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最終章
エピローグ2
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◇
――一か月後、王国は解体された。領地・財産などは帝国と周辺諸国が協議の末、近い国で分割して分けられることになった。それに伴い領地に残っていた民もまた同じように他国に縋る。
ただ、元王国の民は風評被害や迫害を受けることになるのは避けられない。魔法の力を振るって傲慢な態度を示してきた王国の出自を考えれば仕方がないことではあった。最悪、奴隷のように扱われるか殺されてしまうかもしれないが、こんな世界であるから皆殺しにされるよりかはマシと思うしかないのかもしれない。
王国の領地分割、その中でも元王都については結構議論した。王都ならば人が集まって財産もたくさんあるから魅力的だという反面、倒壊した王城の存在を鑑みると非常に扱いに困るとして、どの国が管理するか意見が割れた。結局は、王国を滅ぼした帝国が元王都を管理することに決まったが、倒壊した王城の処理なども帝国に任されることになったため、皇帝はそれだけは不満だった。
ただ、元王都が帝国の管轄になり、王城の処理も担うという話を聞いたローグは都合がいいと思った。
「王城には、魔法の知識に関する『何か』が残っているかもしれない。帝国だけが処理に携わるなら好都合だ」
「ローグ、君も王城の処理に来てくれるのか? 人手が足りないからそれはありがたいが……いいのか?」
「問題ないさ。俺は魔法に関するエキスパートだから万が一にも王国の残党かなんかがいたら頼もしいだろう?」
「そうか、なら頼んでもいいか? 正直、助かるんだ」
「ああ、任せろ」
リオルの許可を得ることができたローグはこれで堂々と王城を調べつくせる立場になれた。復讐の他に、この世界のことについて知りたいことが山のようにあるローグにとって、国家機密や魔法の知識が悪されているであろう王城は崩壊していても魅力的な場所に変わりはない。
「ああ、楽しみだな」
◇
――半年後、帝国の準男爵家の屋敷から貴族風の国交のローグが皇帝に命じられた任務のために、かつて王国と呼ばれた国の跡地に向かうことになった。
「遂にこの時が来た……!」
ローグは心が高ぶっていた。任務の目的は、王城の処分の時に発見された地下に続く迷宮の調査だからだ。あの時は、王城の処分に大分手間がかかったためにすぐ調査とはいかなかったのだ。それにローグも含め王城の調査や処分に携わった全員が体力的にきつかったのだ。迷宮は厳重に封鎖した後で一度戻って、改めて調査隊を編成ということで、迷宮の調査は後回しとされた。
そして、今日やっと迷宮の調査隊が出向くことになった。もちろんローグもその一人。
「これでやっと、俺の目的に一歩近づくわけか。くくく、楽しみで仕方がないよ」
口角を釣り上げて笑うその姿は、人の味方によっては無邪気にも邪悪にも見える。だが、どんな風に見えてもローグのことを変わらず思い続ける女性がローグのすぐ後ろにいた。
「ローグ、もう行くのね」
「! ミーラ……」
それはミーラ・リラだった。いや、今は名前が変わってミーラ・ナイトと名乗っている。ローグと帝国で正式に籍を入れたのだ。
「ああ、皇帝陛下の命令を無下にできないし、それ以上に俺が知りたいというのもあるんだ。ほら、俺って好奇心旺盛だし。……ああ、心配するな。戦争でも無事に帰ってきただろう?」
「ふふふ、そうね。でもなるべき早く帰ってきてほしいな。私もこの子も寂しいじゃない」
ミーラの腕の中には一人の赤子が抱かれていた。赤子はローグとミーラの子供だ。今から一週間前にミーラが産んだ男の子だ。
「……そうだな。この子のためにも任務が終わり次第、すぐ帰ってくるよ」
「そうしてよね」
ローグは愛おしそうに赤子の頬をなでる。普段見せないような優しそうな顔で我が子を見つめる。そして、ミーラと見つめ合う。
「……じゃあ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
互いに笑顔でそう言った。ローグはこのまま任務に出向き、ミーラは屋敷で彼を待つ。
「……ふっ、まさか俺がこんな……いや、もういいか。目的に支障があるわけじゃないしな」
ローグは今の時代で、この帝国で、家庭を持った。前世で妻子を持たなかったため、この時代でもそうならないだろうと思っていたのだが、そうはならなかったのだ。かつては憎んだ女と常に行動を共にした結果、憎しみが消えて、まったく逆の思いを抱くなど、予想などしなかっただろう。
しかし、ローグはもうそれでもいいと思っていた。生まれてきた我が子をみてから、それが核心に変わった。今のローグにはもう『憎しみ』はもうない。
「くくく、これからそうなるんだろうな。ああ、楽しみだな。生まれ変わってよかったよ!」
ローグは『憎しみ』という過去をもう振り返ることは無い。これからは未来に向けて歩んでいく。興味本位な個人的な目的と、愛する家族のために未来へ進んでいく。
「……まっ、結局は自分のために生きるってことだな」
終わり
=====あとがき=====
私の最初の作品。これで終えることができました。他の作品もいい感じに終わらせていきたいと思っています。
あまり良い評価を受けませんでしたが、これからも地道にファンタジー系に挑戦しようとも思っています。
新作の『七人の勇者が世界を変えるまでの長い道のり ~勇者が魔王を倒して人魔大戦を終わらせて平和をもたらす物語~』を今日から完結まで投稿するので、どうかこちらも御覧頂いてほしいと思っています。
――一か月後、王国は解体された。領地・財産などは帝国と周辺諸国が協議の末、近い国で分割して分けられることになった。それに伴い領地に残っていた民もまた同じように他国に縋る。
ただ、元王国の民は風評被害や迫害を受けることになるのは避けられない。魔法の力を振るって傲慢な態度を示してきた王国の出自を考えれば仕方がないことではあった。最悪、奴隷のように扱われるか殺されてしまうかもしれないが、こんな世界であるから皆殺しにされるよりかはマシと思うしかないのかもしれない。
王国の領地分割、その中でも元王都については結構議論した。王都ならば人が集まって財産もたくさんあるから魅力的だという反面、倒壊した王城の存在を鑑みると非常に扱いに困るとして、どの国が管理するか意見が割れた。結局は、王国を滅ぼした帝国が元王都を管理することに決まったが、倒壊した王城の処理なども帝国に任されることになったため、皇帝はそれだけは不満だった。
ただ、元王都が帝国の管轄になり、王城の処理も担うという話を聞いたローグは都合がいいと思った。
「王城には、魔法の知識に関する『何か』が残っているかもしれない。帝国だけが処理に携わるなら好都合だ」
「ローグ、君も王城の処理に来てくれるのか? 人手が足りないからそれはありがたいが……いいのか?」
「問題ないさ。俺は魔法に関するエキスパートだから万が一にも王国の残党かなんかがいたら頼もしいだろう?」
「そうか、なら頼んでもいいか? 正直、助かるんだ」
「ああ、任せろ」
リオルの許可を得ることができたローグはこれで堂々と王城を調べつくせる立場になれた。復讐の他に、この世界のことについて知りたいことが山のようにあるローグにとって、国家機密や魔法の知識が悪されているであろう王城は崩壊していても魅力的な場所に変わりはない。
「ああ、楽しみだな」
◇
――半年後、帝国の準男爵家の屋敷から貴族風の国交のローグが皇帝に命じられた任務のために、かつて王国と呼ばれた国の跡地に向かうことになった。
「遂にこの時が来た……!」
ローグは心が高ぶっていた。任務の目的は、王城の処分の時に発見された地下に続く迷宮の調査だからだ。あの時は、王城の処分に大分手間がかかったためにすぐ調査とはいかなかったのだ。それにローグも含め王城の調査や処分に携わった全員が体力的にきつかったのだ。迷宮は厳重に封鎖した後で一度戻って、改めて調査隊を編成ということで、迷宮の調査は後回しとされた。
そして、今日やっと迷宮の調査隊が出向くことになった。もちろんローグもその一人。
「これでやっと、俺の目的に一歩近づくわけか。くくく、楽しみで仕方がないよ」
口角を釣り上げて笑うその姿は、人の味方によっては無邪気にも邪悪にも見える。だが、どんな風に見えてもローグのことを変わらず思い続ける女性がローグのすぐ後ろにいた。
「ローグ、もう行くのね」
「! ミーラ……」
それはミーラ・リラだった。いや、今は名前が変わってミーラ・ナイトと名乗っている。ローグと帝国で正式に籍を入れたのだ。
「ああ、皇帝陛下の命令を無下にできないし、それ以上に俺が知りたいというのもあるんだ。ほら、俺って好奇心旺盛だし。……ああ、心配するな。戦争でも無事に帰ってきただろう?」
「ふふふ、そうね。でもなるべき早く帰ってきてほしいな。私もこの子も寂しいじゃない」
ミーラの腕の中には一人の赤子が抱かれていた。赤子はローグとミーラの子供だ。今から一週間前にミーラが産んだ男の子だ。
「……そうだな。この子のためにも任務が終わり次第、すぐ帰ってくるよ」
「そうしてよね」
ローグは愛おしそうに赤子の頬をなでる。普段見せないような優しそうな顔で我が子を見つめる。そして、ミーラと見つめ合う。
「……じゃあ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
互いに笑顔でそう言った。ローグはこのまま任務に出向き、ミーラは屋敷で彼を待つ。
「……ふっ、まさか俺がこんな……いや、もういいか。目的に支障があるわけじゃないしな」
ローグは今の時代で、この帝国で、家庭を持った。前世で妻子を持たなかったため、この時代でもそうならないだろうと思っていたのだが、そうはならなかったのだ。かつては憎んだ女と常に行動を共にした結果、憎しみが消えて、まったく逆の思いを抱くなど、予想などしなかっただろう。
しかし、ローグはもうそれでもいいと思っていた。生まれてきた我が子をみてから、それが核心に変わった。今のローグにはもう『憎しみ』はもうない。
「くくく、これからそうなるんだろうな。ああ、楽しみだな。生まれ変わってよかったよ!」
ローグは『憎しみ』という過去をもう振り返ることは無い。これからは未来に向けて歩んでいく。興味本位な個人的な目的と、愛する家族のために未来へ進んでいく。
「……まっ、結局は自分のために生きるってことだな」
終わり
=====あとがき=====
私の最初の作品。これで終えることができました。他の作品もいい感じに終わらせていきたいと思っています。
あまり良い評価を受けませんでしたが、これからも地道にファンタジー系に挑戦しようとも思っています。
新作の『七人の勇者が世界を変えるまでの長い道のり ~勇者が魔王を倒して人魔大戦を終わらせて平和をもたらす物語~』を今日から完結まで投稿するので、どうかこちらも御覧頂いてほしいと思っています。
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