悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu

文字の大きさ
69 / 149

69.成り上がりの男爵令嬢?

しおりを挟む
マリナ・メイ・ミーク。元はとある商家の娘だった。だが、彼女の父親が三年前に他国との貿易で大成功したことによって彼女の運命は大きく変化した。

父の成功がウィンドウ王国に多大な貢献をしたと認められて、男爵位を与えられ貴族の仲間入りを果たした。本来なら一代限りの爵位でしかなかったが、父親のザンタ・メイ・ミークが元没落貴族の出自だったこともあって、特例で世襲を認められるという一風変わった成り上がり貴族になった。ミークという家名も父ザンタのかつての家系のものだったため、マリナの家は父親の努力の甲斐あって貴族に返り咲いたという方が正しいかもしれない。

ただ、マリナ自身は物心つく頃から貴族の娘ではなかったようだった。とても無邪気な子供だったらしく、貴族令嬢になった最初の頃もその面影を残し続けたらしい。愛し愛され生まれ育った為、純真無垢で世間知らず。つまり、良く言えば元気で知的好奇心旺盛な女の子であり、悪く言えば落ち着きのない貴族らしくない子ということだ。そんな少女が貴族の交流会に出れば、貴族も平民も通う学園に出れば、どれだけ目立つだろうか。多くの者が成り上がりの令嬢と嘲笑し、数少ない者が努力と才能で貴族に戻った家の令嬢と眺めるだろう。

実際、学園でマリナは言いたいことをすぐに口にしたり、身分をかさにする他の令嬢ともよく衝突することがあったようだった。ボブカットの濃い茶髪に大きな碧眼の瞳の可愛らしい少女という容姿にも恵まれていたため、多くの貴族令息に人気があり、生まれながらの貴族令嬢の大多数から嫉妬されて疎遠になっていた。一番新しい情報が王太子カーズとその婚約者サエナリアと三角関係になったという話だった。








……ここまでが、閉鎖的で情報が手に入りにくいウィンドウ学園の中で手に入れたナシュカのマリナに関する情報だった。だがそれは、マリナがナシュカ達が待つ応接室に来たことですぐに更新された。ナシュカは一目見ただけで、いかに自分の情報が古いか思い知ったのだ。

「……(彼女が、マリナ様?)」

ボブカットの濃い茶髪に大きな碧眼の瞳の少女。おそらく彼女こそがマリナで間違いないのだろうが、ナシュカのイメージとは異なった印象を感じられた。兄のカーズの話を聞く限り『可愛らしい少女』というイメージだったのに対して、ナシュカ達の目の前にいる現実のマリナは雰囲気からして『可愛らしい少女』として感じられなかった。むしろ上流貴族らしい高貴な雰囲気を感じさせる美しさを誇る女性だった。

「お初にお目にかかります、ナシュカ殿下。ミーク男爵の娘、マリナ・メイ・ミークと申します。本日はわたくしのためにお時間を作っていただきありがとうございます」

「「「っ!?」」」

自己紹介をするマリナ。その口調は元平民とは思えないほど貴族らしい言葉遣い、発する声の大きさも姿勢も正しい。格上の相手に対して頭を下げる角度も適切。言葉を聞くだけで落ち着きのある清楚なイメージを感じさせた。
しおりを挟む
感想 309

あなたにおすすめの小説

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです

hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。 ルイーズは伯爵家。 「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」 と言われてしまう。 その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。 そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻
恋愛
 ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。 「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」  呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。  王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。  その意味することとは?  慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?  なぜこのような状況になったのだろうか?  ご指摘いただき一部変更いたしました。  みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。 今後ともよろしくお願いします。 たくさんのお気に入り嬉しいです! 大変励みになります。 ありがとうございます。 おかげさまで160万pt達成! ↓これよりネタバレあらすじ 第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。 親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。 ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない

かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、 それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。 しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、 結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。 3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか? 聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか? そもそも、なぜ死に戻ることになったのか? そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか… 色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、 そんなエレナの逆転勝利物語。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

私は《悪役令嬢》の役を降りさせて頂きます

・めぐめぐ・
恋愛
公爵令嬢であるアンティローゼは、婚約者エリオットの想い人であるルシア伯爵令嬢に嫌がらせをしていたことが原因で婚約破棄され、彼に突き飛ばされた拍子に頭をぶつけて死んでしまった。 気が付くと闇の世界にいた。 そこで彼女は、不思議な男の声によってこの世界の真実を知る。 この世界が恋愛小説であり《読者》という存在の影響下にあることを。 そしてアンティローゼが《悪役令嬢》であり、彼女が《悪役令嬢》である限り、断罪され死ぬ運命から逃れることができないことを―― 全てを知った彼女は決意した。 「……もう、あなたたちの思惑には乗らない。私は、《悪役令嬢》の役を降りさせて頂くわ」 ※全12話 約15,000字。完結してるのでエタりません♪ ※よくある悪役令嬢設定です。 ※頭空っぽにして読んでね! ※ご都合主義です。 ※息抜きと勢いで書いた作品なので、生暖かく見守って頂けると嬉しいです(笑)

心の中にあなたはいない

ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。 一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

処理中です...