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126.因果応報?
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「ベーリュよ。もはや反論する気も失せたようだな。面白いくらい顔色が悪いではないか」
「…………(…………)」
からかうような口調と冷めた目で国王が語り掛けるが、虚ろな目で何も考えられなくなったような顔をするベーリュには何もする気が起こらない。それほどまでに証人たちがベーリュの罪を語ってくれたのだ。
証人たちの語ったことはすべて事実だった。ザンタをはじめ陥れられた者がすべてだったこともあり、正確にベーリュの罪を語ってくれたのだ。そして、それらはすでに王家でも実証済みでもあると証言されている。
十人以上の証人が証言した後、裁判所は静かになった。傍聴席の者たちも罵詈雑言を言いつくしたということだ。今はソノーザ家の処分の方が気になるのだろう。
「「「「「…………」」」」」
「(もうそろそろ頃合いだな)」
だが、その沈黙はいずれ終わる。ベーリュの様子からすっかり諦めきったと悟った国王によって。
「書類上の証拠の他に、これだけ多くの証人が証言してくれた以上、もう何一つ言い逃れはできんな」
「「………………」」
もはや、ベーリュに反論する精神力もなかった。本当に万策尽きたのだ。
「わ、私は………俺は、ここで終わるのか………今まで、ずっと、家を大きくしてきたというのに………」
「ああ、お前はここで終わる。因果応報にして自業自得というやつだ」
「………………そうか。今まで頑張ってきたのにな」
虚ろな目で微笑し、絞りきったような言葉を吐くベーリュ。そんな惨めな夫の姿にここまで黙っていた妻のネフーミは激しい怒りを露にした。
「何が今まで頑張ったよ! 出世のためにっていう口実で悪事を行ってきただけじゃない! どうしてそのために私たちが巻き込まれなければならないのよ!? 何の罪もない私や娘たちが何でこんな目に!」
「おや? ソノーザ公爵夫人よ、よもや自分も被害者だと言わんばかりだな。そなたとて罪はあるぞ。育児放棄という罪がな」
「そ、そんな………!」
ネフーミはヒステリックな声を上げるが、国王はお構いなしに淡々と告げる。
「我が国では育児放棄及び極端な格差教育は罪に該当する。つまり、そなたの場合は姉妹格差。つまり娘の教育のことでこの二つの罪を重ねておる。夫のことをとやかく言う資格はないぞ」
「あ、ああ………………」
国王にこの国の法律と正論を言われてネフーミは反論もせずに項垂れる。国王はそんな彼女に一切興味もないので裁判長に目配せで合図する。ソノーザ家を罰するために。
「この場において、裁判長として判決を下す。ベーリュ・ヴァン・ソノーザを今日明かされた数え切れぬほどの多くの罪状により、今すぐ公爵の爵位と領地と財産を取り上げ、翌日のうちに公開処刑を行うものとする。更にネフーミ・ヴァン・ソノーザを育児放棄及び極端な格差教育の罪により親権の剥奪及び貴族籍の剥奪とグレイブ修道院送りを決定する」
「………………」
「そ、そんなぁぁぁぁぁ…………嘘よ、嘘よぉぉぉぉぉ…………」
「(ねえ!? 私はどうなるのよ!? ねえ!?)」
判決が下された。ソノーザ公爵、いや『元』公爵夫妻は生気を失って絶望した。そして、そんな二人を誰も同情しない。今の二人を見る者はその惨めな姿に喜ぶ方が多い。傍聴席にいる者たちの中にも犠牲者がいるのだから。一番後ろにいる侍女服を着た女性のように。
「……これで奴らは終わりましたよ。お父様、お母様……」
「ミルナ……」
そんな彼女に寄り添うのは幼馴染のエンジだ。二人は証人としてではなく裁判を見守ることにしていたのだ。事前にソノーザ夫妻の処遇のことは知っているため、ミルナとしてはわざわざ証人になってまで表に立とうとは思わなかった。
この後、ついでに次女のワカナも裁かれることになった。罪状は、第一王子及び第二王子に対する侮辱罪。貴族籍を剥奪されて平民に落ちて、二ヶ月間の謹慎処分ということになった。身分の高い貴族が平民に落ちるということは耐え難い屈辱だ。母親のネフーミのように修道院送りにならなかったのは、母親と違って刑を軽くするように懇願する者がいなかったからだ。母親の産まれたザイーダ侯爵家すらネフーミはともかくワカナを気にも留めなかったという。
「…………(…………)」
からかうような口調と冷めた目で国王が語り掛けるが、虚ろな目で何も考えられなくなったような顔をするベーリュには何もする気が起こらない。それほどまでに証人たちがベーリュの罪を語ってくれたのだ。
証人たちの語ったことはすべて事実だった。ザンタをはじめ陥れられた者がすべてだったこともあり、正確にベーリュの罪を語ってくれたのだ。そして、それらはすでに王家でも実証済みでもあると証言されている。
十人以上の証人が証言した後、裁判所は静かになった。傍聴席の者たちも罵詈雑言を言いつくしたということだ。今はソノーザ家の処分の方が気になるのだろう。
「「「「「…………」」」」」
「(もうそろそろ頃合いだな)」
だが、その沈黙はいずれ終わる。ベーリュの様子からすっかり諦めきったと悟った国王によって。
「書類上の証拠の他に、これだけ多くの証人が証言してくれた以上、もう何一つ言い逃れはできんな」
「「………………」」
もはや、ベーリュに反論する精神力もなかった。本当に万策尽きたのだ。
「わ、私は………俺は、ここで終わるのか………今まで、ずっと、家を大きくしてきたというのに………」
「ああ、お前はここで終わる。因果応報にして自業自得というやつだ」
「………………そうか。今まで頑張ってきたのにな」
虚ろな目で微笑し、絞りきったような言葉を吐くベーリュ。そんな惨めな夫の姿にここまで黙っていた妻のネフーミは激しい怒りを露にした。
「何が今まで頑張ったよ! 出世のためにっていう口実で悪事を行ってきただけじゃない! どうしてそのために私たちが巻き込まれなければならないのよ!? 何の罪もない私や娘たちが何でこんな目に!」
「おや? ソノーザ公爵夫人よ、よもや自分も被害者だと言わんばかりだな。そなたとて罪はあるぞ。育児放棄という罪がな」
「そ、そんな………!」
ネフーミはヒステリックな声を上げるが、国王はお構いなしに淡々と告げる。
「我が国では育児放棄及び極端な格差教育は罪に該当する。つまり、そなたの場合は姉妹格差。つまり娘の教育のことでこの二つの罪を重ねておる。夫のことをとやかく言う資格はないぞ」
「あ、ああ………………」
国王にこの国の法律と正論を言われてネフーミは反論もせずに項垂れる。国王はそんな彼女に一切興味もないので裁判長に目配せで合図する。ソノーザ家を罰するために。
「この場において、裁判長として判決を下す。ベーリュ・ヴァン・ソノーザを今日明かされた数え切れぬほどの多くの罪状により、今すぐ公爵の爵位と領地と財産を取り上げ、翌日のうちに公開処刑を行うものとする。更にネフーミ・ヴァン・ソノーザを育児放棄及び極端な格差教育の罪により親権の剥奪及び貴族籍の剥奪とグレイブ修道院送りを決定する」
「………………」
「そ、そんなぁぁぁぁぁ…………嘘よ、嘘よぉぉぉぉぉ…………」
「(ねえ!? 私はどうなるのよ!? ねえ!?)」
判決が下された。ソノーザ公爵、いや『元』公爵夫妻は生気を失って絶望した。そして、そんな二人を誰も同情しない。今の二人を見る者はその惨めな姿に喜ぶ方が多い。傍聴席にいる者たちの中にも犠牲者がいるのだから。一番後ろにいる侍女服を着た女性のように。
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