123 / 141
第4章 世界攻略編
第123話 真実
しおりを挟む
俺は団長ゼロを操作し、四色に輝くセフィラを持って大聖堂の地下に来ていた。四色なのは今回の旅で手に入れたコクマー、ダアト、ビナー、ケテルの四つを先に融合させたからだ。
「おお、ようやく来たのかい。待っていたよぉ」
白髪のお婆さんビーチ大司教と、同じく白髪のお爺さんホロウ教皇が二人っきりで待っていた。
大司教の背後で六色に光るセフィラ。その隣に四色セフィラを持っていく。
これで、これで終わるはず。全ての巨獣が消えるのか、はたまた操れたり、大人しくなったりするのだろうか。……災厄が起こる可能性もあるんだよな。いや、あれは外で得た情報で真偽は怪しかった。
やはり、この国の生き字引たるビーチ大司教を信じるべきだよな。
「ギェェ!」
急に近くの籠に入っているトカゲが鳴いた。ビーチ大司教のペットか。ビックリさせんなよ。
……でもどこかで聞いた鳴き声な気がする。そういえばトカゲって鳴くんだっけ? 異世界産のは鳴くのか?
疑問に思いつつ視線を移すと、教皇が首を掻きむしっている。首を一周するように綺麗な横線の傷がある。こんなのあったか?
なぜこんなに胸がざわつくのだろう。
オイチがビーチ大司教に魅力を感じると言っていた。そういえばビーチ大司教も果実の一族なのだろうか。桃の香りがしたしピーチとか? いや、でも桃はその時に偶然持っていた物だよな。
「それじゃあ合わせてみるよぉ」
ビーチ大司教がニコニコと笑いながらセフィラに手を掛ける。
「ちょっと待ってください」
「どうしたんだい?」
「すみません。なぜか胸騒ぎがするんです。セフィラを合わせてはいけないような気がします」
「大丈夫だよぉ。仮に何かあっても聖騎士団がどうにかできるよねぇ?」
「ですが……」
「……仕方ないねぇ。落ち着いてもらうために面白い話をしてあげるよぉ」
ビーチ大司教はこちらと視線を交えた。
「その昔、人類の始祖に禁断の果実を食べさせるための聖戦があった。戦いはアップルの一族が勝利を納め、始祖に知恵と知識を授けた。そして人類の歴史が始まった」
いつもと語り口調が違う。いや、それよりなぜその話を知っているのだろう。
「人類は果実の一族と共に発展していった。だが得心のいっていない者達がいた。それは果実の戦争で敗北した“マンチニールの一族”だった。始祖を殺すべきと考えていた一族だ。一族は息を潜めて人類を滅ぼす時を待った」
ビーチは淡々と話し続ける。
「果実の戦争が伝説になるくらいの時が経った頃、人々は神樹の上に国を作っていた。その時にはマンチニールの血を引く者はたった一人となっていた。一族の希望が潰えるかと思った時にセフィラの存在を知った」
聞きたくないのに引き込まれる。
「しかしセフィラを集めるには巨獣はあまりにも脅威だった。禁術で生み出した竜や、首なし騎士を使っても難しかった。命運も尽きたと思った時、“聖騎士団”が現れた」
心臓の鼓動が早まる。
「マンチニールの者は聖騎士団にセフィラを集めさせようと考えた。しかし、ミノタウロス、サラマンダー、スフィンクスを倒すまではよかったが、その後聖騎士団は安定した生活を送るようになり、セフィラを集めなくなった」
……くそ、聞きたくない聞きたくない。
「そこでマンチニールの者は一計を案じた。密かに所持していたセフィラをゾンビに喰わせ、王都を攻撃させた。ゾンビ討伐後、思惑通りに危機感を持った聖騎士団はセフィラを集めることになった」
クソ、クソッ! 全部仕組まれていたのか……!
「ああ、そうだ、セフィラの正体を教えておいてあげようねぇ。セフィラは寄生樹の種。巨獣や植物に寄生し、凶暴化させる。そして十集めると発芽し、近くの木に寄生する。そう、神樹にねぇ。神は創っておいたのさ。人類が巨獣でさえも制御出来なかった場合に備えて、全てを破壊する装置をねぇ」
セフィラは巨獣を消す希望でもあり、全ての生命を消す絶望でもあったということか……。
「話は終わりだよぉ。どうだい? 落ち着いたかい?」
ビーチの顔に優しさはなく、悪魔のような顔を張り付けていた。
俺はゼロに大鎌を抜かせた。
「……その話を聞いてセフィラを融合させると思うか……!?」
「ヒッヒッヒ」
不気味に笑うだけ。何を考えている……!?
