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71.始まりは?
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マリナに更なる興味がわいた。ナシュカがそう思った矢先、動揺を隠せなかった二人が話を勝手に始めようとしてしまった。
「あ、あのマリナ様、俺達が来たのは貴方に聞きたいことがあったからなんです」
「実はある女性が行方が分からなくなってしまい、王宮も困惑しているのです」
「(この二人!)」
ナシュカは舌打ちしたい気分になった。自分が率先して話を始めたいと思ったのに、側近の二人が出しゃばったのだ。この二人の気持ちも分からないわけではないが、余計なことをしてくれたと思わずにはいられなかった。
「サエナリア様のことですね?」
「「「っ!?」」」
マリナは躊躇なく本題に入った。それと同時に笑顔から一変してとても真剣な顔になった。ナシュカは思わず気圧されそうになってしまいそうだった。
だが、そんなことはナシュカの王家の者としてのプライドが許さない。更なる興味が湧いたこともあって笑顔で肯定した。
「………その通りです。知っていることを話していただきたいのです。サエナリア様を見つけて今起こっている問題を解決に導きたいのです」
「その問題とは具体的に教えていただけるのでしょうか?」
マリナの言葉から動揺など感じられない。それはつまり彼女も『今起こっている問題』のことはよく分かっている証拠だ。
「ふふふ、それは貴方次第ですねえ(面白くなってきた)」
「……そうですか。では、何をお聞きしますか?」
「そうですね、では…………」
ナシュカの楽しい話し合いが始まった。
◇
「……なるほど、兄の態度があまりにも他者を軽んずるものだったのですね」
「あの時は、王太子だからといっても人に対する礼儀を欠いているにもほどがあると思って、怒りに任せてカーズ殿下の頬を叩いてしまったのです。思えば身分の差どころか貴族としての立場を考えない行為でした。ですが、カーズ殿下はそのことを笑って許してくださったのです。その日以来からです。カーズ殿下がわたくしのことを気にかけるようになったのは」
ナシュカは最初にマリナとカーズの出会いがどのようなものだったのか聞いてみた。本当はこんな話は聞く気もなかったが、マリナのことをよく知りたいと思ったため、最初のきっかけから知っていこうと決めたのだ。バートとバイラは少し驚くがナシュカに何も言わずに従った。
「そうでしたか。兄のふるまいに関してはお詫びいたします(王太子の頬をひっぱたくか。そういえば聞いたことあったな。その時は驚いたけどマリナ様がそうだったのか。是非あの場にいたかったものだ)」
「そんな。ナシュカ殿下が謝罪するようなことではありません」
マリナとカーズの始まりは始業式での出来事だったらしい。ウィンドウ学園では始業式・卒業式でもパーティーを開催する。大人になって貴族のパーティーを始めたり参加したりする時の予行練習を兼ねているためだ。その時のパーティーで、カーズに他者を軽んじるような態度を取られたマリナが怒って頬を引っ張った。その行為に驚いたカーズは笑って許した。この時に、カーズがマリナに興味を持ったことが始まりだという。
「(頬を叩く行為を受けたカーズ兄さんが笑って許すか。おそらく、その頃のマリナ様みたいな人は珍しくて興味を持ってしまったんだね。そのうちに気になり始めて好きになったというわけか。まぁ、カーズ兄さんらしいか。王族らしからぬことだけどね)」
「あ、あのマリナ様、俺達が来たのは貴方に聞きたいことがあったからなんです」
「実はある女性が行方が分からなくなってしまい、王宮も困惑しているのです」
「(この二人!)」
ナシュカは舌打ちしたい気分になった。自分が率先して話を始めたいと思ったのに、側近の二人が出しゃばったのだ。この二人の気持ちも分からないわけではないが、余計なことをしてくれたと思わずにはいられなかった。
「サエナリア様のことですね?」
「「「っ!?」」」
マリナは躊躇なく本題に入った。それと同時に笑顔から一変してとても真剣な顔になった。ナシュカは思わず気圧されそうになってしまいそうだった。
だが、そんなことはナシュカの王家の者としてのプライドが許さない。更なる興味が湧いたこともあって笑顔で肯定した。
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「その問題とは具体的に教えていただけるのでしょうか?」
マリナの言葉から動揺など感じられない。それはつまり彼女も『今起こっている問題』のことはよく分かっている証拠だ。
「ふふふ、それは貴方次第ですねえ(面白くなってきた)」
「……そうですか。では、何をお聞きしますか?」
「そうですね、では…………」
ナシュカの楽しい話し合いが始まった。
◇
「……なるほど、兄の態度があまりにも他者を軽んずるものだったのですね」
「あの時は、王太子だからといっても人に対する礼儀を欠いているにもほどがあると思って、怒りに任せてカーズ殿下の頬を叩いてしまったのです。思えば身分の差どころか貴族としての立場を考えない行為でした。ですが、カーズ殿下はそのことを笑って許してくださったのです。その日以来からです。カーズ殿下がわたくしのことを気にかけるようになったのは」
ナシュカは最初にマリナとカーズの出会いがどのようなものだったのか聞いてみた。本当はこんな話は聞く気もなかったが、マリナのことをよく知りたいと思ったため、最初のきっかけから知っていこうと決めたのだ。バートとバイラは少し驚くがナシュカに何も言わずに従った。
「そうでしたか。兄のふるまいに関してはお詫びいたします(王太子の頬をひっぱたくか。そういえば聞いたことあったな。その時は驚いたけどマリナ様がそうだったのか。是非あの場にいたかったものだ)」
「そんな。ナシュカ殿下が謝罪するようなことではありません」
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「(頬を叩く行為を受けたカーズ兄さんが笑って許すか。おそらく、その頃のマリナ様みたいな人は珍しくて興味を持ってしまったんだね。そのうちに気になり始めて好きになったというわけか。まぁ、カーズ兄さんらしいか。王族らしからぬことだけどね)」
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