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8.可哀想?
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幼い頃は長女のサエナリアよりも可愛かったワカナ。成長した今の姿は美しい美少女だが、性格に関しては最悪だとベーリュは思い知った。ハッキリ言って、母親以外の家族に関心を持たないうえに短気で自己中心的な性格だ。ベーリュとしては、ワカナの美しい姿は貴族として政治的にも利用できると考えていたが、今本性を知って諦めるしかなかった。
「……おい、誰かこの娘を自室に閉じ込めろ。うるさくて仕方がない。少し手荒でもいいぞ」
「え?」
「あ、あなた、何を言って……」
ネフーミは驚いて抗議するがベーリュに冷たい目で睨まれてひるんでしまう。
「お前はもう黙ってろ、この役立たずが。これから娘たちの教育は私が行う。お前はもう口出ししなくていい。大変な失敗をしたのだからな」
「そ、それは……」
大変な失敗。今のネフーミにも分かってしまう。それは娘たちの教育だ。長女に関心を寄せず次女に溺愛した結果、長女は家出し次女は我儘になってしまったのだ。その原因が自分にあると自覚したネフーミはぐうの音も言えない。
「はあ!? 何言ってんのよお父様! 何で私が閉じ込められなくちゃいけないの! お菓子は、綺麗なドレスはあるの!?」
「黙れ! 見てくれは言いだけの我儘娘が! おい、さっさと連れていけ!」
「「「はっ!」」」
使用人たちはベーリュに命じられてワカナを連れて行った。連れていかれるワカナは「何するのよ!」「私を誰だと思ってるの、ムキー!」などと喚き散らして抵抗する。それを眺めるネフーミは悲しそうな顔をだったが、ベーリュは気にも留めなかった。
「あ、あの子が可哀想だわ……」
「あの子? ワカナとサエナリア、どっちがだ?」
「…………」
その質問にネフーミは何も言えない。言う資格がないと思ったのだ。ネフーミの偏った教育の結果、今日のような出来事が起こったのだ。次女が可愛がられるのに長女が蔑ろにされる。ベーリュの言葉の意味も分かるが何も言えない。
「答えは簡単だ。二人とも可哀そうだ」
「え
意外な言葉がベーリュの口から出てきたことにネフーミは動揺した。『二人とも』という言葉の意味が分からない。今のネフーミでさえワカナよりもサエナリアに同情的だというのに。
「片方の娘しか愛さない母親、そんな母親に育児を任せて娘を顧みない父親。こんな愚かな両親を持った二人がかわいそうと言ったのだ。違うか?」
「……っ! あ、あ、ああああああああぁぁぁぁぁ!」
その通りだ。そう思ったネフーミは慟哭するしかなかった。それは屋敷中に響いたという。
「……何と惨めな姿か。あれが私の妻、か」
嘆き叫ぶ妻の姿を見るベーリュは妻のことを情けなく思ったが、それは自分自身にも向けられた。
「私にも責任があるか。こうなっては大きな規模でサエナリアを探し出さなくてはならん。せっかく王家と婚約までこぎつけたというのに……」
サエナリアは王太子と婚約している。つまり彼女の婚約は、ベーリュ個人どころかソノーザ家全体にとって大きな価値があった。それはソノーザ家が王家と縁を繋ぐことを意味する。王家の親族になれば大きな権力を手中に収めることができるのだ。貴族としてこれほどの出世は夢のようだ。
それだけにこんな事態は早く解決せねばならない。
「もしも、サエナリアが見つからなかったら、ソノーザ家は落ち目に戻ってしまう。そんなことは許されない……!」
ベーリュにとって、サエナリアは大事な娘であり、それ以上に政治の駒だった。王家を繋ぐ政治の駒としてのサエナリアが重要なのだ。そういう意味ではベーリュは貴族らしい貴族かもしれないが、父親としては失格だ。
「ワカナのことは後回しにするか、もはや手遅れだろうしな」
娘たちの教育は自分がやると言っておきながら、ワカナのことはもう目にも入れたくない。ワカナのほうは駒にもできないと見切りをつけたのだ。
「……おい、誰かこの娘を自室に閉じ込めろ。うるさくて仕方がない。少し手荒でもいいぞ」
「え?」
「あ、あなた、何を言って……」
ネフーミは驚いて抗議するがベーリュに冷たい目で睨まれてひるんでしまう。
「お前はもう黙ってろ、この役立たずが。これから娘たちの教育は私が行う。お前はもう口出ししなくていい。大変な失敗をしたのだからな」
「そ、それは……」
大変な失敗。今のネフーミにも分かってしまう。それは娘たちの教育だ。長女に関心を寄せず次女に溺愛した結果、長女は家出し次女は我儘になってしまったのだ。その原因が自分にあると自覚したネフーミはぐうの音も言えない。
「はあ!? 何言ってんのよお父様! 何で私が閉じ込められなくちゃいけないの! お菓子は、綺麗なドレスはあるの!?」
「黙れ! 見てくれは言いだけの我儘娘が! おい、さっさと連れていけ!」
「「「はっ!」」」
使用人たちはベーリュに命じられてワカナを連れて行った。連れていかれるワカナは「何するのよ!」「私を誰だと思ってるの、ムキー!」などと喚き散らして抵抗する。それを眺めるネフーミは悲しそうな顔をだったが、ベーリュは気にも留めなかった。
「あ、あの子が可哀想だわ……」
「あの子? ワカナとサエナリア、どっちがだ?」
「…………」
その質問にネフーミは何も言えない。言う資格がないと思ったのだ。ネフーミの偏った教育の結果、今日のような出来事が起こったのだ。次女が可愛がられるのに長女が蔑ろにされる。ベーリュの言葉の意味も分かるが何も言えない。
「答えは簡単だ。二人とも可哀そうだ」
「え
意外な言葉がベーリュの口から出てきたことにネフーミは動揺した。『二人とも』という言葉の意味が分からない。今のネフーミでさえワカナよりもサエナリアに同情的だというのに。
「片方の娘しか愛さない母親、そんな母親に育児を任せて娘を顧みない父親。こんな愚かな両親を持った二人がかわいそうと言ったのだ。違うか?」
「……っ! あ、あ、ああああああああぁぁぁぁぁ!」
その通りだ。そう思ったネフーミは慟哭するしかなかった。それは屋敷中に響いたという。
「……何と惨めな姿か。あれが私の妻、か」
嘆き叫ぶ妻の姿を見るベーリュは妻のことを情けなく思ったが、それは自分自身にも向けられた。
「私にも責任があるか。こうなっては大きな規模でサエナリアを探し出さなくてはならん。せっかく王家と婚約までこぎつけたというのに……」
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娘たちの教育は自分がやると言っておきながら、ワカナのことはもう目にも入れたくない。ワカナのほうは駒にもできないと見切りをつけたのだ。
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