけないのよ! 馬鹿じゃないの?」
「父親の私にもこれか。相当ひどいな………」
父親に平然と歯向かうワカナの姿に、ベーリュは今まで娘たちの教育を妻に任せっきりでいたことを心底後悔した。
「やはり屋敷にはいないか。あんな書置きを残したのだ、当然だろうな(そもそも、もっと早く出て行ってもおかしくなかったかもしれん。あんな仕打ちを受けてきたのならな)」
サエナリアは別に虐待されたわけではない。ネフーミの関心がワカナにばかりに向けられて彼女自身は見てもらえなかったのだ。母親から与えられるべき愛情が妹のほうに大分偏った結果、これだけの差ができてしまったのだ。
「……失敗したな。私が仕事にかまけて家庭を見なかった結果がこれか」
ベーリュが若かったころのソノーザ家は落ち目の伯爵家だった。ベーリュが当主になった時、落ち目の立場から立て直そうと懸命に努力を重ねた。出世欲の強いベーリュは無能な父母を見捨て、血の繋がった妹すら出世のために利用した。そして、最終的に公爵にまで昇格するに至ったのだ。家族を踏み台にして成功を手にしてきたともいえる。
「今度は家族をよく見なかったせいで失敗するとは皮肉だな」
サエナリアの家出が大ごとになる前に肩をつけなくてはならない。そう考えたベーリュは側近の執事に命じる。
「すぐにサエナリアを探し出す手配を用意しろ。騎士を動かしても構わん」
「かしこまりました。では、サエナリア様の似顔絵を作成して騎士たちに配りましょう」
「似顔絵か、それなら……」
ベーリュは、妻の後ろにいるサエナリアの専属侍女に目線を移した。
「サエナリアの侍女。お前に似顔絵を頼む。できるな?」
「! はい。分かりました」
侍女は一瞬驚くが、すぐに了承した。だが、ここでネフーミが夫に疑問を口にした。
「あなた、何故使用人に似顔絵を頼むの? この娘は確かにさサエナリアの専属だったみたいだけど、それだけでしょう?」
「ああ、確かに専属侍女だ。だが、長女を蔑ろにしてきたお前や姉の名前も覚えていない娘よりもましだとは思わんか?」
夫に蔑むような目で見られたネフーミは俯いて口を閉じた。
◇
「お嬢様のお顔は………このようになります」
「「え?」」
侍女が書いた似顔絵を見たベーリュとネフーミは、一瞬だけ戸惑ったが少しだけ思い出したといった感じでつぶやいた。
「………そうか、そうだったな。私に似たのだったな」
「ああ、確かにこんな顔だったわ………」
夫婦が見た『似顔絵のサエナリア』は父親と同じ黒目で茶髪だった。妹と違って美しいというわけでも、逆に醜いというわけでもないような地味で特徴のない顔つきをしていた。
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父親に平然と歯向かうワカナの姿に、ベーリュは今まで娘たちの教育を妻に任せっきりでいたことを心底後悔した。
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