214 / 252
第6章 一週間編
四日目1
しおりを挟む
北の塔。
牢屋にいるアゼルは、突然入ってきた人物に目を丸くして驚いた。
「父上!? 父上じゃないか! 病はもう大丈夫なのか!?」
「ああ、おかげ様でな」
やってきたのは、アゼルの父親である皇帝・キング・ヒルディアその人なのだ。アゼル自身が毒を盛って病にかけてしまったはずであり、回復したと聞いた覚えはない。
「一体、いつ回復……、いや、そんなことはいいか。何しに来たのです?」
「そんなことは、か。ははは! お前が病にかけた父親が病を治してここまで足を運んだのだぞ。気にならないのか?」
皇帝は意地の悪いことを言って笑うが、その目は笑ってはいない。雰囲気だけで静かな怒りを感じさせているぐらいだ。今までのアゼルならそれだけで怖気づいていたのだが、牢屋の中のアゼルは落ち着いている。
「……父上の病はローグとかいう男のおかげで治ったのでしょう。そいつの魔法か何かで治ったなら納得できます。わざわざ僕のもとにやってきたのはリオルの話を聞いたからでしょう」
いくら素行の悪いアゼルでも、重い病気に罹った父がすぐに回復した理由くらい察しがついていた。アゼルは自分に取り付いた寄生生物を取り除いた男が魔法持ちで相当な力を持つものであるくらい分かっているのだ。腐っても帝国の皇子、それくらいの頭はある。
「リオルの懇願されたんでしょうけど、大罪人となった僕の命を助けるなんて問題だ。だから父上ご自身の眼で僕の様子を見て判断する。そんな所でしょう、違いますか?」
「ふふっ、大体その通りだが、もう一つ理由があるぞ」
「?」
「一人の父親としたお前のことを心配もしておるのだ」
「…………」
皇帝キング・ヒルディアとて一人の父親。息子がどんなに愚か者でも、親としての愛情は簡単に捨てられるわけではないのだ。皇帝もまた、子供の行いは親の責任でもあるという自覚はある。だから今の我が子をその目で確かめねばならなかった。皇帝として裁くためにも。
「……お前がどれだけのどれほどの罪を犯したのかはリオルたちから聞いている。そのことについて何か言うことはあるか?」
皇帝は試すように問いかける。それに対してアゼルは、怖気づくことも卑屈になることも、ましてや、父親にすり寄ることもしなかった。自分を鋭く睨む父親の眼をまっすぐ見て、自分の思いを告げるだけだった。
「……僕が、私が愚かでした。リオルやサーラを妬み、周りを憎み、クロズクに弱みを利用され、多くの人々に迷惑を掛けました。償えるならどのような罰でも受けます。必要ならこの命も惜しくはありません」
「覚悟したというのか? 自暴自棄になったわけではないのか?」
「少し前の私ならそうだったでしょう。ですが、リオルたちに命懸けで助けられて目が覚めました。この命を償いのために使いたいのです」
皇帝は、アゼルが変わったことを確信した。今、我が子が望まれる成長をした姿を見れたのだ。その事実が今は皮肉だった。
「……そうか」
息子は大罪を犯してしまった後なのだから。
牢屋にいるアゼルは、突然入ってきた人物に目を丸くして驚いた。
「父上!? 父上じゃないか! 病はもう大丈夫なのか!?」
「ああ、おかげ様でな」
やってきたのは、アゼルの父親である皇帝・キング・ヒルディアその人なのだ。アゼル自身が毒を盛って病にかけてしまったはずであり、回復したと聞いた覚えはない。
「一体、いつ回復……、いや、そんなことはいいか。何しに来たのです?」
「そんなことは、か。ははは! お前が病にかけた父親が病を治してここまで足を運んだのだぞ。気にならないのか?」
皇帝は意地の悪いことを言って笑うが、その目は笑ってはいない。雰囲気だけで静かな怒りを感じさせているぐらいだ。今までのアゼルならそれだけで怖気づいていたのだが、牢屋の中のアゼルは落ち着いている。
「……父上の病はローグとかいう男のおかげで治ったのでしょう。そいつの魔法か何かで治ったなら納得できます。わざわざ僕のもとにやってきたのはリオルの話を聞いたからでしょう」
いくら素行の悪いアゼルでも、重い病気に罹った父がすぐに回復した理由くらい察しがついていた。アゼルは自分に取り付いた寄生生物を取り除いた男が魔法持ちで相当な力を持つものであるくらい分かっているのだ。腐っても帝国の皇子、それくらいの頭はある。
「リオルの懇願されたんでしょうけど、大罪人となった僕の命を助けるなんて問題だ。だから父上ご自身の眼で僕の様子を見て判断する。そんな所でしょう、違いますか?」
「ふふっ、大体その通りだが、もう一つ理由があるぞ」
「?」
「一人の父親としたお前のことを心配もしておるのだ」
「…………」
皇帝キング・ヒルディアとて一人の父親。息子がどんなに愚か者でも、親としての愛情は簡単に捨てられるわけではないのだ。皇帝もまた、子供の行いは親の責任でもあるという自覚はある。だから今の我が子をその目で確かめねばならなかった。皇帝として裁くためにも。
「……お前がどれだけのどれほどの罪を犯したのかはリオルたちから聞いている。そのことについて何か言うことはあるか?」
皇帝は試すように問いかける。それに対してアゼルは、怖気づくことも卑屈になることも、ましてや、父親にすり寄ることもしなかった。自分を鋭く睨む父親の眼をまっすぐ見て、自分の思いを告げるだけだった。
「……僕が、私が愚かでした。リオルやサーラを妬み、周りを憎み、クロズクに弱みを利用され、多くの人々に迷惑を掛けました。償えるならどのような罰でも受けます。必要ならこの命も惜しくはありません」
「覚悟したというのか? 自暴自棄になったわけではないのか?」
「少し前の私ならそうだったでしょう。ですが、リオルたちに命懸けで助けられて目が覚めました。この命を償いのために使いたいのです」
皇帝は、アゼルが変わったことを確信した。今、我が子が望まれる成長をした姿を見れたのだ。その事実が今は皮肉だった。
「……そうか」
息子は大罪を犯してしまった後なのだから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜
リョウ
ファンタジー
僕は十年程闘病の末、あの世に。
そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?
幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。
※画像はAI作成しました。
※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。
※2026年半ば過ぎ完結予定→七月に完結(決定)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる