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70.同じ人?
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「……初めましてマリナ様。第三王子のナシュカです。いつも兄カーズが世話になってます」
「わたくしこそ、立場の違いを超えて接していただき大変お世話になってしまいました。それ以上にサエナリア様にもよくしていただいて身に余る光栄でした」
「そ、そうですか。良かったです」
マリナは微笑みを見せる。その笑顔には一切の曇りも見えない。ナシュカと側近二人はその笑顔に吸い込まれるような錯覚を覚えるが、それ以上にマリナを評価した。
「(すごいぞ。それになんて美しく感じさせられるんだ。こんな女性が成り上がりの男爵令嬢だって?)」
ナシュカは驚かされたのだ。マリナがイメージとまったく違う女性だったこともそうだが、彼女の態度から平民らしさを感じられなかったのだ。てっきり平民と貴族の中間という感じの女性だと想像していただけに、ナシュカの驚きは大きかった。それはバートとバイラも同じ思いだった。
「(マジかよ。本当にこの人が王太子と問題起こした令嬢なのか? ぶりっこな女と思ってたのに)」
「(成り上がりにしては、あまりにも教育が行き届いているように見えます。父親が元貴族の商人だったと聞いていますが、これは……?)」
現実のマリナの貴族らしく清楚で高貴な姿。その姿をまじかで見たナシュカ達はある人物と姿を重ねてしまった。その人物はナシュカ達王家やソノーザ家が探している女性のことだった。
「「「(まるでサエナリア様のようだ)」」」
三人の見た感じでは、マリナの言葉遣いと所作の一つ一つがサエナリアに似ているのだ。顔や体型がまったく違うのにサエナリアとどこか重なってしまう。サエナリアと話したことのあるナシュカでさえ、そんな風に感じてしまうほど、目の前の女性と行方不明の女性は同じ雰囲気を出している。
「このような形でもナシュカ殿下にお会いできて光栄に思います」
「僕に会えて光栄だなんて……」
違うとわかっているのに、マリナをサエナリアと「同一人物?」と一瞬でも思ってしまいそうだった。だが、ナシュカは頭の中で激しく否定する。
「(そんなはずはない。同一人物のはずはないのは間違いない。だが、何だ? このまったく同じ雰囲気は? 彼女たちは友人だと聞いてはいたけど、ここまで似るものなのか? そういえば……)」
ここでナシュカは、マリナとサエナリアが友人だったということを思い出して、ある推論が浮かんだ。それはマリナとサエナリアが互いに深く影響したということだ。
「(マリナ様は確かサエナリア様にカーズ兄さんとの仲を相談された……カーズ兄さんはそう言ってたな。それが本当なら、マリナ様が平民らしさから抜け出してここまでの貴族らしい雰囲気を見せられるようになったのはサエナリア様が助言したからか?)」
カーズの話を聞と、サエナリアは積極的にマリナを助けてきたという。具体的には、マリナがより貴族らしくなるように礼儀作法を丁寧に教えたりとか勉強や人間関係に関する相談にのったとか言っていた。
「(それなら納得できるな。だとすればマリナ様は……)」
いくらサエナリアのような友人の助力があったとはいえ、平民上がりの令嬢が一人前を通り越して上級貴族のような雰囲気を身につける。それには相当な努力が必要になるのではないだろうか。そう考えるとナシュカは目の前の女性に敬意を抱かずにはいられない。
「わたくしこそ、立場の違いを超えて接していただき大変お世話になってしまいました。それ以上にサエナリア様にもよくしていただいて身に余る光栄でした」
「そ、そうですか。良かったです」
マリナは微笑みを見せる。その笑顔には一切の曇りも見えない。ナシュカと側近二人はその笑顔に吸い込まれるような錯覚を覚えるが、それ以上にマリナを評価した。
「(すごいぞ。それになんて美しく感じさせられるんだ。こんな女性が成り上がりの男爵令嬢だって?)」
ナシュカは驚かされたのだ。マリナがイメージとまったく違う女性だったこともそうだが、彼女の態度から平民らしさを感じられなかったのだ。てっきり平民と貴族の中間という感じの女性だと想像していただけに、ナシュカの驚きは大きかった。それはバートとバイラも同じ思いだった。
「(マジかよ。本当にこの人が王太子と問題起こした令嬢なのか? ぶりっこな女と思ってたのに)」
「(成り上がりにしては、あまりにも教育が行き届いているように見えます。父親が元貴族の商人だったと聞いていますが、これは……?)」
現実のマリナの貴族らしく清楚で高貴な姿。その姿をまじかで見たナシュカ達はある人物と姿を重ねてしまった。その人物はナシュカ達王家やソノーザ家が探している女性のことだった。
「「「(まるでサエナリア様のようだ)」」」
三人の見た感じでは、マリナの言葉遣いと所作の一つ一つがサエナリアに似ているのだ。顔や体型がまったく違うのにサエナリアとどこか重なってしまう。サエナリアと話したことのあるナシュカでさえ、そんな風に感じてしまうほど、目の前の女性と行方不明の女性は同じ雰囲気を出している。
「このような形でもナシュカ殿下にお会いできて光栄に思います」
「僕に会えて光栄だなんて……」
違うとわかっているのに、マリナをサエナリアと「同一人物?」と一瞬でも思ってしまいそうだった。だが、ナシュカは頭の中で激しく否定する。
「(そんなはずはない。同一人物のはずはないのは間違いない。だが、何だ? このまったく同じ雰囲気は? 彼女たちは友人だと聞いてはいたけど、ここまで似るものなのか? そういえば……)」
ここでナシュカは、マリナとサエナリアが友人だったということを思い出して、ある推論が浮かんだ。それはマリナとサエナリアが互いに深く影響したということだ。
「(マリナ様は確かサエナリア様にカーズ兄さんとの仲を相談された……カーズ兄さんはそう言ってたな。それが本当なら、マリナ様が平民らしさから抜け出してここまでの貴族らしい雰囲気を見せられるようになったのはサエナリア様が助言したからか?)」
カーズの話を聞と、サエナリアは積極的にマリナを助けてきたという。具体的には、マリナがより貴族らしくなるように礼儀作法を丁寧に教えたりとか勉強や人間関係に関する相談にのったとか言っていた。
「(それなら納得できるな。だとすればマリナ様は……)」
いくらサエナリアのような友人の助力があったとはいえ、平民上がりの令嬢が一人前を通り越して上級貴族のような雰囲気を身につける。それには相当な努力が必要になるのではないだろうか。そう考えるとナシュカは目の前の女性に敬意を抱かずにはいられない。
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