90 / 149
90.感傷?
しおりを挟む
屋敷の中に入ったレフトンたちは、屋敷内の使用人がいないことに奇妙な感覚を感じた。今のソノーザ家の屋敷の内部には使用人が全くいない。サエナリアの部屋まで案内する執事と侍女の二人以外は本当に辞めて出て行ったようだ。話で聞いた通り、サエナリアの妹のワカナが選んだだけにろくでもない使用人の方が大多数を占めていたようだ。
「……、……、……!」
「……、……、……!」
がらんとした屋敷の中は静かすぎて……ということは無かった。夫婦げんかする声が耳に入ってくるため、少し不快な気がするだけだった。それでもレフトンたちと使用人二人は気にせず進む。
「(……ここがソノーザ公爵家か。かつて僕の父さんが暮らしていた場所か。親戚とはいえ、平民の僕が踏み入れる日が来るなんて思いもよらなかったよ)」
ソノーザ公爵家に仕える使用人二人に案内されながら屋敷な内部を見渡すライトは、深く感傷に浸る。実の父親の出自のこともあってか少し落ち着けない気分になった。出自が出自だけに。
「(だけど、父さんが出て行ったこの屋敷をソノーザ家の人たちは手放すことになるのかもしれないと思うと皮肉な感じもするな。その要因に僕も加わっていることも中々滑稽だね。……いや、彼らの自業自得か)」
「落ち着きなよライト」
「え!?」
無意識にこぶしを握り締めて考え込もうとするライトにレフトンが声を掛けた。表面上は普段通りに見えても、レフトンにはライトが落ち着きを無くしかけているように見えたのだ。そして、レフトンの予想は見事に当たっていた。
「な、何!?」
「ふっ、ライトよ。お前が感傷を感じるのも、ソノーザ公爵家に怒りを覚えるのも分かる。感情的なライトも俺的には見てみたいって気持ちはあるが、親父さんのためにもその気持ちのせいで取り乱さないでくれ」
「! レフトン……」
「親父さんのことを思う気持ちは大事だ。家族だもんな。ただ、その気持ちを重んじるなら、感情を押し殺せとは言わないが最悪のタイミングで取り乱して今までの苦労をダメにしないでほしいんだ。お前もそう思うだろ、エンジ?」
「え? あ、ああ、そうだな。その通りだ……はっ!」
話を振られたエンジは一瞬驚いたが、とりあえずレフトンに同意した。だが、後になって気づいた。レフトンの言葉の意味は先ほどのエンジ自身にも当てはまることだということに。
「(レフトン、お前……。そうだな、あの場でお前の制止を振り切って、ソノーザ公爵を斬ってしまっていたら、お前や執事、それにミルナの苦労を水の泡にしてしまうところだったかもしれないな。……悪いことしたものだ)」
「……そうだね。二人の言うとおりだ。ありがとう心配してくれて」
「おう」
ライトは薄く笑って礼を言った。レフトンの気遣いに心から感謝した。レフトンもニカッと笑顔を見せる。
「皆さん、お待たせしました。こちらがサエナリアお嬢様のお部屋でございます」
そんなやり取りをしているうちに、三人は目的の場所に着いた。
「「「………………」」」
今、行方不明になっているサエナリア・ヴァン・ソノーザの使用していた部屋だ。
「……、……、……!」
「……、……、……!」
がらんとした屋敷の中は静かすぎて……ということは無かった。夫婦げんかする声が耳に入ってくるため、少し不快な気がするだけだった。それでもレフトンたちと使用人二人は気にせず進む。
「(……ここがソノーザ公爵家か。かつて僕の父さんが暮らしていた場所か。親戚とはいえ、平民の僕が踏み入れる日が来るなんて思いもよらなかったよ)」
ソノーザ公爵家に仕える使用人二人に案内されながら屋敷な内部を見渡すライトは、深く感傷に浸る。実の父親の出自のこともあってか少し落ち着けない気分になった。出自が出自だけに。
「(だけど、父さんが出て行ったこの屋敷をソノーザ家の人たちは手放すことになるのかもしれないと思うと皮肉な感じもするな。その要因に僕も加わっていることも中々滑稽だね。……いや、彼らの自業自得か)」
「落ち着きなよライト」
「え!?」
無意識にこぶしを握り締めて考え込もうとするライトにレフトンが声を掛けた。表面上は普段通りに見えても、レフトンにはライトが落ち着きを無くしかけているように見えたのだ。そして、レフトンの予想は見事に当たっていた。
「な、何!?」
「ふっ、ライトよ。お前が感傷を感じるのも、ソノーザ公爵家に怒りを覚えるのも分かる。感情的なライトも俺的には見てみたいって気持ちはあるが、親父さんのためにもその気持ちのせいで取り乱さないでくれ」
「! レフトン……」
「親父さんのことを思う気持ちは大事だ。家族だもんな。ただ、その気持ちを重んじるなら、感情を押し殺せとは言わないが最悪のタイミングで取り乱して今までの苦労をダメにしないでほしいんだ。お前もそう思うだろ、エンジ?」
「え? あ、ああ、そうだな。その通りだ……はっ!」
話を振られたエンジは一瞬驚いたが、とりあえずレフトンに同意した。だが、後になって気づいた。レフトンの言葉の意味は先ほどのエンジ自身にも当てはまることだということに。
「(レフトン、お前……。そうだな、あの場でお前の制止を振り切って、ソノーザ公爵を斬ってしまっていたら、お前や執事、それにミルナの苦労を水の泡にしてしまうところだったかもしれないな。……悪いことしたものだ)」
「……そうだね。二人の言うとおりだ。ありがとう心配してくれて」
「おう」
ライトは薄く笑って礼を言った。レフトンの気遣いに心から感謝した。レフトンもニカッと笑顔を見せる。
「皆さん、お待たせしました。こちらがサエナリアお嬢様のお部屋でございます」
そんなやり取りをしているうちに、三人は目的の場所に着いた。
「「「………………」」」
今、行方不明になっているサエナリア・ヴァン・ソノーザの使用していた部屋だ。
27
あなたにおすすめの小説
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
【完結】悪役令嬢の反撃の日々
ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?
ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」
華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。
目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。
──あら、デジャヴ?
「……なるほど」
従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです
hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。
ルイーズは伯爵家。
「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」
と言われてしまう。
その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。
そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる