悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu

文字の大きさ
136 / 149

136.行動?

しおりを挟む

そして、現在。

「……ということがあったのです。その後、私達はすぐにこちらに向かったのです」

クラマが現時点で分かることを簡潔に説明した。

「つまり、ワカナ・ヴァン・ソノーザを慕う学生の誰かが彼女を助けるために行動を起こしたというわけか」

「あのくそ女、見栄えだけなら相当なもんだからな。性格最悪だけどよ」

「彼女の容姿にのぼせ上った者が脱走の手引きか。よほどの愚か者らしいね」

三人の王子は嫌そうな顔を隠しもしなかった。特にカーズとレフトンは実際に会ったことがあることもあり、嫌悪感は大きい。何しろ王族と分かっているのに罵詈雑言を口にできる女なのだ。普段のふるまいも含めて貴族令嬢失格どころの話では済まされない。そんな存在が謹慎中を逃亡とは、聞かないわけにはいかないが耳が痛い。

「……クラマ宰相、今も捜索中なのですよね。それと並行して脱走の手引きを行った者を特定するように指示していただけますか?」

「ナシュカ殿下、その理由は?」

「その者を捕らえて近辺を調べていけば、ワカナ・ヴァン・ソノーザがどこに行ったか特定できる可能性が高いからです。かの『元』令嬢に身を隠す頭があるかというと微妙ですからね」

「! 流石はナシュカ殿下です。私もそう思っていたところでした(その手があったか!)」

ナシュカの判断に尊敬のまなざしを向けるクラマ。そんなクラマをジト目で見ながら国王は息子たちに今後のことで話をする。

「王家はもちろん、ワカナ・ヴァン・ソノーザの捜索を行う。あのソノーザ家の次女だ。放っておいたら何をしでかすか分かったものじゃない。実の姉と違って阿婆擦れだからな。それでお前たちはどうする?」

三人の王子たちはこの事件に対して、自分なりの行動に出ると決めた。

「俺は学園に行きます。あの女の取り巻きになった男子学生は何人か覚えがあります。側近の者と共に調べてみます。実の姉を虐げるような女が解き放たれたとなれば、俺が何もしないわけにはいきません」

「俺は王都を調べてみる。あの女は王都で結構遊び歩いてたって情報があるし、実際に俺も見た。王都に隠れてるなら俺の情報網に引っ掛かってくれるかもしれねえ。ソノーザ家の面倒ごとはもうこりごりだからな」

「僕はバイラと側近と共に王宮に残ります。流石にないとは思うのですが、僕が王太子に決まったことを聞きつけて僕の周りを狙ってくる可能性も無くはないからですね。何よりも、僕は婚約者を大事にしたい」

「……ほう」

息子たちのしっかりした意見を聞いて、国王はそれぞれの成長を感じ取った。特にカーズとナシュカの変化が嬉しかった。

「(カーズにとって学園に行くという選択は自ら針の筵に飛び込むようなものだ。それを分かっていないわけではないというのに自ら行くと口にするとは、王族としての自覚が強くなったか……。ナシュカの判断は意外だが、婚約者を大切にするということはバイラ嬢を守るためということか。あのナシュカに自分の感情を優先するときが来たのか、親として喜ばしいな……)」

サエナリアとマリナのことで、学園にはもうカーズの居場所は無いに等しい。だが国のために行くと言った覚悟は相当なものだ。ナシュカも国の他に、自分の大切な人を守る意思が芽生えた。そう感じた国王は、息子たちの望むとおりにした。

「良かろう。お前たちの思うように動いてくれ。もし、助けが必要ならいつでも言え。できる限りの支援はできるからな」

「気を付けてくださいね。あのワカナという女は異常者の類とみてもいいくらいですから」

「「「はい!」」」

国王と王妃に送り出された王子三人は、すぐに行動に移すべく部屋を後にした。
しおりを挟む
感想 309

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?

ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」  華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。  目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。  ──あら、デジャヴ? 「……なるほど」

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです

hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。 ルイーズは伯爵家。 「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」 と言われてしまう。 その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。 そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

処理中です...