ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~

mimiaizu

文字の大きさ
115 / 252
第4章 因縁編

VSトリニティウルフ(後編)

しおりを挟む
5分後。

「ウォルル~……」
 
 トリニティウルフは、3匹の獲物を覆う壁が薄くなっていくのに気づいた。もうすぐ、また食事にありつける、腹が膨れる。そう考えて、獲物をしとめる構えを……しなかった。

 トリニティウルフは、警戒しているのだ。人間という生き物を。かつて、己を狭い空間に閉じ込めた生き物だ。大半はエサとしか見ないが、中には敵として見るべきものも少なからず存在することは分かっているのだ。

 下手に警戒される構えでいるよりも、視線を外さないことのほうが重要だ。それが最善の策であることは、さっき食べたものの味が証明しているのだから。

 おそらく、結界が消えたと同時に何か仕掛けてくるに違いない。それが何かは分からないが、逃げられてしまうか逆転されてしまう可能性もある。ならば、それに対処する必要がある。そう考えたトリニティウルフの行動は……




「……ちっ、そう来たか」

 『堕落の壁』が消える頃、トリニティウルフが行動を起こした。結界の周りをグルグル回りだしたのだ。しかも、結界が薄くなっていくのに合わせて動きが速くなってきている。

(結界が消えたと同時にこっちが仕掛けてくることを予測してるってわけか。その対策がこれか、面倒なことしてくれる)

「怖いわね、あの魔物……」
「相当知能が高い奴に出会っちまったな」
「だが、さっき言った作戦で問題はない。ミーラ、奴のことで分かったことはもうないな?」

 結界の中にいる間、3人は作戦を立てる前に、ミーラの【解析魔法】でトリニティウルフのことを調べていた。
 
「『能力鑑定』で分かったことはさっき言った通りよ。狼と蜘蛛と鰐を合わせた魔物で、狼の体に鰐の鱗と蜘蛛の目、その他に単独行動で泳ぐのも得意で卵を……」
「つまり、変わりはないってことか」
「とんでもない魔物だぞ。ここで倒さないと俺たちの命はない。本当にうまくやれるのか?」
「ああ。魔封書の中には、この状況に都合のいい魔法が入ってたしな」
「そうか。だけどよ、そいつを使うのは……」

 ローグの手には魔封書があった。魔封書にはローグとミーラの故郷の村の人々の魔法が入っている。ついでに魔法協会トップの二人の魔法も最近入ったばかりだ。この魔封書を使うのだが、それには通常の倍ほどの魔力を消費する必要がある。ルドガーが懸念しているのはそういうことなのだが、ローグは使うと決めている。

「確かに魔力を結構消費するが、そうでもしないと3人とも死んでしまう。それに魔封書は強力な切り札場簿は分かるだろ?」
「……分かった。お前さんの作戦にもう異論はない。ここにはもう俺達しかいないしな」

 ルドガーは遂に腹を括った。ローグの作戦に全てを掛けたのだ。

 一方、「ここにはもう俺達しかいない」というのは、魔法協会に集まっていた民衆のほとんどが魔物が出てきた時点で一人残らず逃げ出したからだ。縛られていた魔法協会トップの二人に関しては、ローグが結界を張っている間にトリニティウルフの食事となってしまった。……その様子を見てしまったミーラが、あまりのおぞましい光景のあまり目を背け吐いてしまったのは割愛する。

「もうそろそろ結界が消えるぞ! 二人とも準備を!」
「分かったわ!」
「おう!」

 ミーラは魔力を手に集中し、ルドガーは剣を構え、ローグは魔封書を手に持ったまま立ち上がる。トリニティウルフはそれを見て、更に動きを速める。


 そして、その時が来た。結界が消えた。


「ウウッ!」

ダンッ!

「「来た!」」
「今だ!」

 結界が消えたと同時に、結界を回っていたトリニティウルフが3人に迫ってくる。後ろからだ。ミーラとルドガーは同時に目をつむり、ローグは魔封書の魔法を発動する。

「【光魔法】『閃光弾』!」

ピカァッ!

「ウォオオッ!?」
「「…………!」」

 ローグが発動した魔法は、強烈な光を操る【光魔法】。その中で目くらましに利用する『閃光弾』を使用することで、トリニティウルフの目を一時的につぶしたのだ。360度全方向に光がいくためトリニティウルフがどこから襲ってきても目を潰すことができたのだ。二人が目をつむったのもこのためだ。

「ミーラ! ルドガーさん!」
「「っ!」」

 二人は目を潰されてもがき苦しむトリニティウルフに近づいていった。

「【解析魔法】『魔力侵入』!」
「ウオッ!?」

 ミーラは自分の魔力をトリニティウルフに流し込んだ。【解析魔法】『魔力侵入』は魔力を流し込んで、その魔力を通して動きを抑制することができる。ただ、ミーラが使うとなれば長くは抑えられないだろうが、ここでルドガーが魔法ではなく剣を使う。

「はあっ!」

ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ! 

「ウォオオオオオン!?」

 ルドガーはこの隙に剣を使ってトリニティウルフの足の裏を切り刻む。もがいてるときに倒れこんだために足の裏がむき出しになったのだ。鱗に覆われていない足の裏が。

(やっぱり、肉球はついていたな。狼のような野山や草原を速く掛ける動物には肉球があったほうがいい。狩りの成功率を上げる意味でも柔らかい肉球は必須だろうからな)

 トリニティウルフは、足の裏を切り刻まれたせいでうまく立つことができなくなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

処理中です...