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第4章 因縁編
VSトリニティウルフ(後編)
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5分後。
「ウォルル~……」
トリニティウルフは、3匹の獲物を覆う壁が薄くなっていくのに気づいた。もうすぐ、また食事にありつける、腹が膨れる。そう考えて、獲物をしとめる構えを……しなかった。
トリニティウルフは、警戒しているのだ。人間という生き物を。かつて、己を狭い空間に閉じ込めた生き物だ。大半はエサとしか見ないが、中には敵として見るべきものも少なからず存在することは分かっているのだ。
下手に警戒される構えでいるよりも、視線を外さないことのほうが重要だ。それが最善の策であることは、さっき食べたものの味が証明しているのだから。
おそらく、結界が消えたと同時に何か仕掛けてくるに違いない。それが何かは分からないが、逃げられてしまうか逆転されてしまう可能性もある。ならば、それに対処する必要がある。そう考えたトリニティウルフの行動は……
「……ちっ、そう来たか」
『堕落の壁』が消える頃、トリニティウルフが行動を起こした。結界の周りをグルグル回りだしたのだ。しかも、結界が薄くなっていくのに合わせて動きが速くなってきている。
(結界が消えたと同時にこっちが仕掛けてくることを予測してるってわけか。その対策がこれか、面倒なことしてくれる)
「怖いわね、あの魔物……」
「相当知能が高い奴に出会っちまったな」
「だが、さっき言った作戦で問題はない。ミーラ、奴のことで分かったことはもうないな?」
結界の中にいる間、3人は作戦を立てる前に、ミーラの【解析魔法】でトリニティウルフのことを調べていた。
「『能力鑑定』で分かったことはさっき言った通りよ。狼と蜘蛛と鰐を合わせた魔物で、狼の体に鰐の鱗と蜘蛛の目、その他に単独行動で泳ぐのも得意で卵を……」
「つまり、変わりはないってことか」
「とんでもない魔物だぞ。ここで倒さないと俺たちの命はない。本当にうまくやれるのか?」
「ああ。魔封書の中には、この状況に都合のいい魔法が入ってたしな」
「そうか。だけどよ、そいつを使うのは……」
ローグの手には魔封書があった。魔封書にはローグとミーラの故郷の村の人々の魔法が入っている。ついでに魔法協会トップの二人の魔法も最近入ったばかりだ。この魔封書を使うのだが、それには通常の倍ほどの魔力を消費する必要がある。ルドガーが懸念しているのはそういうことなのだが、ローグは使うと決めている。
「確かに魔力を結構消費するが、そうでもしないと3人とも死んでしまう。それに魔封書は強力な切り札場簿は分かるだろ?」
「……分かった。お前さんの作戦にもう異論はない。ここにはもう俺達しかいないしな」
ルドガーは遂に腹を括った。ローグの作戦に全てを掛けたのだ。
一方、「ここにはもう俺達しかいない」というのは、魔法協会に集まっていた民衆のほとんどが魔物が出てきた時点で一人残らず逃げ出したからだ。縛られていた魔法協会トップの二人に関しては、ローグが結界を張っている間にトリニティウルフの食事となってしまった。……その様子を見てしまったミーラが、あまりのおぞましい光景のあまり目を背け吐いてしまったのは割愛する。
「もうそろそろ結界が消えるぞ! 二人とも準備を!」
「分かったわ!」
「おう!」
ミーラは魔力を手に集中し、ルドガーは剣を構え、ローグは魔封書を手に持ったまま立ち上がる。トリニティウルフはそれを見て、更に動きを速める。
そして、その時が来た。結界が消えた。
「ウウッ!」
ダンッ!
「「来た!」」
「今だ!」
結界が消えたと同時に、結界を回っていたトリニティウルフが3人に迫ってくる。後ろからだ。ミーラとルドガーは同時に目をつむり、ローグは魔封書の魔法を発動する。
「【光魔法】『閃光弾』!」
ピカァッ!
「ウォオオッ!?」
「「…………!」」
ローグが発動した魔法は、強烈な光を操る【光魔法】。その中で目くらましに利用する『閃光弾』を使用することで、トリニティウルフの目を一時的につぶしたのだ。360度全方向に光がいくためトリニティウルフがどこから襲ってきても目を潰すことができたのだ。二人が目をつむったのもこのためだ。
「ミーラ! ルドガーさん!」
「「っ!」」
二人は目を潰されてもがき苦しむトリニティウルフに近づいていった。
「【解析魔法】『魔力侵入』!」
「ウオッ!?」
ミーラは自分の魔力をトリニティウルフに流し込んだ。【解析魔法】『魔力侵入』は魔力を流し込んで、その魔力を通して動きを抑制することができる。ただ、ミーラが使うとなれば長くは抑えられないだろうが、ここでルドガーが魔法ではなく剣を使う。
「はあっ!」
ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ!
「ウォオオオオオン!?」
ルドガーはこの隙に剣を使ってトリニティウルフの足の裏を切り刻む。もがいてるときに倒れこんだために足の裏がむき出しになったのだ。鱗に覆われていない足の裏が。
(やっぱり、肉球はついていたな。狼のような野山や草原を速く掛ける動物には肉球があったほうがいい。狩りの成功率を上げる意味でも柔らかい肉球は必須だろうからな)
トリニティウルフは、足の裏を切り刻まれたせいでうまく立つことができなくなった。
「ウォルル~……」
トリニティウルフは、3匹の獲物を覆う壁が薄くなっていくのに気づいた。もうすぐ、また食事にありつける、腹が膨れる。そう考えて、獲物をしとめる構えを……しなかった。
トリニティウルフは、警戒しているのだ。人間という生き物を。かつて、己を狭い空間に閉じ込めた生き物だ。大半はエサとしか見ないが、中には敵として見るべきものも少なからず存在することは分かっているのだ。
下手に警戒される構えでいるよりも、視線を外さないことのほうが重要だ。それが最善の策であることは、さっき食べたものの味が証明しているのだから。
おそらく、結界が消えたと同時に何か仕掛けてくるに違いない。それが何かは分からないが、逃げられてしまうか逆転されてしまう可能性もある。ならば、それに対処する必要がある。そう考えたトリニティウルフの行動は……
「……ちっ、そう来たか」
『堕落の壁』が消える頃、トリニティウルフが行動を起こした。結界の周りをグルグル回りだしたのだ。しかも、結界が薄くなっていくのに合わせて動きが速くなってきている。
(結界が消えたと同時にこっちが仕掛けてくることを予測してるってわけか。その対策がこれか、面倒なことしてくれる)
「怖いわね、あの魔物……」
「相当知能が高い奴に出会っちまったな」
「だが、さっき言った作戦で問題はない。ミーラ、奴のことで分かったことはもうないな?」
結界の中にいる間、3人は作戦を立てる前に、ミーラの【解析魔法】でトリニティウルフのことを調べていた。
「『能力鑑定』で分かったことはさっき言った通りよ。狼と蜘蛛と鰐を合わせた魔物で、狼の体に鰐の鱗と蜘蛛の目、その他に単独行動で泳ぐのも得意で卵を……」
「つまり、変わりはないってことか」
「とんでもない魔物だぞ。ここで倒さないと俺たちの命はない。本当にうまくやれるのか?」
「ああ。魔封書の中には、この状況に都合のいい魔法が入ってたしな」
「そうか。だけどよ、そいつを使うのは……」
ローグの手には魔封書があった。魔封書にはローグとミーラの故郷の村の人々の魔法が入っている。ついでに魔法協会トップの二人の魔法も最近入ったばかりだ。この魔封書を使うのだが、それには通常の倍ほどの魔力を消費する必要がある。ルドガーが懸念しているのはそういうことなのだが、ローグは使うと決めている。
「確かに魔力を結構消費するが、そうでもしないと3人とも死んでしまう。それに魔封書は強力な切り札場簿は分かるだろ?」
「……分かった。お前さんの作戦にもう異論はない。ここにはもう俺達しかいないしな」
ルドガーは遂に腹を括った。ローグの作戦に全てを掛けたのだ。
一方、「ここにはもう俺達しかいない」というのは、魔法協会に集まっていた民衆のほとんどが魔物が出てきた時点で一人残らず逃げ出したからだ。縛られていた魔法協会トップの二人に関しては、ローグが結界を張っている間にトリニティウルフの食事となってしまった。……その様子を見てしまったミーラが、あまりのおぞましい光景のあまり目を背け吐いてしまったのは割愛する。
「もうそろそろ結界が消えるぞ! 二人とも準備を!」
「分かったわ!」
「おう!」
ミーラは魔力を手に集中し、ルドガーは剣を構え、ローグは魔封書を手に持ったまま立ち上がる。トリニティウルフはそれを見て、更に動きを速める。
そして、その時が来た。結界が消えた。
「ウウッ!」
ダンッ!
「「来た!」」
「今だ!」
結界が消えたと同時に、結界を回っていたトリニティウルフが3人に迫ってくる。後ろからだ。ミーラとルドガーは同時に目をつむり、ローグは魔封書の魔法を発動する。
「【光魔法】『閃光弾』!」
ピカァッ!
「ウォオオッ!?」
「「…………!」」
ローグが発動した魔法は、強烈な光を操る【光魔法】。その中で目くらましに利用する『閃光弾』を使用することで、トリニティウルフの目を一時的につぶしたのだ。360度全方向に光がいくためトリニティウルフがどこから襲ってきても目を潰すことができたのだ。二人が目をつむったのもこのためだ。
「ミーラ! ルドガーさん!」
「「っ!」」
二人は目を潰されてもがき苦しむトリニティウルフに近づいていった。
「【解析魔法】『魔力侵入』!」
「ウオッ!?」
ミーラは自分の魔力をトリニティウルフに流し込んだ。【解析魔法】『魔力侵入』は魔力を流し込んで、その魔力を通して動きを抑制することができる。ただ、ミーラが使うとなれば長くは抑えられないだろうが、ここでルドガーが魔法ではなく剣を使う。
「はあっ!」
ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ!
「ウォオオオオオン!?」
ルドガーはこの隙に剣を使ってトリニティウルフの足の裏を切り刻む。もがいてるときに倒れこんだために足の裏がむき出しになったのだ。鱗に覆われていない足の裏が。
(やっぱり、肉球はついていたな。狼のような野山や草原を速く掛ける動物には肉球があったほうがいい。狩りの成功率を上げる意味でも柔らかい肉球は必須だろうからな)
トリニティウルフは、足の裏を切り刻まれたせいでうまく立つことができなくなった。
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