転生侍女は乙女ゲーム世界を覆す!【『悪役令嬢が行方不明!?』スピンオフ作品!】

mimiaizu

文字の大きさ
18 / 40
本編

18.パペティアー ―誘導―

しおりを挟む
ほどなくして、私もソノーザ家の屋敷に戻りました。すると、すぐにサエナリアお嬢様のことについて聞かれるために、憎むべき男に呼ばれました。

「お前がサエナリアの専属使用人か」

「はい」

目の前に現れた男こそが、我がコキア家の仇、ベーリュ・ヴァン・ソノーザその人だった。出世にしか興味関心がなく、そのためなら手段を選ばない傲慢な男。一体どれほどの罪を盛ったのか恨みを抱く私でさえも計り知れません。

……こんな男が父親のせいでサエナリアお嬢様が……。そう思うと怒りと憎しみが込みあがりますが今はサエナリアお嬢様の屋敷での境遇を耳に入れてやりましょう。いかに己が父親として無能なのか思い知るといいです!

まず、私はサエナリアお嬢様の部屋の場所に案内しました。





「ここか」

長女サエナリアお嬢様の部屋の前にいるのは、ソノーザ家の夫妻ベーリュとネフーミ、それからベーリュの側近の執事ウオッチさんとサエナリアお嬢様の専属の侍女の私だけです。いい感じで誘導できそうですね。ソノーザ一家崩壊を誘導するのに!

「……サエナリアの専属使用人はお前一人だけか。他の者はいないと?」

「はい。他の者は奥様とワカナお嬢様の専属、もしくは他の雑務をこなす者となっております」

正直に答えてやります。私こそがサエナリアお嬢様をずっと支えてきた理解者であると。

「ワカナの専属の数は?」

「十人以上いると思われます」

「はあ?」

専属使用人の数の差を聞いて、ベーリュは額に手を当てます。知らなかったのですね?

「ネフーミよ。最初は娘に7人ほど使用人をつけたはずだが、今は姉に一人、妹に十人以上。この差はあんまりではないか?」

夫に話を振られて、母親失格の妻はは見るからに狼狽える。どんな言い訳をするのですか?

「そ、そんなこと言っても、ワカナが『お姉さまの侍女を私に頂戴』とか『お姉さまの執事のほうが格好いいから私に付けて』って言うからで……」

あらら。正直ですね。

「馬鹿かお前は! そんな理由で使用人に差をつけたというのか! そもそもあいつらは何だ!」

予想通り、父親まで揃うと愉快なことになりました。こうしてみると父親だけならまともそうに見えますが実は数えきれないほどの罪を背負っておらっしゃる身の上。何でこの二人の間にお嬢様が生まれてしまったのか分かりませんね。

「あんな若い執事が専属使用人だとでもいうのか! 優秀だという保証はあるのか? 顔で決めたんだろうが、間違いが起きたらどうするんだ! 貴族の娘なんだぞ、ワカナは!」

「だって……雇う人はあれがいい、これがいいって言うから……」

「顔がいい男を侍らしおって、愛人のつもりか! 万が一、若い執事との間に子でもできてみろ! 社交界でとんだ醜聞になるわ! 私が雇った執事たちまでも解雇しおって、優秀で信用できる者達だったというのに、くそぅ……!」

ほう! 最初の頃の使用人は顔などではなく評判と実績で選んだのですか。父親、いえ、貴族としてはいことは一応してはいましたか。でも残念でした。貴方のささやかな努力が無駄にされました。ざまぁ!

「ドレスや菓子だけでなく使用人にまで口を挟むとは、とんでもない女に育ててくれたものだな!」

「とんでもないって、そんな……。あなただってワカナが可愛かったでしょう! サエナリアよりも可愛らしいって!」

「限度というものがあるわ! 大体、何でワカナの部屋が三部屋もあるのだ!」

ああ、あれも酷いですよねぇ。貴族の令嬢とはいえ、次女が三部屋も用意されるとは。これだと待遇の差がまるわかり、公になれば姉妹格差だといい笑い話です。

「持ってるドレスの数が多くて……余ってる部屋があったから……」

「そんな理由でか!? 持ってるドレスが多いなら捨てるか売れ! いらないドレスくらい処分しろ!」

「あの子が処分したがらないのよ! それに貰い物もいっぱいあるから……」

「三部屋の用意してるなら必要のない物などあるに決まってるだろ! そもそもサエナリアも何故簡単に譲ってしまうんだ!?」

「あ、あの子は……姉だから……」

馬鹿な奥様でも言いづらくて仕方がなかったようです。言ってやればいいのでは? いつも「お姉ちゃん何だから可愛い妹に譲ってあげなさい!」などと注意してきたことを。今になってそれが悪い結果をもたらしたことに気付いてしまっても遅いのですし。

「ちっ! サエナリアの部屋に入るぞ」

ベーリュが遂にお嬢様の部屋を見ます。するとどうでしょう。

「な……」

「え……」

「ここは……」

「…………」

お分かりですか? 安物のベッドとイスとテーブルがすぐ手前にあり、それ以上に宴会や誕生日パーティーに使われるような装飾品の数々、冬にしか使わない防寒具、客用の予備の雑用品、部屋の3割を占める大量の本、その他もろもろがしまってあるこの部屋を。普段屋敷に飾らない物ばかりがこんなにあるこの部屋の本来の役割は何だったと思います?

「「「倉庫(!)……?」」」

……違いますよ! こういうのを物置と言うのです! あ、倉庫も物置も同じか。

「その通りです。サエナリアお嬢様はこの部屋で過ごしてきました」

「「「っ!?」」」

部屋を見た3人は驚愕のあまり開いた口が塞がりませんね。ベーリュが知らなかったのは当然ですが、奥様もこんな状態だとは思わなかったのですか? ウオッチさんも聞いてはいたはずですが、聞くとみるでは違うといものですかね。

「見ての通り、ここは倉庫です。サエナリアお嬢様に与えられた部屋が倉庫でした。お嬢様は文句ひとつ言わずにこの部屋を使い続けました」

悲し気に語る私の話を聞いた3人は、驚愕と困惑でおかしくなりそうな勢いでした。酷い顔です。

「な、何ということだ……姉妹でこんなにも差をつけるとは……」

「き、貴族の御令嬢の部屋としては不適切極まりない……」

「ど、どういうことなのよ! どうして私の娘に、サエナリアにこんな倉庫なんかを自室として与えたのよ!」

うげぇ! この女、自分のせいのくせに私に責任を押し付けるのですか! 最低です!

「奥様、落ち着いてください。彼女を攻めてもどうにもなりませんよ」

「だって、だって……!」

「止めないか、見苦しい!」

ベーリュ、貴方も十分見苦しいではないですか。貴方が家庭を顧みなかった結果がこれですよ。っていうか、クズ夫人が煩わしい。ここは真相を言ってやりましょう。

「何をおっしゃっているのですか奥様? 奥様とワカナお嬢様ですよ。この部屋をサエナリアお嬢様に与えたのは」

「え?」

「何?」

ちっ、この女覚えてないのですか。物忘れが激しいお年頃で?

「おっしゃったではありませんか。ワカナ様が『お姉さまの部屋が欲しいわ』とおっしゃるので奥様が『悪いけど貴女の部屋を譲ってもらえる? 代わりにあの隅っこの部屋を使いなさい』と。その隅っこの部屋がここだったのです」

ふふふ、言ってやりました。するとどうでしょう。視線の先が私から目の前の女に変わります。当の本人はと言うと、私から離れて両手で顔を覆って叫びだしました。思い出していただけたでしょうか。

「わあああああああああああああ」

「……なんと、愚かな……」

もはや頭を抱えるベーリュ・ヴァン・ソノーザ。もっと愚かなのはご自分でしょうに。

しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。 胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。 けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。 勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに…… 『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。 子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。 逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。 時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。 これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

処理中です...