「教皇聖下、危険です。お下がりください」
俺は後ろを振り返らずに、教皇を手で制した。しかし、次の瞬間、刃がゼロの腹背を貫いていた。振り返ると、教皇が剣を持って刺していた。その漆黒の剣は暗黒迷宮ビナーで戦った“デュラハン”が使っていたものと酷似していた。教皇がデュラハンだったのか……!
「おや“本体”は入れてこなかったのかい。運がいいねぇ」
「俺の魔法を知っているのか……!」
「デュラハンがニートンを殺そうとした時に鎧兵を貫いて気付いたよぉ」
「ニートンを狙っていたのは真実を知っている可能性があったからか……!」
ニートンは世界中を旅しているためどこかでセフィラの真実を知っていてもおかしくなかった。だから狙われたのだろう。
「ご明察だよぉ。聖騎士団にセフィラ集めを断念されたら嫌だからねぇ。結果的に知らなかったようだけどねぇ」
言い終わると同時、デュラハンが数体いた俺の鎧兵を一瞬で斬り殺し、セフィラをくっ付けようとする。
「させない!」
まだ動けたゼロが鎌でビーチ大司教とデュラハンを殺しにかかる。しかし、横から飛んできた火の玉がゼロに直撃して体が焼け落ちた。
火の玉の発生源は籠の中のトカゲであった。そうか思い出した。コイツの鳴き声はコクマー岩壁群で会った“ドラゴン”と同じだ。恐らく新天地カーナを襲ったのもコイツだろう。
溶けていくゼロの視界にビーチの愉悦した笑みが映る。
くそっ、最悪だ。
デュラハンがゆっくりとセフィラをくっ付ける。瞬間、まばゆい光を放ち、巨大な木の根が勢いよく生えた。
ビーチも、デュラハンも、ドラゴンも呑み込んでいく。
外に待機させていた鎧兵に視点を切り替える。
大聖堂から寄生樹の根が触手の怪物のように生えていた。
「……クソ!」
ああ、国が崩壊していく。
このまま終わってしまうのか?
いや、俺は絶対に諦めない。
絶望的状況なのになぜか落ち着いている。今までの経験がそうさせるのか、心が現実逃避させているのか。
いや、そういう理屈では説明できない“魔法の力”が湧いている。
すぐに魔法のキーボードとモニターを再起動して見ると驚くべきものが表示されていた。
これなら勝てるかも知れない。いや、絶対に勝つ……!
そして俺は敵を止めるべく動き出した。
【第4章 世界攻略編】 —終—
「おお、ようやく来たのかい。待っていたよぉ」
白髪のお婆さんビーチ大司教と、同じく白髪のお爺さんホロウ教皇が二人っきりで待っていた。
大司教の背後で六色に光るセフィラ。その隣に四色セフィラを持っていく。
これで、これで終わるはず。全ての巨獣が消えるのか、はたまた操れたり、大人しくなったりするのだろうか。……災厄が起こる可能性もあるんだよな。いや、あれは外で得た情報で真偽は怪しかった。
やはり、この国の生き字引たるビーチ大司教を信じるべきだよな。
「ギェェ!」
急に近くの籠に入っているトカゲが鳴いた。ビーチ大司教のペットか。ビックリさせんなよ。
……でもどこかで聞いた鳴き声な気がする。そういえばトカゲって鳴くんだっけ? 異世界産のは鳴くのか?
疑問に思いつつ視線を移すと、教皇が首を掻きむしっている。首を一周するように綺麗な横線の傷がある。こんなのあったか?
なぜこんなに胸がざわつくのだろう。
オイチがビーチ大司教に魅力を感じると言っていた。そういえばビーチ大司教も果実の一族なのだろうか。桃の香りがしたしピーチとか? いや、でも桃はその時に偶然持っていた物だよな。
「それじゃあ合わせてみるよぉ」
ビーチ大司教がニコニコと笑いながらセフィラに手を掛ける。
「ちょっと待ってください」
「どうしたんだい?」
「すみません。なぜか胸騒ぎがするんです。セフィラを合わせてはいけないような気がします」
「大丈夫だよぉ。仮に何かあっても聖騎士団がどうにかできるよねぇ?」
「ですが……」
「……仕方ないねぇ。落ち着いてもらうために面白い話をしてあげるよぉ」
ビーチ大司教はこちらと視線を交えた。
「その昔、人類の始祖に禁断の果実を食べさせるための聖戦があった。戦いはアップルの一族が勝利を納め、始祖に知恵と知識を授けた。そして人類の歴史が始まった」
いつもと語り口調が違う。いや、それよりなぜその話を知っているのだろう。
「人類は果実の一族と共に発展していった。だが得心のいっていない者達がいた。それは果実の戦争で敗北した“マンチニールの一族”だった。始祖を殺すべきと考えていた一族だ。一族は息を潜めて人類を滅ぼす時を待った」
ビーチは淡々と話し続ける。
「果実の戦争が伝説になるくらいの時が経った頃、人々は神樹の上に国を作っていた。その時にはマンチニールの血を引く者はたった一人となっていた。一族の希望が潰えるかと思った時にセフィラの存在を知った」
聞きたくないのに引き込まれる。
「しかしセフィラを集めるには巨獣はあまりにも脅威だった。禁術で生み出した竜や、首なし騎士を使っても難しかった。命運も尽きたと思った時、“聖騎士団”が現れた」
心臓の鼓動が早まる。
「マンチニールの者は聖騎士団にセフィラを集めさせようと考えた。しかし、ミノタウロス、サラマンダー、スフィンクスを倒すまではよかったが、その後聖騎士団は安定した生活を送るようになり、セフィラを集めなくなった」
……くそ、聞きたくない聞きたくない。
「そこでマンチニールの者は一計を案じた。密かに所持していたセフィラをゾンビに喰わせ、王都を攻撃させた。ゾンビ討伐後、思惑通りに危機感を持った聖騎士団はセフィラを集めることになった」
クソ、クソッ! 全部仕組まれていたのか……!
