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136.行動?
しおりを挟むそして、現在。
「……ということがあったのです。その後、私達はすぐにこちらに向かったのです」
クラマが現時点で分かることを簡潔に説明した。
「つまり、ワカナ・ヴァン・ソノーザを慕う学生の誰かが彼女を助けるために行動を起こしたというわけか」
「あのくそ女、見栄えだけなら相当なもんだからな。性格最悪だけどよ」
「彼女の容姿にのぼせ上った者が脱走の手引きか。よほどの愚か者らしいね」
三人の王子は嫌そうな顔を隠しもしなかった。特にカーズとレフトンは実際に会ったことがあることもあり、嫌悪感は大きい。何しろ王族と分かっているのに罵詈雑言を口にできる女なのだ。普段のふるまいも含めて貴族令嬢失格どころの話では済まされない。そんな存在が謹慎中を逃亡とは、聞かないわけにはいかないが耳が痛い。
「……クラマ宰相、今も捜索中なのですよね。それと並行して脱走の手引きを行った者を特定するように指示していただけますか?」
「ナシュカ殿下、その理由は?」
「その者を捕らえて近辺を調べていけば、ワカナ・ヴァン・ソノーザがどこに行ったか特定できる可能性が高いからです。かの『元』令嬢に身を隠す頭があるかというと微妙ですからね」
「! 流石はナシュカ殿下です。私もそう思っていたところでした(その手があったか!)」
ナシュカの判断に尊敬のまなざしを向けるクラマ。そんなクラマをジト目で見ながら国王は息子たちに今後のことで話をする。
「王家はもちろん、ワカナ・ヴァン・ソノーザの捜索を行う。あのソノーザ家の次女だ。放っておいたら何をしでかすか分かったものじゃない。実の姉と違って阿婆擦れだからな。それでお前たちはどうする?」
三人の王子たちはこの事件に対して、自分なりの行動に出ると決めた。
「俺は学園に行きます。あの女の取り巻きになった男子学生は何人か覚えがあります。側近の者と共に調べてみます。実の姉を虐げるような女が解き放たれたとなれば、俺が何もしないわけにはいきません」
「俺は王都を調べてみる。あの女は王都で結構遊び歩いてたって情報があるし、実際に俺も見た。王都に隠れてるなら俺の情報網に引っ掛かってくれるかもしれねえ。ソノーザ家の面倒ごとはもうこりごりだからな」
「僕はバイラと側近と共に王宮に残ります。流石にないとは思うのですが、僕が王太子に決まったことを聞きつけて僕の周りを狙ってくる可能性も無くはないからですね。何よりも、僕は婚約者を大事にしたい」
「……ほう」
息子たちのしっかりした意見を聞いて、国王はそれぞれの成長を感じ取った。特にカーズとナシュカの変化が嬉しかった。
「(カーズにとって学園に行くという選択は自ら針の筵に飛び込むようなものだ。それを分かっていないわけではないというのに自ら行くと口にするとは、王族としての自覚が強くなったか……。ナシュカの判断は意外だが、婚約者を大切にするということはバイラ嬢を守るためということか。あのナシュカに自分の感情を優先するときが来たのか、親として喜ばしいな……)」
サエナリアとマリナのことで、学園にはもうカーズの居場所は無いに等しい。だが国のために行くと言った覚悟は相当なものだ。ナシュカも国の他に、自分の大切な人を守る意思が芽生えた。そう感じた国王は、息子たちの望むとおりにした。
「良かろう。お前たちの思うように動いてくれ。もし、助けが必要ならいつでも言え。できる限りの支援はできるからな」
「気を付けてくださいね。あのワカナという女は異常者の類とみてもいいくらいですから」
「「「はい!」」」
国王と王妃に送り出された王子三人は、すぐに行動に移すべく部屋を後にした。
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