悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu

文字の大きさ
88 / 149

88.侍女?

しおりを挟む
「仕方ありませんよ。彼らはワカナお嬢様に顔で雇われた者たちなのですから。期待するだけ無駄です」

「「「っ!?」」」

「……ふっ、そうですね。貴女の言う通りでしょうね」

突如現れたのは侍女の格好をした女性だった。ポニーテールの黒髪に黒目、そばかすに鋭い目つきに眼鏡が特徴だ。三人とも彼女こそが今の話題になった人物だと思った。そんな彼女に真っ先に反応したのはエンジだった。

「そ、その声は……ミルナ、ミルナなのか!?」

エンジは駆け足で傍まで寄ってきた。そんなエンジの問いかけに答える前に、彼女は眼鏡をはずし、顔を布で拭った。すると、そこには眼鏡もそばかすもない顔になった女性がいた。どうやら化粧で作ったそばかすを消して素顔を晒したようだ。

「ええ、久しぶりですねエンジ君。いえ、エンジ様。もう貴族ではなくなった、ただのミルナです」

「ミ、ミルナ!」

彼女の声と笑顔を実感してエンジは確信した。この女性こそ、幼馴染のミルナ・ウィン・コキアなのだと。エンジは思わず彼女を抱きしめた。

「きゃっ!」

「まさかこんなところで再会できるなんて! 今までどうしていたんだ!? コキア子爵はどうなったんだ!? ソノーザ公爵家で侍女をしていたなんて、サエナリア様の事件にも関係しているのか!?」

「え、え~と、エンジ様。質問が多すぎますから、一度落ち着いてくださいませ。一度にたくさん聞かれても困ります。後、苦しいです」

「あっ、そ、そうか。そうだな……」

ミルナに言われてエンジも彼女から身を離した。その顔は少し赤くなっている。

「だから最初に知りたいことを教えて差し上げます。とりあえず今の私は元気にしていますよ。両親を失ったりしてつらいことも多かったですが、それらを乗り越えて今を生きています。心配しなくても大丈夫ですよエンジ様」

「! ……そうか、よかった。本当に良かった……!」

ミルナは元気だと答えた。見たところ確かに元気そうでいる。ただ、様付けされたことにエンジは少し悲しみを感じた。エンジは貴族だが、没落した貴族令嬢のミルナは平民だ。立場をわきまえられても仕方がない。

「(エンジ様、か。確かに今の彼女は貴族じゃないから仕方ないか。今はな……)」

少しの間、二人はじっと見つめ合っていた。ただ、いつまでもそういうわけにもいかないため、仕方なくレフトンが笑って声を掛けてきた。

「あ~……え~と、うん。二人とも今ここで口を挟むのは無粋なことだと分かっているし、空気読めない男っていわれると思うが言わせてくれ。いつまでもここで立ち話している場合じゃないんだ。二人の関係のことは後で聞かせてもらう方針にしてほしいんだ。今は、」

「サエナリアお嬢様に関する情報収集でしょう? 分かっていますよ。サエナリアお嬢様が使っていたお部屋までご案内しますよ。使用人が9割ほどいなくなったおかげで手付かずですから証拠なら残ってますよ」

「何!?」

「やはり、そういうことか」

「…………」

エンジは驚き、ライトは納得したような顔になった。だが、レフトンのミルナを見る目は睨んでいるようにも見えた。
しおりを挟む
感想 309

あなたにおすすめの小説

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

縁の鎖

T T
恋愛
姉と妹 切れる事のない鎖 縁と言うには悲しく残酷な、姉妹の物語 公爵家の敷地内に佇む小さな離れの屋敷で母と私は捨て置かれるように、公爵家の母屋には義妹と義母が優雅に暮らす。 正妻の母は寂しそうに毎夜、父の肖像画を見つめ 「私の罪は私まで。」 と私が眠りに着くと語りかける。 妾の義母も義妹も気にする事なく暮らしていたが、母の死で一変。 父は義母に心酔し、義母は義妹を溺愛し、義妹は私の婚約者を懸想している家に私の居場所など無い。 全てを奪われる。 宝石もドレスもお人形も婚約者も地位も母の命も、何もかも・・・。 全てをあげるから、私の心だけは奪わないで!!

ハーレムエンドを迎えましたが、ヒロインは誰を選ぶんでしょうね?

榎夜
恋愛
乙女ゲーム『青の貴族達』はハーレムエンドを迎えました。 じゃあ、その後のヒロイン達はどうなるんでしょうね?

我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜
恋愛
とある侯爵家で催された夜会、伯爵令嬢である私ことアンリエットは、婚約者である侯爵令息のギルバートと逸れてしまい、彼の姿を探して庭園の方に足を運んでいた。 そこで目撃してしまったのだ。 婚約者が幼馴染みの男爵令嬢キャロラインと愛し合っている場面を。しかもギルバートは私の家の乗っ取りを企んでいるらしい。 よろしい! おバカな二人に鉄槌を下しましょう!  長くなって来たので長編に変更しました。

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

妹は謝らない

青葉めいこ
恋愛
物心つく頃から、わたくし、ウィスタリア・アーテル公爵令嬢の物を奪ってきた双子の妹エレクトラは、当然のように、わたくしの婚約者である第二王子さえも奪い取った。 手に入れた途端、興味を失くして放り出すのはいつもの事だが、妹の態度に怒った第二王子は口論の末、妹の首を絞めた。 気絶し、目覚めた妹は、今までの妹とは真逆な人間になっていた。 「彼女」曰く、自分は妹の前世の人格だというのだ。 わたくしが恋する義兄シオンにも前世の記憶があり、「彼女」とシオンは前世で因縁があるようで――。 「彼女」と会った時、シオンは、どうなるのだろう? 小説家になろうにも投稿しています。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

【完結】その溺愛は聞いてない! ~やり直しの二度目の人生は悪役令嬢なんてごめんです~

Rohdea
恋愛
私が最期に聞いた言葉、それは……「お前のような奴はまさに悪役令嬢だ!」でした。 第1王子、スチュアート殿下の婚約者として過ごしていた、 公爵令嬢のリーツェはある日、スチュアートから突然婚約破棄を告げられる。 その傍らには、最近スチュアートとの距離を縮めて彼と噂になっていた平民、ミリアンヌの姿が…… そして身に覚えのあるような無いような罪で投獄されたリーツェに待っていたのは、まさかの処刑処分で── そうして死んだはずのリーツェが目を覚ますと1年前に時が戻っていた! 理由は分からないけれど、やり直せるというのなら…… 同じ道を歩まず“悪役令嬢”と呼ばれる存在にならなければいい! そう決意し、過去の記憶を頼りに以前とは違う行動を取ろうとするリーツェ。 だけど、何故か過去と違う行動をする人が他にもいて─── あれ? 知らないわよ、こんなの……聞いてない!

処理中です...