転生侍女は乙女ゲーム世界を覆す!【『悪役令嬢が行方不明!?』スピンオフ作品!】

mimiaizu

文字の大きさ
28 / 40
本編

28.ヒート ―拳―

しおりを挟む
ワカナから解放された私達はレフトン殿下のご希望通りにソノーザ公爵を探していると、向こうからやってきました。

「「レフトン殿下! どうか御待ちください!」」

夫婦そろって血相を変えている。

「旦那様! 奥様!」

「「「「っ!」」」」

あの後、ワカナがこの夫婦につけ口したのでしょうね。だからこそ、こちらに来たのですか。レフトン殿下は油断できないことで有名ですしね。 

「レフトン殿下! こ、この度、お越しくださりご足労お掛けしました。すぐにおもてなしの準備をしますので、どうかお話願えないでしょうか?」

ソノーザ家の当主ベーリュ・ヴァン・ソノーザは恭しくレフトン殿下に取り繕うとしますが、色々知っている私達は不快な気持ちしか抱けませんよ。エンジ様とライトさんは明らかに怒りを抱いているし。

レフトン殿下はそんな卑しい公爵夫妻に対して不自然な笑顔で向き合います。なんだか不思議と怖いと感じさせる笑顔です。目が笑っていないです。

「ソノーザ公爵。悪いがあんたと俺が話をすることは何もないぜ。サエナリアさんがいないこの屋敷はもう価値などありはしないさ。もちろん、あんたたちも例外じゃねえ」

その通りです。もっと言ってやってください。

「そ、そんな……! そこを何とか、」

「言っておくが俺に取り入ってもどうにもならない。何しろ兄貴が色々とみて聞いたことをそのまま親父、国王陛下に伝えた。俺もこの目でサエナリアさんの部屋を見させてもらって兄貴の言っていたことが真実だと確信させてもらったばかりだ。ここまで言えば分かるだろ? この家はもう終わりだ」

「んなっ!? な、な、な……」

「ど、どうしてこんなことに……」

レフトン殿下は笑顔で残酷な事実を語られる。聞いたソノーザ公爵夫妻は絶望する。

ざまあ! こんな姿を見たかったのです。ふふふ、本当にざまあ見ろ!

「レ、レフトン殿下、どうか私達にご慈悲をくださいませ! この度の娘の教育は妻の責任でありますゆえ私は、私だけは……んん!?」

なおもレフトン殿下に取りすがろうとするベーリュだったが、執事のウオッチさんの姿を捉えると立ち上がって怒りの形相で詰め寄ってきました。

「おい、どういうことだ! 何故我が屋敷にレフトン殿下がいらっしゃったことを言わなかったのだ! 私は何も聞いていないぞ! しかも何故私の断りもなく招いたのだ!?」

「そうよ! ワカナから聞いたわよ! 第二王子殿下と取り巻きどもに侮辱されたのに使用人の貴方が庇わなかったって! どうなってんのよ!」

「「「「…………()」」」」

……あの女、どうやら話を盛って伝えたようですね。可愛い子ぶったつもりなのでしょうか? くだらない真似してくれますこと。

「ワカナお嬢様のことでしたら事実は違います。お嬢様が第二王子レフトン殿下だと理解せずに不敬な態度を貫こうとしたからご注意しただけです」

「ぬ、ぬう、そうか……ワカナのことはこの際どうでもいい……」

「貴方!」

流石はウオッチさん。反論できない正論を的確に丁寧に説明します。ベテラン執事のなせる技ですね。

「では私達に伝えなかったのは、」

「旦那様でしたら、奥様と言い争いに夢中で私の言葉をお聞き下さらなかったではありませんか。第二王子殿下がいらしたと進言したにもかかわらず聞く耳を持ってくださらなかったではありませんか。何度も同じことを申し上げたというのに、気が付かなかったのですか?」

「はっ!? ………そ、それは………」

「そ、そんなこと言われても……」

こ、これは笑いが吹き出しそうになりました。喧嘩している最中だから聞いていませんでした、ってことですよね。まるで子供みたいではないですか。

「お、お前のせいだぞネフーミ! 今後のことを話し合うだけだったのにお前が言い争いに持ち込んだりするからレフトン殿下をお迎えできなかったんだぞ! どうしてくれるんだ!」

「「「はあっ!?」」」

「だ、旦那様……」

「な、何ですって!?」

愚かな旦那様ですね。ご自分の妻に責任をなすりつけようとなさるとは。ワカナに負けないくらい呆れさせてくれますね。

「ふ、ふざけないで頂戴! 言い争う羽目になったのは貴方が私ばかり責めたせいじゃないの! 何勝手なこと言うのよ!」

おや、奥様も負けていませんね。反論してくるとは。

「何だと!? こんな時にも文句を言うのか! お前は黙って頭を下げればいいのだ!」

この二人は王子を前にして何をしてるんでしょうかねえ。面白いですけど。ですがここで喧嘩されても話が進みません。仕方ないですね。

「旦那様、奥様。どうかおやめください。レフトン殿下の御前ですよ」

「「はっ! そうだった!」」

私の言葉は全く心のこもっていない棒読みの言葉なのに、レフトン殿下と聞いて公爵夫妻はハッとして一緒にレフトン殿下に頭を下げる。しかも土下座の姿勢で。

「レフトン殿下! お恥ずかしいところをお見せして申し訳もございません! ですが、どうか我がソノーザ家にご慈悲をくださいませ! さすれば我が家はレフトン殿下に生涯の忠誠を誓います!」

「我が娘サエナリアのことで大変苦心されていることを深くお詫びします! ですが我が家に温情をかけてくださるなら我が娘ワカナをレフトン殿下に差し上げます! どうかご慈悲を!」

「「「………」」」

何ともまあ、情けなくて惨めで卑しく見える姿を見せつけてくれる人たちですねえ。侮蔑の目しか向けるしかありませんよ。『本気で言ってるのか、こいつら』と誰もが思っていますよ。


「……クズ野郎が、頭を上げろ」

「え?」

そして突然、レフトン殿下は頭を上げたベーリュの胸ぐらを掴んで、言葉を吐き捨てる。

「おい、数えろ………」

「は? 何を?」

これは、やっぱり、










「こんなことにしちまったあんたの今までの、全ての罪を数えろっ!」






バキッ!という音がなるほどレフトン殿下は渾身の力を込めてその拳をベーリュの顔面にぶつけました。要するに思いっきり殴りつけたのです。





「ぐはあっ!?」

「きゃーっ!?」

「レ、レフトン……!」

「おいっ!?」

「レフトン殿下……」

「だ、旦那様!」

あらあら……、こうなりましたか。ゲームのシナリオ『レフトンルート』と同じですね。レフトン殿下がソノーザ公爵を断罪すると決めたら、こういうイベントが起こるのでした。

「あ、あ、貴方! 貴方!」

「だ、旦那様!」

殴られた衝撃でベーリュは気絶しました。ざまあ!

それもそのはずですよね。レフトン殿下は並の騎士よりも身体能力が高いから、出世のために事務仕事しかしてこなかったベーリュが殴られれば気絶するしかありません。すぐには起きないでしょう。ざまあ。

「レ、レフトン?」

「レフトンお前……一体何を……!?」

側近の二人の衝撃は大きい。二人の知るレフトン殿下は貴族らしくない口調と行動をしてきたが簡単に暴力に出るようなことは今までなかったのでしょうから。

「言ったろ? ふさわしい挨拶ぐらいしてやるって」

「「っ!」」

「この男だけは一発殴らないと気が済めなかったんだ。サエナリアさんやお前たち三人のことを思うとな……」

レフトン殿下のいう三人? この場にいるライトさんとエンジ様なら分かりますが、もう一人はサエナリアお嬢様のことでしょうか? 

「レフトン……」

「お前……」

エンジ様とライトさんが私を見る。え? もしかして三人目は私?

「……そういうことでしたか」

そう言えばウオッチさんも私の生い立ちについてザックリ話してましたね。

「……そうですね。まあ、ふさわしいとは言えますね」

冷めた目でソノーザ夫婦を見れば、オロオロする女と気を失った愚かな男が目に映ります。我が両親に罪を着せて破滅させ、更に自身の家庭を顧みなかった挙句にこの始末。この後で裁判にかけられるのだと思うと自業自得ですね。

「もうここに用はねえ。皆行こう。後は裁判で決まる」

「そうだね」

「ああ」

「……お疲れ様です。第二王子レフトン殿下」

私達は倒れているソノーザ公爵を振り返ることもなく屋敷から出て行きました。私ももう二度とこの屋敷には戻らないでしょう。サエナリアお嬢様のいない屋敷に、未練はありませんから。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。 胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。 けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。 勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに…… 『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。 子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。 逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。 時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。 これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

処理中です...