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123.威厳?
しおりを挟む「それにどうやら出世に関係なく気に入らない商店や下級貴族の家を潰したり、他国の貴族に賄賂を贈ったりしていますね。ああ、これは不自然に借金ができて没落した元貴族の方々の証言をもとに調べて判明したことなので、証拠もありますよ」
「……だそうだが?」
「あ、あ……(ここまで、されたか……)」
ベーリュはもはや、何も言い返せなかった。それもそのはず、分厚い書類を見せられた時点で徹底的に調べられたことは分かってしまっていた。更に、それを言葉で説明されて遂に心が折れてしまったのだ。
「…………(な、なんて男なの……こんな奴と結婚してたなんて……)」
「~~~~~っ!(もういいでしょ! さっさと私を解放してよ! 私、娘だから関係ないでしょうに!)」
すでにベーリュには誰一人味方はいない。妻のネフーミですら侮蔑を込めた目をしているし、娘のワカナは感心すらなかった。周りにいるのは敵だらけという状況だ。それは傍聴席も同じ。
「……そこまで罪を犯してきたなんて、尋常じゃない……」
「ま、待ってくれ! 過去の事件の黒幕が奴なら、私も被害者じゃないか! ゆ、許せん!」
「死刑だ! 死刑にしろ! 最低でもベーリュ・ヴァン・ソノーザだけは死刑確定だ!」
「サエナリア様が可哀そうだわ! あんな奴らが家族だなんて!」
「酷すぎる! もはや悪魔の所業! 死刑決定!」
ベーリュ・ヴァン・ソノーザに対する罵詈雑言が裁判所に響く。中には怒りの形相で傍聴席から身を乗り出そうとする者すら出る始末だ。衛兵に止められてもお構いなしに。
「あいつを殴らせろ! いや、殺してやる! 奴のせいで俺の商売はダメになったんだ!」
「ダメです! 落ちついてください!」
「あの男のせいで、私の娘は!」
「貴族の地位を返せ! 行方不明の家族を返してくれ!」
「今は裁判中です! 抑えて!」
傍聴席にいる三割ほどの人たちが怒り狂ってしまった。暴れ狂う者たちはベーリュの愚行の犠牲になった者たちのようだ。多くの衛兵が駆けつけて暴動になるのを止めに掛かる。
「(マズいな……)」
「(こうなる可能性もあったから衛兵を二割ほど多く配備したのに……)」
「(あのくそ公爵の悪事はここまでさせるか)」
これはどうにもならないのではないか、もう裁判どころではないのではないか、王子たちや裁判長すら思った。
だが、
「皆、控えよっ!」
「「「「「っ!?」」」」」
「「「「「陛下っ!?」」」」」
「「「父上っ!」」」
国王ジンノ・フォン・ウィンドウは騒ぐ者たちに向けて大きな声を放った。拡声器を使ったため、とてつもない衝撃を受けたような錯覚すらさせた。その一声でこの場にいる全ての者がハッとした。そして、全ての視線が国王に向けられた。その視線の先にいた国王は先ほどとは全く違った顔をしていた。その顔は威厳に満ちた『王』そのものだった。高貴なる貴族の頂点にして、国の最高責任者。そんな男がそこにいた。
「……皆、今は裁判ぞ。不要な私語は控えよ」
「「「「「………………………」」」」」
「裁判長、進めよ」
辺りは静かになった。それを好機として、国王は裁判長に裁判の続行を促す。
「は、はい!」
国王に言われて裁判長は慌てて気を引き締める。裁判を続けてソノーザ公爵に判決を下すために。
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