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89.疑念?
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「(……彼女は何故黙ってたんだ? ていうか本当にコキア子爵の令嬢なのか? 本当だったのなら、ソノーザ家の長女をそこまで慕う理由があるのか?)」
そんなレフトンをミルナは少し目を細めて見つめ返す。そして笑って誤魔化した。
「レフトン殿下。あまりお屋敷を睨まれても証拠は逃げないことを保証いたしますゆえ落ち着いてもらえないでしょうか?」
「……俺はそういうことを……いや、今はいいか。大事なことを黙ってたことについてはもう少し後で聞かせてもらうとするよ。今は目的を果たそう」
「はい。お願いします」
にっこり笑うミルナを見てレフトンは笑い返す。ただ、レフトンな笑みはやや引きつっていた。その様子をエンジは訝しげに見て疑問に思った。
「おいレフトン、いつからミルナと面識があったんだ? 詳しいことを聞かせてくれ」
エンジの質問に対して、レフトンは真面目に答える。その顔から笑みも消えていた。
「お前が気にするのは分かるが、今はそれどころじゃない。今俺が言えるのは、お前と彼女が幼馴染だということは本当に知らなかった。俺の中で彼女はこの件の協力者の一人に過ぎなかったんだ。悪い言い方だが執事の爺さんの仲間ぐらいにしか思っていなかった。……俺の側近のお前が幼馴染だと明かさなかったことにちょっと怒ってるけどな」
「…………」
レフトンはミルナに対して思うところがあるのか、簡潔に答えた。それでも微妙な気持ちがエンジの頭から消えなかったが、レフトンの言っていることも理解できるためか、これ以上聞く気になれなくなった。
「エンジ、ここは目的を果たそうじゃないか。彼女の話はその後でも遅くはない。本人がこちら側にいるんだからいつでも話ができるじゃないか。違う?」
「……そうだな、分かった」
ライトにも正論を言われて、エンジは複雑な気持ちを抑えて渋々納得した。だが、心の中では絶対に聞き出そうという決意があった。
「(これが終わったら、ミルナと二人きりにさせてもらうか。レフトンなら問題なく許すだろう。もっとも、レフトンにも聞きたいことはあるけどな。執事の男のことも聞かなくては)」
「お話は終わりましたね? では皆さん、サエナリアお嬢様の部屋までご案内しますが、いいですか?」
ウォッチが確認すると、その場にいる全員が頷いた。
「ああ、頼んますよ執事の爺さん」
レフトンは笑顔で皆の総意を答えた。ウォッチも笑顔で返した。
「それでは、私、ウォッチ・オッチャーが皆様をご案内します」
「私、ミルナ・ウィン・コキアも同じく」
こうして、第二王子と側近二人、ソノーザ公爵家の執事と侍女。この五人はサエナリア・ヴァン・ソノーザ公爵令嬢の使用していた部屋に向かうのだった。
この屋敷の主、ベーリュ・ヴァン・ソノーザに何も言わずに。
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「…………」
レフトンはミルナに対して思うところがあるのか、簡潔に答えた。それでも微妙な気持ちがエンジの頭から消えなかったが、レフトンの言っていることも理解できるためか、これ以上聞く気になれなくなった。
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ライトにも正論を言われて、エンジは複雑な気持ちを抑えて渋々納得した。だが、心の中では絶対に聞き出そうという決意があった。
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