私立探偵と男達の愛

いちみりヒビキ

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(17) 椿 3 紡がれる願い

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拓海は目が覚めると、裸でベッドに寝かされていた。
そして、両手、両足首はロープで縛られ、ベッドの四隅に固定されている。

ギギッ……。

引き剥がそうとするもロープが食い込み身動きが取れない。
拓海は、辺りを見回した。
どこかのホテルのような部屋。

ふと人の気配を感じた。
拓海は、叫んだ。

「誰だ!?」

そこに一人の人物が立っていた。

「お寝覚めですか? 拓海様。いや、拓海」
「椿……」

椿は拓海に近づき、拓海の頬を優しく撫でながら言った。

「まさか、お前がネズミだったとは……」
「……眠り薬か? 酒に混ぜたのか?」

椿は無言で頷く。
そして、言った。

「『農場』の一つが何者かによって潰された。そして、『集荷場』の運び屋にも行方不明者が出ている。我々を探っている者がいるのは分かっていた。だから、いずれここにも現れるだろうと罠を張っていたが、まさか、お前だったとはな……」

拓海は観念したのか、否定する事なく目を閉じた。

「拓海、その名前も本当かどうか定かじゃないが……吐いてもらおうか? お前は何者だ?」
「俺は俺だ。それ以上でもそれ以下でもない」

「……そうか……簡単には吐かないか。なら仕方ない。拷問をするまでだ」

椿はドレスの肩ひもをずらした。
ドレスは、すっと足元に落ちる。

するとそこには、美しい男の肢体が現れた。
細身の体に、透明感のある白い肌。
それを引き立たせるシンプルなレースの上下の下着。

椿は、黒髪を片耳にかけながら妖艶に微笑んだ。

「私の拷問はつらいぞ……天国と地獄を同時に味わうことになる。どこまで我慢できるかな?」

椿は、唇を舌なめずりした。


****


椿は、拓海のペニスをしゅっ、しゅっ、としごきながら、先端に舌を伸ばしレロレロと舐めた。
もう一方の手は、子種の袋を容赦なく揉みしだく。

やがて、隆々とした立派な肉棒が椿の目の前にそそり立った。

(す、すごいな……な、なんて、大きいんだ……この男のは……)

椿は、想像以上の大きさに目を見張った。

「はぁ、はぁ、くっ……」

悔しそうな顔をする拓海。
そんな拓海の顔を見て、椿は含み笑いをした。

「ふふふ。こんなにカチカチに勃起しているぞ、拓海。お前、私のような咎人に嬲られて興奮しているのか……変態め、ふふふ」

椿は尚も、ちゅぱ、ちゅぱ、しゃぶりながら言った。

「なぁ、拓海。私の見立てでは、お前は貴族出身の軍人……いずれにしても、ただの貴族ではないのだろう?」
「はぁ、はぁ……何度言えば分かるんだ……俺は一般市民だ……」

拓海は、息を荒げながら答えた。
裏筋に舌を這わしていた椿だったが、その拓海の言葉に怪訝な顔をした。

「一般市民……警察だと言いたいのか? ふっ、私を馬鹿にするのもいい加減にしろ……風格、身のこなし、そして教養。警察にこんな男がいるとは思えない……とするとプロの諜報員……どこかの組織に雇われている、といったところか……」

椿は、はむっ、と口に咥えた。
そして、亀頭を唇で絞りとるように締め付ける。
拓海は堪らずに、うっ、うう、と声を上げた。

「さぁ、どこの組織か吐いてもらおうか……」

椿のフェラ攻めは続く。
再び、拓海のペニスを口の中にすっぽり収めると、頭を上下移動させ舌を絡めながらしごいた。

拓海の男根は、むきっ、むきっ、と男らしくいきり立っていく。
そのぶっといペニスは、逆に椿の小さい口を犯していくようだった。

椿は、悶え苦しみながらも、想像を超える一物に感動を覚えていた。

(すごい圧迫感……たまらない……ああ、ビクビク脈打ってなんて逞しいんだ……あっ、うう、アナルがヒクヒクしてくる)


****


椿は、ぷはぁ、と口を離した。
だらっと涎が糸を引き、滴り落ちた。

椿は、おもむろに、自分の頭の後ろから真っ赤な髪留めリボンをしゅるっと外した。
黒い艶やかな後ろ髪が、ハラっと広がる。
  
「さぁ、これは私からのプレゼントだ……ふふふ、こうやってペニスの根元にきつく巻くとな、射精できなくなる。苦しいぞ、ふふふ」

リボンで飾られた拓海の勃起ペニス。
時折、ピクン、ピクン、と動くがリボンで締め付けられ赤く腫れた。

椿はそれを満足気に見つめた後、拓海の顔に顔を近づけた。
そして、うっとりとした目をしながら、拓海の口に、はぷっとキスをした。

椿のツンっと尖った唇がプルンと震える。

拓海は、息を切らせながら言った。

「はぁ、はぁ……や、やめろ……俺に雇い主などいない……だから、放せ……」
「なぁ、拓海。お前は強情な男だな……ふふふ、私は嫌いじゃないぞ……さあ、お望みどおりお前の大事な物を頂くとしよう……」

椿は、拓海の体を跨いで座った。
そして、拓海のペニスを握りしめ、そこに自分のアナルを沈めていく。
お尻の穴がぐぐぐっと広がり、徐々に挿っていく。

「うぅ……椿、やめてくれ……」

拓海の悲鳴とも言える声を上げた。
椿は、構わずに腰を最後まで落としていく。

(うぐっ……はあああっ……す、すごいっ、奥まで挿ってくる……想像以上の巨根。ああぁ、こんなに感じるのいつ以来だ……)

挿れただけで、体の芯に電気が走る。

(あはっ……最高だ……拓海。お前とセックスできるなんて私は何て幸せなんだ……お前がネズミで本当によかった……)

椿は、悦びで顔を赤らめ腰を振り始めた。


****


これは『恋』ではない。
単なる拷問なのだ。

椿は、そう思うと、一気に性衝動が解放された。
心の赴くままに、拓海の体を貪っていい。

椿はその喜びで震えていた。

騎上位の体勢で拓海の上に乗っかった椿は、腰を振りながらも、拓海の体を夢中で愛撫する。
舌を這わして、耳から頬、唇。
そこから、首を伝わり胸板、乳首へ。

時折、はぷっと甘噛みをして、満足そうに微笑む。
まるで、自分の匂いを擦りつけているかのように……。

そして、椿の腰の動きはだんだん激しくなっていく。

ずちゅ、ずちゅ……ずちゅ……。

リボンの締め付けで真っ赤になったペニスが、アナルを広げながら激しく出入りを繰り返す。
いやらしい男同士の接合部。

拓海という男の体にすっかり魅了された椿は、既に興奮が高まりメスイキ寸前まで来ていた。
椿は、拓海にガバッと覆いかぶさり、手を後ろに回して拓海のペニスを握り締める。

「ほら、ほら、出したいだろ? ここに溜まった子種を私の中へドバっと……ふふふ、いいぞ、いいんだぞ? お前が洗いざらい吐けば……思う存分、たっぷりとお前の白い液を私の雄膣に出して……ほら、ほら」

そのまま椿は玉袋を揉み上げていく。
拓海は、はぁ、はぁ、と辛そうな顔で目を潤ませた。
その目を見た椿は、もう止まらなかった。

(あっ、あっ……い、いきそう……いくっ……)

絶頂……。
椿は、イキの痙攣を繰り返し、拓海の胸に崩れ落ちた。

(はぁ、はぁ、なんて素晴らしいんだ……この男のとセックスは……ああ、まだ、まだ、この男と交わっていたい……)

