【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)

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第4章 世界攻略編

第123話 真実

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 俺は団長ゼロを操作し、四色に輝くセフィラを持って大聖堂の地下に来ていた。四色なのは今回の旅で手に入れたコクマー、ダアト、ビナー、ケテルの四つを先に融合させたからだ。

「おお、ようやく来たのかい。待っていたよぉ」

 白髪のおばあさんビーチ大司教と、同じく白髪のおじいさんホロウ教皇が二人っきりで待っていた。

 大司教の背後で六色に光るセフィラ。その隣に四色セフィラを持っていく。

 これで、これで終わるはず。全ての巨獣が消えるのか、はたまた操れたり、大人しくなったりするのだろうか。……災厄さいやくが起こる可能性もあるんだよな。いや、あれは外で得た情報で真偽しんぎは怪しかった。

 やはり、この国の生き字引じびきたるビーチ大司教を信じるべきだよな。

「ギェェ!」

 急に近くのかごに入っているトカゲが鳴いた。ビーチ大司教のペットか。ビックリさせんなよ。

 ……でもどこかで聞いた鳴き声な気がする。そういえばトカゲって鳴くんだっけ? 異世界産のは鳴くのか?

 疑問に思いつつ視線を移すと、教皇が首をきむしっている。首を一周するように綺麗な横線の傷がある。こんなのあったか?

 なぜこんなに胸がざわつくのだろう。

 オイチがビーチ大司教に魅力を感じると言っていた。そういえばビーチ大司教も果実の一族なのだろうか。桃の香りがしたしピーチとか? いや、でも桃はその時に偶然持っていた物だよな。

「それじゃあ合わせてみるよぉ」

 ビーチ大司教がニコニコと笑いながらセフィラに手を掛ける。

「ちょっと待ってください」

「どうしたんだい?」

「すみません。なぜか胸騒ぎがするんです。セフィラを合わせてはいけないような気がします」

「大丈夫だよぉ。仮に何かあっても聖騎士団がどうにかできるよねぇ?」

「ですが……」

「……仕方ないねぇ。落ち着いてもらうために面白い話をしてあげるよぉ」

 ビーチ大司教はこちらと視線を交えた。

「その昔、人類の始祖しそに禁断の果実を食べさせるための聖戦せいせんがあった。戦いはアップルの一族が勝利をおさめ、始祖に知恵と知識を授けた。そして人類の歴史が始まった」

 いつもと語り口調が違う。いや、それよりなぜその話を知っているのだろう。

「人類は果実の一族と共に発展していった。だが得心とくしんのいっていない者達がいた。それは果実の戦争で敗北した“マンチニールの一族”だった。始祖を殺すべきと考えていた一族だ。一族は息を潜めて人類を滅ぼす時を待った」

 ビーチは淡々たんたんと話し続ける。

「果実の戦争が伝説になるくらいの時が経った頃、人々は神樹の上に国を作っていた。その時にはマンチニールの血を引く者はたった一人となっていた。一族の希望がついえるかと思った時にセフィラの存在を知った」

 聞きたくないのに引き込まれる。

「しかしセフィラを集めるには巨獣はあまりにも脅威きょういだった。禁術で生み出した竜や、首なし騎士を使っても難しかった。命運も尽きたと思った時、“聖騎士団”が現れた」

 心臓の鼓動が早まる。

「マンチニールの者は聖騎士団にセフィラを集めさせようと考えた。しかし、ミノタウロス、サラマンダー、スフィンクスを倒すまではよかったが、その後聖騎士団は安定した生活を送るようになり、セフィラを集めなくなった」

 ……くそ、聞きたくない聞きたくない。

「そこでマンチニールの者は一計いっけいを案じた。ひそかに所持していたセフィラをゾンビに喰わせ、王都を攻撃させた。ゾンビ討伐後、思惑通りに危機感を持った聖騎士団はセフィラを集めることになった」

 クソ、クソッ! 全部仕組まれていたのか……!

「ああ、そうだ、セフィラの正体を教えておいてあげようねぇ。セフィラは寄生樹の種。巨獣や植物に寄生し、凶暴化させる。そして十集めると発芽はつがし、近くの木に寄生する。そう、神樹にねぇ。神はつくっておいたのさ。人類が巨獣でさえも制御出来なかった場合に備えて、全てを破壊する装置をねぇ」

 セフィラは巨獣を消す希望でもあり、全ての生命を消す絶望でもあったということか……。

「話は終わりだよぉ。どうだい? 落ち着いたかい?」

 ビーチの顔に優しさはなく、悪魔のような顔を張り付けていた。

 俺はゼロに大鎌を抜かせた。

「……その話を聞いてセフィラを融合させると思うか……!?」

「ヒッヒッヒ」

 不気味に笑うだけ。何を考えている……!?

「教皇聖下せいか、危険です。お下がりください」

 俺は後ろを振り返らずに、教皇を手で制した。しかし、次の瞬間、刃がゼロの腹背ふくはいつらぬいていた。振り返ると、教皇が剣を持って刺していた。その漆黒の剣は暗黒迷宮ビナーで戦った“デュラハン”が使っていたものと酷似こくじしていた。教皇がデュラハンだったのか……!

「おや“本体”は入れてこなかったのかい。運がいいねぇ」

「俺の魔法を知っているのか……!」

「デュラハンがニートンを殺そうとした時に鎧兵を貫いて気付いたよぉ」

「ニートンを狙っていたのは真実を知っている可能性があったからか……!」

 ニートンは世界中を旅しているためどこかでセフィラの真実を知っていてもおかしくなかった。だから狙われたのだろう。

「ご明察めいさつだよぉ。聖騎士団にセフィラ集めを断念されたら嫌だからねぇ。結果的に知らなかったようだけどねぇ」

 言い終わると同時、デュラハンが数体いた俺の鎧兵を一瞬で斬り殺し、セフィラをくっ付けようとする。

「させない!」

 まだ動けたゼロが鎌でビーチ大司教とデュラハンを殺しにかかる。しかし、横から飛んできた火の玉がゼロに直撃して体が焼け落ちた。

 火の玉の発生源はかごの中のトカゲであった。そうか思い出した。コイツの鳴き声はコクマー岩壁群で会った“ドラゴン”と同じだ。恐らく新天地カーナを襲ったのもコイツだろう。

 溶けていくゼロの視界にビーチの愉悦ゆえつした笑みが映る。

 くそっ、最悪だ。

 デュラハンがゆっくりとセフィラをくっ付ける。瞬間、まばゆい光を放ち、巨大な木の根が勢いよく生えた。

 ビーチも、デュラハンも、ドラゴンもみ込んでいく。

 外に待機させていた鎧兵に視点を切り替える。

 大聖堂から寄生樹の根が触手の怪物のように生えていた。

「……クソ!」

 ああ、国が崩壊していく。

 このまま終わってしまうのか?

 いや、俺は絶対に諦めない。

 絶望的状況なのになぜか落ち着いている。今までの経験がそうさせるのか、心が現実逃避させているのか。

 いや、そういう理屈では説明できない“魔法の力”が湧いている。

 すぐに魔法のキーボードとモニターを再起動して見ると驚くべきものが表示されていた。

 これなら勝てるかも知れない。いや、絶対に勝つ……!

 そして俺は敵を止めるべく動き出した。


【第4章 世界攻略編】 —終—
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