「ああ、そうだ、セフィラの正体を教えておいてあげようねぇ。セフィラは寄生樹の種。巨獣や植物に寄生し、凶暴化させる。そして十集めると発芽し、近くの木に寄生する。そう、神樹にねぇ。神は創っておいたのさ。人類が巨獣でさえも制御出来なかった場合に備えて、全てを破壊する装置をねぇ」
セフィラは巨獣を消す希望でもあり、全ての生命を消す絶望でもあったということか……。
「話は終わりだよぉ。どうだい? 落ち着いたかい?」
ビーチの顔に優しさはなく、悪魔のような顔を張り付けていた。
俺はゼロに大鎌を抜かせた。
「……その話を聞いてセフィラを融合させると思うか……!?」
「ヒッヒッヒ」
不気味に笑うだけ。何を考えている……!?
「教皇聖下、危険です。お下がりください」
俺は後ろを振り返らずに、教皇を手で制した。しかし、次の瞬間、刃がゼロの腹背を貫いていた。振り返ると、教皇が剣を持って刺していた。その漆黒の剣は暗黒迷宮ビナーで戦った“デュラハン”が使っていたものと酷似していた。教皇がデュラハンだったのか……!
「おや“本体”は入れてこなかったのかい。運がいいねぇ」
「俺の魔法を知っているのか……!」
「デュラハンがニートンを殺そうとした時に鎧兵を貫いて気付いたよぉ」
「ニートンを狙っていたのは真実を知っている可能性があったからか……!」
ニートンは世界中を旅しているためどこかでセフィラの真実を知っていてもおかしくなかった。だから狙われたのだろう。
「ご明察だよぉ。聖騎士団にセフィラ集めを断念されたら嫌だからねぇ。結果的に知らなかったようだけどねぇ」
言い終わると同時、デュラハンが数体いた俺の鎧兵を一瞬で斬り殺し、セフィラをくっ付けようとする。
「させない!」
まだ動けたゼロが鎌でビーチ大司教とデュラハンを殺しにかかる。しかし、横から飛んできた火の玉がゼロに直撃して体が焼け落ちた。
火の玉の発生源は籠の中のトカゲであった。そうか思い出した。コイツの鳴き声はコクマー岩壁群で会った“ドラゴン”と同じだ。恐らく新天地カーナを襲ったのもコイツだろう。
溶けていくゼロの視界にビーチの愉悦した笑みが映る。
くそっ、最悪だ。
デュラハンがゆっくりとセフィラをくっ付ける。瞬間、まばゆい光を放ち、巨大な木の根が勢いよく生えた。
ビーチも、デュラハンも、ドラゴンも呑み込んでいく。
外に待機させていた鎧兵に視点を切り替える。
大聖堂から寄生樹の根が触手の怪物のように生えていた。
「……クソ!」
ああ、国が崩壊していく。
このまま終わってしまうのか?
いや、俺は絶対に諦めない。
絶望的状況なのになぜか落ち着いている。今までの経験がそうさせるのか、心が現実逃避させているのか。
いや、そういう理屈では説明できない“魔法の力”が湧いている。
すぐに魔法のキーボードとモニターを再起動して見ると驚くべきものが表示されていた。
これなら勝てるかも知れない。いや、絶対に勝つ……!
そして俺は敵を止めるべく動き出した。
【第4章 世界攻略編】 —終—
0
あなたにおすすめの小説
残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~
日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ―
異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。
強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。
ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる!
―作品について―
完結しました。
全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる