魔女とアニキ! ~ブラックサイド~

mimiaizu

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序章 出会い編

第3話 魔女の救出/少年の決意

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 私はもうすでに、ゼクトに託すことに決めていた。私の解放を、運命からの解放を。……ゼクトのような男の子にこんなことを頼むのは悪い気がするけどね……。

「ミエダ。お前の望みは封印を解くことだな」
「そうよ、もしくは……」
「もしくは?」
「私を殺すことよ」
「は? 殺す? ころ……なっ何ー!?」

 私の言葉にゼクトは叫ぶほど驚いた。ゼクトからしたら予想外だったでしょうね。でもこれは仕方がないことだ。何故なら……。

「殺すだって!? 何で死にたがるんだよ!?」
「封印が解けると思うの? 当時の魔族の最高レベルの封印よ。人間が解くのは無理よ」
「そっそれは……」
「嘘感知魔法なんて高度な魔法を使えるみたいだけど、ゼクトは人間でしょ? 気持ちは嬉しいけど封印を解くのは難しいわ」
「それじゃあ、ミエダがこの封印のことを詳しく教えてくれよ! 俺はミエダの指示に従って封印を解いてやるから!」
「この封印は私の知る限り魔界で最高レベルの封印魔法なの。私が魔法を使えても解くのは難しい。私も魔法の勉強をしてきたからね」
「!?……くっううう……」

 ゼクトが私を救うには、私を殺すしか手段がない。それを知ったゼクトが悔しがる。見ず知らずの女の子のために涙を流し、助けたいと思ってくれるなんて、心優しい男の子のようだ。人生の最後にこんな子に出会えるなんて……今更遅いわ。

「ゼクト」
「!!」
「私を見つけてくれてありがとう。話を聞いてくれてありがとう」
「何を言い出すんだ!?」
「死ぬ前にお礼を言いたいの。私はずっと一人で退屈だったから。誰も私を見てくれなかったから」
「!!」
「ゼクトは私を見てくれたわ。本当にありがとう」
「!!」

 私は死ぬ前に感謝の言葉を告げる。私を見つけだし話を聞いてくれたゼクトには感謝しかない。ゼクトが悔しくて苦しんでいるけど、私を殺してもらうしかない。命を奪う行為を要求するなんてひどい話なのは分かる。本当に申し訳なく思うけど、そうすることでしか私は救われない、運命から逃れられないのだ。

「ふざけんな! 俺はそんな理不尽を認めない!」
「ゼクト?」
「ミエダ! これが魔族の封印魔法なら、俺の中にある魔族の魔法でなら解くんじゃなくて壊せるかもしれない!」
「ゼクト!? 何を言ってるのよ!? 魔族の魔法で壊す!? 何馬鹿なこと言ってるのよ!?」
「そのままの意味だ! やるぞミエダ! お前には俺の話も聞いてもらいたいんでな!」
「何をするつもっ!? こっこの魔力は!?」
「はああああああああああああ!! 剛力魔法・ハンマーパンチ!! いっけえええええ!!」
ドガンッ! 

 なんてこと! ゼクトが血迷ってしまった! 封印魔法を解除するんじゃなくて壊す!? そんな方法聞いたこともないわ! きっと私の言葉が足りなかったんだ。どう説得すればいいんだろう……?

「連続ハンマーパンチ!! うおおおおおおおおおお!!」
ドガンッ! ドガンッ! ドガンッ! ドガンッ! ドガンッ! 
「ゼッ、ゼクト! 落ち着いて! 話をしよう! ゼクトの話聞いてあげるから!」
「うおおおおおおおおおお!!」
「駄目だ、聞こえてない、こんなことしても……」
ピシリッ
「えっ、嘘」

 今のもしかして、壁が割れた音? まさかそんなことあるの? この封印魔法は最高レベルのもので、この壁もその一部のはずなのに……。

バキバキバキバキッ!
「いっけえええええ!!」
ドッゴーン!!
「かっ、壁が……壁が砕けたわ!」
「はあはあ……どうだ!」

 ……か、壁が、砕かれた。砕かれた壁から私の下半身が出たけど、鎖が巻き付いてて身動きが取れないままだ。人間の魔法ってそこまで発達してたんだ……。

「すごい……強力な封印魔法の壁を……」
「切断魔法・チェイサースラッシュ!」
「ゼクト……気持ちは嬉しいけど……えっ、この魔法は鎖を切り続けている?」

 光の斬撃が鎖に引っ付いて切り続けている。いや、これは削ってるのね。しかも、鎖のサイズに合わせた大きさに作ってるみたい。こんな魔法が魔族の魔法?

「これがゼクトの言ってた魔族の魔法? 見たことも聞いたこともないんだけど……」
「時代が違うってことだろうよ。おっ! 鎖が切れ始めたぞ!」
「えっ、あっ!」
パキン!パキン!パキン!…………


※数分後

パキン!…………

 ついに最後の鎖が外れた。おかげで、私は鎖で縛られない状態になり、手足が自由に動かせるようになった。……正直、私は感動している。手足が自由になっただけで解放感を感じる! こんな日が来るなんて! だけどまだ最後に封印魔法の本体、つまり『魔法力場』が残っている。これは流石に……。

「ゼッ……ゼクト……まさか……ここまでできるなんて思わなかったわ」
「ははは……随分舐めてたんだな」
「でもここまでよ。ゼクトの魔力はもう少ないわ、これ以上は……」
「最後までやるさ。壁や鎖が戻る前に大本を潰す!」
「気付いてたの!?」
「魔法の基礎は学んでるんでな。大本の方は俺の禁術で喰らう!」
「禁術!? 一体何をするつもりよ!? 禁術には代償が……」
「行くぜ! 強食魔法・ハイパードレイン!!」
「強食魔法!?」
「うおおおおおおおおおお!!」

 それを聞いた私は凍り付いた気分になった。
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