椿は、まだ苦しそうに息を荒げる拓海の唇を奪いにかかった。


****


椿が、再び拓海のモノをアナルに咥え込もうとした時、それは突然おこった。
バチッという音とともに、拓海のペニスを縛っていた赤いリボンが外れたのだ。

それと、時を同じくして、あれだけ口を閉ざしていた拓海が口を開いた。
その言葉は、椿を唖然とさせた。

「お前は、この『双頭の蛇』で、可哀そうな子達を救済しようとしているのではないか?」

椿は固まった。

「な、なぜ、それを……」

拓海は、椿の疑問に答えるかのように続けた。

「それは、お前の子供達に向けられた眼差しが、あまりにも優しいからだ」

その拓海の言葉に、椿は手をわなわなと震わせた。

「黙れ! もういい! それ以上、言うな!」

そうわめき散らかした。
しかし、拓海は続ける。

「お前は、人身売買という罪を背負ってでも、彼等を救いたいと願っている。それは、自分自身の幸せを捨ててでも。違うか?」

拓海は真っすぐ椿を見つめる。
その漆黒の瞳は、すべてを見透かしてくる。

椿は、拓海の頬をパチンパチンと叩いて、その言葉を止めた。
 
「お、お前! 黙れと言っただろ! 私のことはいいんだ! お前は自身の事を吐けばいいんだ!」

椿はすっかり感情的になっていた。
自分をコントロールできず、怒鳴り散らかした。

そしてなぜか、涙が滲み出ていた。
どうして涙が出てくるのか、椿にも分からない。

拓海は、椿に囁いた。

「そうか、それで分かったよ。なぜ、椿、お前が美しいのか……」
「う、美しいだと! や、やめろ! 私を惑わす言葉を吐くな!」

椿は拓海の両肩を掴み、ベッドに抑え込もうと力を込める。
拓海は構わずに続けた。

「……自分を犠牲にしてでも誰かを救いたいと願う気持ち。それこそ本物の美しさ……だがら、お前は美しいんだ」
「や、やめろ! 聞きたくない。お前の言葉など……」

拓海の甘い言葉。
それは、椿の心のスッと染み込んでくる。
心地よく温かい。

椿は、必死にそれを否定しようとするのだが、今の椿では防ぎようがない。

拓海は、優しく微笑んだ。

「椿、もっとよく顔を見せてくれ。そして、ダンスしたときの微笑みを見せてくれないか? 俺は、お前の笑顔を見ると幸せな気持ちになれるんだ」
「ぐっ……」

椿は、涙が滴り落ちるのを我慢して、唇を噛んだ。

(……拓海。私だって、お前とダンスした時はどんなに幸せだったか知れない……すべてを忘れるくらい)

椿の中で複雑な感情が入り交じる。
それは、怒り、悔しさ、嬉しさ、何が何だかよく分からない。

ただ、拓海を好き、という気持ちには抗えなくなっていた。

(ああ……拓海……私はお前をまた好きになってしまう……せっかく、忘れられそうだったのに……)

拓海は、椿の目を真っ直ぐ見て言った。


「椿が男の子達を救うのなら、俺が椿を救いたい。だめか?」


……トクン。

心の奥底に感じる胸の高鳴り。
そう、これは恋のときめき。

(……だ、だめだ、恋など……私には絶対に……私には『双頭の蛇』が……弟達の無念が……)

拓海は言った。


「キスしてくれないか? 椿」


気がつくと、椿は拓海の唇に唇を合わせていた。
椿の頬に涙が流れ落ちる。

椿には、その涙の理由は分かっていた。

愛に飢えていた。
それをずっと包み隠していた自分。

弟達のせいにして。可哀そうな男の子達のせいにして。双頭の蛇のせいにして。
誰かに、愛されたかった。

そんな風に本当の気持ちを誤魔化していた。

椿は知ってしまったのだ。
自分が恋をした男は、そのすべてをお見通しだったという事を。

だから、この涙は嬉し涙……。


****


「椿……締まる……とても気持ちいいよ……」

対面座位で椿のアナルに挿入された拓海のペニスは、椿の下腹部に今までにない圧迫感を与えた。
お尻の穴がメリメリと広がっていく感覚。

「うっ……ううう、おっきい……拓海……切ないよ」



拓海のピストンが始まる。

椿は、うっ、うっ、と唸り声を上げ、両手を後ろについた。
拓海の腰の突き上げが体の奥まで突き刺さってくる。

(ああ、感じる……拓海を体の中で感じる……熱くて、切なくて、愛おしい……)



拓海のペニスは、椿の感部を攻め続ける。
それは片時も休むことなく続けられた。

拓海の情熱的で激しい腰の動き。
滴る汗。
濡れる前髪。

椿は、細っそりした腕を拓海の首に巻きつけて、もっと、もっと、とおねだりをする。

「はぁ、はぁ、椿……椿……」
「拓海………いくっ、いくーっ……」

椿の艶やかな黒髪は、ふあっと後ろへ流れた。


椿は、すでに幾度となく小さな絶頂を繰り返していた。
体はビクビクッと痙攣し、その度に拓海の体にしがみつく。

半開きの口からは、はぁあ、はぁあ、と熱い吐息を漏れ、透き通るような白い肌は、汗でキラキラと輝いた。

椿は、そうやって何度も、何度もイキを繰り返した。

するとどうだろう。
体が少しづつ軽くなっていくのだ。

見知らぬ男達に犯され続けた汚れた体。
人身売買に手を染めた罪の意識。

おそらく、そんな黒くモヤモヤした物が徐々に薄らいでいく。

ずっと繰り返される快楽の中で、椿はこれまでにないほどの幸せを感じていた。
それは、椿が初めて知る『愛』に他ならない。

そして、迫りくる新たな波。
それは、今までに味わったことが無いような大きな渦
椿は、拓海の背中に爪を立てた。

「……た、拓海、もう、だめ……わ、私は……おかしくなりそう……」
「おかしくなっていい。椿、お前は生まれ変わるんだ。俺の胸の中で……いいな」

椿は、喘ぎ声を出しながら、何度もうなづいた。
そして、拓海にギュッと抱き着き絶頂を迎えた。

「いっ、いくーっ……」


****


椿は、真っ白な空間を彷徨っていた。

「ここはどこだ?」

ふと、懐かしい匂いがした。

『椿お兄ちゃん!』

椿は、声のする方に振り向いた。
するとそこには、弟達の懐かしい顔があった。
椿は、驚いて言った。

「……どうしてお前達がここに……」
『ふふふ。椿お兄ちゃんの事、心配で見に来ちゃった!』
『ねー!』

弟達は、椿との再会が嬉しくて仕方ないようだ。
ニコニコと楽しそうに笑う。
弟の一人が言った。

『椿お兄ちゃん、好きな男の人に抱いてもらえたんだね!』

椿は動揺して答えた。

「み、みんな、ごめん。違うんだ! これは!」

しかし、弟達は首を振る。

『うううん。椿お兄ちゃん! 違う事なんかないよ。椿お兄ちゃんはもう十分頑張ったんだから、これでいいんだよ』
『そうだよ!』

「しかし、私だけ、幸せになるなんて……」

『椿お兄ちゃん! 僕達の分まで幸せになって!』
『うんうん!』

弟達の言葉に、椿は嬉しくなって涙が出てきた。
椿は、涙を堪えながら言った。

「うっ、うううう……こんなお兄ちゃんだけど、みんな、許してくれるかい?」
『もちろんだよ!』

「ありがとう……みんな。分かった、お兄ちゃん、幸せになるな」
『おめでとう! 椿お兄ちゃん!』
『おめでとう!』

弟達は、飛び跳ねながら、わーい、わーい、と叫んだ。
そんな弟達の姿を、椿は目元を指で抑えながら見ていた。
そこへ、弟の一人が話かけてきた。

『ねぇ、椿お兄ちゃん、お願いがあるんだ』
「ん? なんだ」

『もう、僕達の為に頑張らないでね!』
「え?」

椿は、驚いて声を上げた。
弟は続ける。

『僕達はもう報われたんだ……椿お兄ちゃんが幸せになるって言ってくれたから。それが僕達の夢。だから、もう叶ったんだ!』
『ね!』

「な……」

弟達の優しい思いが椿の胸に突き刺さる。
目頭が一気に熱くなった。

「うっううう……お前達……」

涙がぼろぼろと溢れでた。
もう我慢出来ない。
頬を伝わり滴り落ちる。

弟達は、そんな椿に笑顔で言った。

『じゃ、もう行くね、僕達。またね、椿お兄ちゃん! じゃあね!』
『ばいばい!』

「……ま、またな……お前達」

椿は、消えゆく弟達の背中を涙で曇った目で見つめた。

(お前達、お兄ちゃんは今とっても幸せだよ……)


****


椿は、ベッドに横になり宙を見つめていた。
拓海は、椿の肩にポンっと軽く手を置いた。

「じゃあ、いくよ。椿……」

椿は、はっとして拓海を引き留める。

「ま、待てくれ……拓海」
「なんだ?」

「……なぁ、拓海、私は間違っていたのかな?」

椿の問いかけに、拓海は真っすぐ椿の目を見て答えた。

「お前に救われた子供達は沢山いるのだろう。彼らにとってお前は救いの神だったのだ。それを誰が間違いだと言えるか?」
「ふっ、優しいな……お前は」

椿は、拓海の事を眩しそうに見つめた。
そして、思っていた事を口にした。

「もし、私が日の当たる場所に立てるようになったら、また私と会ってくれるか? 今度は自分の為に生きてみようと思うんだ。だから、その時は……」

拓海は、椿の前髪を払い額にチュっとキスをした。

「ああ、もちろん。待ってるよ……そして、思う存分抱いてやろう」
「ありがとう、拓海……うっ、ううう……」

椿は、嬉しさのあまり泣き崩れた。

(また、いちからのやり直し。でも、大丈夫。拓海がいるのだから……弟達よ、お兄ちゃんは頑張ってみるよ)

(椿お兄ちゃん、頑張って!)
(頑張ってね! 応援しているからね!)

涙で潤む椿の目には、弟達の笑顔がありありと見えていた。

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