ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~

mimiaizu

文字の大きさ
74 / 252
第3章 組織編

残酷な判断

しおりを挟む
 メルガーとトーレンは地下の中央室に向かっていた。

「急ぐぞトーレン! 騒ぎが大きくなっている!」
「はい、会長! それにしても、我が魔法協会でこんなことが起こるなんて……!」


魔法協会・地下中央室。

「どういうことだ! 実験体が逃げ出しただと!?」
「本当なんですか!?」

 メルガーは研究員の一人に食って掛かる。研究員は怯えながらも、分かる範囲で事態を説明する。

「ひいっ! は、はい、しゅ、収容施設の扉のほぼ全てのロックが、何故か、解除されたようなのです……。『首輪』のほうも間違いなく……。それで、好機と見た、実験体が脱走したものかと……」
「何ということだ!」
「ひいい!」

 メルガーは顔を真っ赤にして怒る。実験体の中には希少な魔法持ちも多いため、『首輪』という魔法を抑える魔道具も付けていたがそれも外れていたというのだ。だが、一旦落ち着いて、少し考えたメルガーは研究員に指示を出す。

「……やむを得ん。収容所付近を全て封鎖しろ。その後、我々が地下から出た後で地下施設自体を封鎖する!」
「そ、そんな!? 一部の構成員や研究員を見捨てるのですか!?」
「会長……いくら何でもそれは……」

 指示を受けた研究員の顔が蒼白になった。トーレンも絶句している。地下施設の封鎖をすれば確かに脱走者を外に出すことはないが、地下に残る構成員たちも閉じ込められてしまう。彼らに危険が及ぶのは間違いない。何故なら……。

「収容施設には、魔物もいるんですよ!? そいつらの首輪も外れていたとしたら……」
「多くのものが被害に遭う。分かっていることだ。魔物の首輪も外れているだろうからな」
「「っ!」」

 収容施設にいるのは人間だけではない。魔法協会が過去に捕獲した魔物たちがいるのだ。彼らも実験体として利用されていたが、今逃げ出す可能性は十分にある。しかし、会長のメルガーは……。

「おそらく、多くの犠牲者を出すことは分かっている。貴重な人材の損失になるが、そうしなければ我々の秘密が外に漏れてしまうだろう。脱走者が外に出れば、魔法協会の実態が国民に知れ渡り、ましてや魔物が外に出るなど不祥事どころではないのだ」
「…………」
「会長……」

 メルガーの言っていることは事実だ。脱走者や魔物が外に出れば、国民の魔法協会に対する不信感が強くなる。下手をすれば暴動になりかねない。魔法協会は場所なのだ。

「そもそも、この事態は外部からの襲撃の可能性が非常に高い。現在進行形で微弱な魔力を流しているのだからな。地上でも何かが起こっているに違いあるまい。首謀者も侵入してきた可能性もあるしな。それならば、ここの対処は後に回して、首謀者を捕らえるべきだ」
「会長のおっしゃる通りです。賢明なご判断です」
「……分かり、ました。各、研究員に、伝えます……」

 残酷なことを落ち着いた口調で話すメルガーに、研究員は顔を蒼白したまま、指示に従った。トーレンはメルガーを褒め称えるだけだった。


数時間後。

 トーレンとメルガーが、地下から出た後で、地下への扉は封鎖されてしまった。

「そ、そんな……! わ、私たちまで……!? 会長~!」

 指示を受けた研究員も中にいる間に。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。 ※2026年半ば過ぎ完結予定→七月に完結(決定)

処理中です...