125 / 149
125.激怒?
しおりを挟む「陛下! 我が娘サエナリアが行方不明になった原因がわかりました! それはこの男ザンタ・メイ・ミークによる誘拐です! この男は私に恨みを抱いていました。それで貴族に戻ったのをいいことに、己の娘を使ってカーズ殿下を誘惑しサエナリアを騙して友人に成りすました。この男は私を裁判にかけるためにカーズ殿下を惑わしサエナリアを誘拐したに違いありません! この男は罪人です。サエナリアの誘拐容疑で捕らえるべきです!」
途切れることなくザンタが自分を陥れた、サエナリアを行方不明にした、と言い張るベーリュ。突然立ち上がって顔を赤くして何を言い出すかと思えば……ベーリュの行動に呆気にとられる。そう思う者は多かった。
「何やってんだよ。あのくそ公爵」
「悪あがきも酷くなったな」
「自業自得のくせにまた人のせいにするのね」
「自己中の極みだな」
「見苦しいわね」
それは王族も同じだった。いや、王族だからこそ余計に苛立ちを感じていた。
「くっ、くっふふふふっふ! な、何を言い出すかと思えば、今になっても罪を押し付けようとするとはな……こ、ここまで往生際が悪いとは………………よくそんなことが言えたものだ!」
「うっ!?」
国王はベーリュの言い分を理解すると、初めは笑いをこらえるのに必死な様子だった。だが、途中で怒りに代わって言葉を吐き捨てた。
「いいか! ザンタがサエナリアの誘拐? そんなことは不可能だ! ザンタは今も貴族でもあり商人でもあるのだぞ! 商人とは周りからの信頼を重視する。そんな男が商人として信頼を失うような真似をするはずがなかろう! それにミーク家には今も借金があるのだ。誘拐などという行為に使う金が無いほどにな! それにこの裁判のことも伝えた時にザンタ本人に『自分の家のことを調べて冤罪であることを証明してほしい』と希望したから過去のことも今のことも調べ直したのだ。その結果は白! つまり、お前の言うような策略など存在せん! 見苦しいにもほどがあるぞ! 貴族としての尊厳すら失ったか、ベーリュ・ヴァン・ソノーザ!」
「…………(くそう)」
国王が怒りを露わにした。そんな姿を初めて見た者たちは裁判所内では多く、その誰もがとても驚いた。息子たちでさえ例外ではなかった。
「父上……」
「親父……」
「……(始めて見た。あんな父上は)」
ベーリュも驚きつつ、国王に怒鳴られ気力を無くす。確かにそこまでされていると言われれば、これ以上の反論はない。そんなベーリュを見て、ザンタは嫌そうに語る。
「はぁ……こんな男に我が家が一度潰されたと思うと情けない限りです。怒りよりも呆れと言う気持ちが強い。少なくとも、私だけは。他の者は知らないがな」
「そうですね。では、次の方どうぞ」
宰相の言葉に応じて新たに人が現れた。今度は、修道服を着た女性だった。
「そ、その女は………?」
「彼女は貴方のせいで人生を狂わされた平民の方ですよ。貴方の弟に命を救われましたがね」
「っ!? ………そうか、あの時の!」
宰相に言われて気付いた。ベーリュにとって、彼女はあの時に弟に助けさせるために利用した女だったのだ。退学した後は行方も気にしなかった平民の学生だった女性に過ぎなかったが、その女も証言者としてベーリュの前に現れたのだ。
「(あ、あんな平民の女までわざわざ見つけ出したのか?)」
「彼女にも証言していただくことになっています。貴方の罪をね。言っておきますが他にも証言したい方がいますのでよく聞いてくださいね」
この後、宰相の言う通り、彼女を含め多くの証人が証言した。それらの証言のたびにベーリュがいくら吠えようとも正論をもって反論されるのであった。
29
あなたにおすすめの小説
従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです
hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。
ルイーズは伯爵家。
「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」
と言われてしまう。
その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。
そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
私は《悪役令嬢》の役を降りさせて頂きます
・めぐめぐ・
恋愛
公爵令嬢であるアンティローゼは、婚約者エリオットの想い人であるルシア伯爵令嬢に嫌がらせをしていたことが原因で婚約破棄され、彼に突き飛ばされた拍子に頭をぶつけて死んでしまった。
気が付くと闇の世界にいた。
そこで彼女は、不思議な男の声によってこの世界の真実を知る。
この世界が恋愛小説であり《読者》という存在の影響下にあることを。
そしてアンティローゼが《悪役令嬢》であり、彼女が《悪役令嬢》である限り、断罪され死ぬ運命から逃れることができないことを――
全てを知った彼女は決意した。
「……もう、あなたたちの思惑には乗らない。私は、《悪役令嬢》の役を降りさせて頂くわ」
※全12話 約15,000字。完結してるのでエタりません♪
※よくある悪役令嬢設定です。
※頭空っぽにして読んでね!
※ご都合主義です。
※息抜きと勢いで書いた作品なので、生暖かく見守って頂けると嬉しいです(笑)
心の中にあなたはいない
ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。
一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです
風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。
婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。
そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!?
え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!?
※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。
※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる