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24 愛と友情(2) ~リュウジ~
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それから、アオイは学校に来なくなった。
間違いない。俺のせいだ。
しかし、やはりどうしてか分からない。
あのコスが気に食わなかったとしても、冗談で済まされるレベルのはずなのに……。
一週間の休みの後で、誰もが、これは病欠では無いと察した。
アオイと仲の良かった俺は、皆からアオイはどうしたのか聞かれる様になった。
俺は、口をつぐんだまま首を振ることしかできなかった。
アオイがいなくなった学校は、何処か違う世界のように感じた。
無機質な空間。
クラスメイトや先生が遠くに感じる。
こんなだったか? 俺達のいた世界は?
俺は、アオイの机に語りかける。
周りが変わったのではない。
きっと、俺が変わったんだ。
アオイのいない世界が、俺にとって異質に感じられているんだ……。
授業中も休み時間も下校時間も頭に浮かぶことはアオイの事ばかり。
俺は、普段、どうやって毎日を過ごしていたんだろう。
今ならよく分かる。
アオイとジャレ合う日々がどんなに楽しかった事か。
俺にとってどんなに大切だったのか。
失ってから気づく。
それを目の当たりにした。
雨が降る学校帰り。
いつもアオイと寄るコンビニの前を通る。
雨に濡れてひっそりと佇むベンチ。
そこには、楽しそうに戯れ合う、俺とアオイの姿が確かにあった。
「リュウジ! 帰りに唐揚げ食って帰ろうぜ!」
「美味な、リュウジ! オレのも少し食うか?」
「お前、ジャンケン負けたんだから、奢りだぞ! あはは!」
目を閉じれば、浮かび上がる屈託のないアオイの笑顔。
俺は当たり前のようにその笑顔を見ていたけど、特別なものだったんだな。
アオイ、寂しいよ……。
どうして、学校へ来ないんだよ……。
ツーっと頬を水滴が伝わった。
雨?
いや、違う……。
その時、俺は自分が泣いている事に気がついた。
うっ、ううっ……。
歯を喰いしばっても涙が止まらない。
俺は、傘で顔を隠して人知れず泣いた。
次の日、俺はアオイに会いに行くことを決心した。
会って何を話したら良いのか分からない。
また怒らせてしまうかも知れない。
でも、とにかく謝ろう。そう思っていた。
アオイの家の前に立つと足が震えるのを感じた。
前だったら、ここに立つだけでアオイとイチャイチャできると気が急いて仕方がなかった。
それが今では、アオイと面と向かうのが怖い。
呼びリンを押そうとしたその瞬間、ガチャっと扉が開いた。
中から誰か出てきた。
「あれ? 君は誰かな?」
その人は、アオイのお姉さんの一人だった。
小顔でショートボブの大人の女性。
俺は、あまりに急なことで焦りながら答えた。
「は、はい。自分はリュウジと言います! アオイ君に話があって……」
「ちょっと、そこで話さない? あたし、これから出かけるところだから」
お姉さんに誘われ、俺はバス亭のベンチに腰掛けた。
お姉さんは、ジュースぐらい奢らせてっとウインクすると、自販機の前に立った。
俺は、ジュースを買うお姉さんの姿を見ていた。
「あれ? ミルクティー売り切れだ。しょうがないなぁ……」
初めて見たが、ハキハキとしてとても綺麗な人。
きっと2番目のお姉さん?
確か、アオイは、仕事はモデルって言っていたと思う。
スタイルも抜群だし、美人だし憧れる大人の女性である。
横顔は、アオイと似ていて、一瞬、ドキッとした。
「コーヒーで良いよね?」
「はい」
俺は、缶コーヒーを受け取りながら、気持ちを落ち着かせようとしていた。
お姉さんは俺に何を伝えたいのだろう。
嫌な予感がしてならない。
お姉さんは、俺の横に座ると、コーヒーに口を付けた。
「自己紹介まだだったわね。あたしは、アオイの姉のナツミ。で、リュウジ君は、アオイに会いに来たの?」
「はい!」
俺は、かしこまって答えた。
お姉さんは、俺を覗き見る。
「君がリュウジ君かぁ、噂通りのイケメンだね」
「えっ……」
「ふふふ。あたしが知ってて驚いた? 実は、アオイから君の事は聞いていたんだ」
お姉さんが言うには、お姉さん達の中で俺は良く知られているそうだ。
アオイは嬉しそうに俺の事を話していたらしい。
「そうね、アオイは初めて男の子の友達が出来たって言ってたわ。リュウジ君。君の事」
「初めてって……」
「それで、男同士の親友になったって。あたし達もその話を聞いたときは嬉しくてね」
お姉さんは、その時の事を思い出しているように目を細めた。
アオイの奴、俺の事をそんなに自慢気に言いふらしていたのかよ。
俺は、ちょっと恥ずかしくなって頭を掻いた。
お姉さんは続ける。
「ねぇ、リュウジ君」
「はい」
「君をアオイには会わせられない……」
会わせられない?
俺は、お姉さんの言葉に絶句した。
なぜ?
俺は拳をギュッと握ってお姉さんに訴える。
「どうして、俺をアオイと会わせてくれないんですか!」
お姉さんは、そっと俺の顔を伺うように見た。
「間違っていたらごめんね。リュウジ君はアオイの事好きなんだよね? えっと、愛しているって言う意味」
「はい!」
隠し立てする必要はない。
俺は即答する。
「やっぱりね……」
お姉さんは、寂しそうに微笑んだ。
俺は食い下がる。
「どうしてですか!? 男だから好きになってはいけない。好きになる資格はない。そう言いたいのですか!」
「いや、違うよ。リュウジ君。それは誤解かな。アオイは、姉の目から見ても可愛いと思う。女の子のように、ううん、それ以上かな。だからきっと普通の男の子ならアオイを好きになってしまう。それは、仕方のない事だと思う」
「なら、どうして!?」
俺はお姉さんの横顔を見つめた。
お姉さんは、缶コーヒーを一口、二口と口に運んだ。
「うん……リュウジ君。リュウジ君だけは、アオイを好きにならなかったらいいなと思っていたんだけど……。リュウジ君も普通の男の子。だから責められない」
お姉さんは、悲しそうな顔で首を横に振る。
アオイを好きにならないほうがいい?
まったく納得できない。
俺は反論する。
「意味が分かりません。お姉さん。どうして、アオイを好きになったらいけないんですか?」
「リュウジ君は正直に答えてくれた。だから、リュウジ君は聞く権利がある。……ねぇ、リュウジ君、アオイの秘密を聞く勇気はある?」
お姉さんの提案に俺は不意を突かれた。
「秘密? 秘密ってなんですか?」
「そうね。どうして、アオイは男友達にこだわるのか。どうして、親友にこだわるのか」
確かにアオイは『男同士』とか『親友』に重きを置いている。
それが、これからお姉さんから語られることだとしたら、願ってもない。
俺がずっと知りたかったことだ。
だから、答えは決まっている。
「はい! 教えて下さい!」
俺は、お姉さんに真っすぐ面と向かって言った。
俺はアオイの秘密を知った。
お姉さんが語ったアオイの事。
アオイが高校生になるまで女の子として育った事。
そして、亡き父親の言葉通り、立派な男になるべく高校生活で腐心していた事。
その為に、男同士の親友を作る事を目標としていた事。
そして理解した。
どうして、アオイが怒っているのか。
アオイが相談してきたあの時、俺は、女っぽいと周囲から思われていたことをちゃんと否定してやればよかったのだ。
そして、『気にするなよ、お前はちゃんとした男だぞ』と元気づけてあげれればよかったのだ。
アオイはそれを期待していた。
男同士の親友としての慰めの言葉に……。
なのに俺ときたらどうだ?
一番可愛いだの、女のコスだのをプレゼントして気持ちを逆なでした。
アオイの男としてのプライドをズタズタに傷付けてしまった。
ああ、俺はなんて事をしてしまったのだ。
アオイの事は全部分かっていたつもりでいたのに……。
くそっ……。
そ、そうだ。
今からでも遅くない。
ちゃんと謝って、アオイの気持ちに応えてやれればいいんだ。
他の奴の事はどうでもいい、俺だけはお前の事を女に見間違えることはない、と。
俺はすぐにお姉さんに尋ねていた。
「お姉さん、アオイに会わせてもらえませんか?」
お姉さんは意外そう目で俺を見た。
アオイの秘密を知ったのだから、当然、引き下がると思っていたのだろう。
愛しているなら、そっとして置いてあげるべき。
そうじゃなきゃ、男として認められなかったアオイをますます惨めにしてしまうのだから。
でも、俺にはそんな事は関係ない。
ちゃんと謝らないと気が済まない。
俺は、じっとお姉さんを見つめ答えを待つ。
「……ごめんね。今、家にはいないのよ」
お姉さんは、素気なく答えた。
その口調は、先ほど俺に言った『君をアオイには会わせられない』という強い意志がにじみ出ていた。
悪気はない。
アオイが言うように、弟思いの優しいお姉さん、なんだ。
でも、ここで引き下がれない。
俺は深々と頭を下げて言った。
「では、アオイが行きそうな場所、教えてくれませんか? お願いします!」
お姉さんは、沈黙した。
俺は頭を下げ続ける。
しばらくして、お姉さんの、ふぅっという溜息が聞こえてきた。
「そうね……良いわ。これが最後かもしれないし……心当たりを教えてあげる」
最後……?
その言葉が引っかかった。
でも、今は、お姉さんに教わった場所に一刻も早く辿り着かなくてはいけない。
俺は、お姉さんに頭を下げると、一目散に駆け出していた。
間違いない。俺のせいだ。
しかし、やはりどうしてか分からない。
あのコスが気に食わなかったとしても、冗談で済まされるレベルのはずなのに……。
一週間の休みの後で、誰もが、これは病欠では無いと察した。
アオイと仲の良かった俺は、皆からアオイはどうしたのか聞かれる様になった。
俺は、口をつぐんだまま首を振ることしかできなかった。
アオイがいなくなった学校は、何処か違う世界のように感じた。
無機質な空間。
クラスメイトや先生が遠くに感じる。
こんなだったか? 俺達のいた世界は?
俺は、アオイの机に語りかける。
周りが変わったのではない。
きっと、俺が変わったんだ。
アオイのいない世界が、俺にとって異質に感じられているんだ……。
授業中も休み時間も下校時間も頭に浮かぶことはアオイの事ばかり。
俺は、普段、どうやって毎日を過ごしていたんだろう。
今ならよく分かる。
アオイとジャレ合う日々がどんなに楽しかった事か。
俺にとってどんなに大切だったのか。
失ってから気づく。
それを目の当たりにした。
雨が降る学校帰り。
いつもアオイと寄るコンビニの前を通る。
雨に濡れてひっそりと佇むベンチ。
そこには、楽しそうに戯れ合う、俺とアオイの姿が確かにあった。
「リュウジ! 帰りに唐揚げ食って帰ろうぜ!」
「美味な、リュウジ! オレのも少し食うか?」
「お前、ジャンケン負けたんだから、奢りだぞ! あはは!」
目を閉じれば、浮かび上がる屈託のないアオイの笑顔。
俺は当たり前のようにその笑顔を見ていたけど、特別なものだったんだな。
アオイ、寂しいよ……。
どうして、学校へ来ないんだよ……。
ツーっと頬を水滴が伝わった。
雨?
いや、違う……。
その時、俺は自分が泣いている事に気がついた。
うっ、ううっ……。
歯を喰いしばっても涙が止まらない。
俺は、傘で顔を隠して人知れず泣いた。
次の日、俺はアオイに会いに行くことを決心した。
会って何を話したら良いのか分からない。
また怒らせてしまうかも知れない。
でも、とにかく謝ろう。そう思っていた。
アオイの家の前に立つと足が震えるのを感じた。
前だったら、ここに立つだけでアオイとイチャイチャできると気が急いて仕方がなかった。
それが今では、アオイと面と向かうのが怖い。
呼びリンを押そうとしたその瞬間、ガチャっと扉が開いた。
中から誰か出てきた。
「あれ? 君は誰かな?」
その人は、アオイのお姉さんの一人だった。
小顔でショートボブの大人の女性。
俺は、あまりに急なことで焦りながら答えた。
「は、はい。自分はリュウジと言います! アオイ君に話があって……」
「ちょっと、そこで話さない? あたし、これから出かけるところだから」
お姉さんに誘われ、俺はバス亭のベンチに腰掛けた。
お姉さんは、ジュースぐらい奢らせてっとウインクすると、自販機の前に立った。
俺は、ジュースを買うお姉さんの姿を見ていた。
「あれ? ミルクティー売り切れだ。しょうがないなぁ……」
初めて見たが、ハキハキとしてとても綺麗な人。
きっと2番目のお姉さん?
確か、アオイは、仕事はモデルって言っていたと思う。
スタイルも抜群だし、美人だし憧れる大人の女性である。
横顔は、アオイと似ていて、一瞬、ドキッとした。
「コーヒーで良いよね?」
「はい」
俺は、缶コーヒーを受け取りながら、気持ちを落ち着かせようとしていた。
お姉さんは俺に何を伝えたいのだろう。
嫌な予感がしてならない。
お姉さんは、俺の横に座ると、コーヒーに口を付けた。
「自己紹介まだだったわね。あたしは、アオイの姉のナツミ。で、リュウジ君は、アオイに会いに来たの?」
「はい!」
俺は、かしこまって答えた。
お姉さんは、俺を覗き見る。
「君がリュウジ君かぁ、噂通りのイケメンだね」
「えっ……」
「ふふふ。あたしが知ってて驚いた? 実は、アオイから君の事は聞いていたんだ」
お姉さんが言うには、お姉さん達の中で俺は良く知られているそうだ。
アオイは嬉しそうに俺の事を話していたらしい。
「そうね、アオイは初めて男の子の友達が出来たって言ってたわ。リュウジ君。君の事」
「初めてって……」
「それで、男同士の親友になったって。あたし達もその話を聞いたときは嬉しくてね」
お姉さんは、その時の事を思い出しているように目を細めた。
アオイの奴、俺の事をそんなに自慢気に言いふらしていたのかよ。
俺は、ちょっと恥ずかしくなって頭を掻いた。
お姉さんは続ける。
「ねぇ、リュウジ君」
「はい」
「君をアオイには会わせられない……」
会わせられない?
俺は、お姉さんの言葉に絶句した。
なぜ?
俺は拳をギュッと握ってお姉さんに訴える。
「どうして、俺をアオイと会わせてくれないんですか!」
お姉さんは、そっと俺の顔を伺うように見た。
「間違っていたらごめんね。リュウジ君はアオイの事好きなんだよね? えっと、愛しているって言う意味」
「はい!」
隠し立てする必要はない。
俺は即答する。
「やっぱりね……」
お姉さんは、寂しそうに微笑んだ。
俺は食い下がる。
「どうしてですか!? 男だから好きになってはいけない。好きになる資格はない。そう言いたいのですか!」
「いや、違うよ。リュウジ君。それは誤解かな。アオイは、姉の目から見ても可愛いと思う。女の子のように、ううん、それ以上かな。だからきっと普通の男の子ならアオイを好きになってしまう。それは、仕方のない事だと思う」
「なら、どうして!?」
俺はお姉さんの横顔を見つめた。
お姉さんは、缶コーヒーを一口、二口と口に運んだ。
「うん……リュウジ君。リュウジ君だけは、アオイを好きにならなかったらいいなと思っていたんだけど……。リュウジ君も普通の男の子。だから責められない」
お姉さんは、悲しそうな顔で首を横に振る。
アオイを好きにならないほうがいい?
まったく納得できない。
俺は反論する。
「意味が分かりません。お姉さん。どうして、アオイを好きになったらいけないんですか?」
「リュウジ君は正直に答えてくれた。だから、リュウジ君は聞く権利がある。……ねぇ、リュウジ君、アオイの秘密を聞く勇気はある?」
お姉さんの提案に俺は不意を突かれた。
「秘密? 秘密ってなんですか?」
「そうね。どうして、アオイは男友達にこだわるのか。どうして、親友にこだわるのか」
確かにアオイは『男同士』とか『親友』に重きを置いている。
それが、これからお姉さんから語られることだとしたら、願ってもない。
俺がずっと知りたかったことだ。
だから、答えは決まっている。
「はい! 教えて下さい!」
俺は、お姉さんに真っすぐ面と向かって言った。
俺はアオイの秘密を知った。
お姉さんが語ったアオイの事。
アオイが高校生になるまで女の子として育った事。
そして、亡き父親の言葉通り、立派な男になるべく高校生活で腐心していた事。
その為に、男同士の親友を作る事を目標としていた事。
そして理解した。
どうして、アオイが怒っているのか。
アオイが相談してきたあの時、俺は、女っぽいと周囲から思われていたことをちゃんと否定してやればよかったのだ。
そして、『気にするなよ、お前はちゃんとした男だぞ』と元気づけてあげれればよかったのだ。
アオイはそれを期待していた。
男同士の親友としての慰めの言葉に……。
なのに俺ときたらどうだ?
一番可愛いだの、女のコスだのをプレゼントして気持ちを逆なでした。
アオイの男としてのプライドをズタズタに傷付けてしまった。
ああ、俺はなんて事をしてしまったのだ。
アオイの事は全部分かっていたつもりでいたのに……。
くそっ……。
そ、そうだ。
今からでも遅くない。
ちゃんと謝って、アオイの気持ちに応えてやれればいいんだ。
他の奴の事はどうでもいい、俺だけはお前の事を女に見間違えることはない、と。
俺はすぐにお姉さんに尋ねていた。
「お姉さん、アオイに会わせてもらえませんか?」
お姉さんは意外そう目で俺を見た。
アオイの秘密を知ったのだから、当然、引き下がると思っていたのだろう。
愛しているなら、そっとして置いてあげるべき。
そうじゃなきゃ、男として認められなかったアオイをますます惨めにしてしまうのだから。
でも、俺にはそんな事は関係ない。
ちゃんと謝らないと気が済まない。
俺は、じっとお姉さんを見つめ答えを待つ。
「……ごめんね。今、家にはいないのよ」
お姉さんは、素気なく答えた。
その口調は、先ほど俺に言った『君をアオイには会わせられない』という強い意志がにじみ出ていた。
悪気はない。
アオイが言うように、弟思いの優しいお姉さん、なんだ。
でも、ここで引き下がれない。
俺は深々と頭を下げて言った。
「では、アオイが行きそうな場所、教えてくれませんか? お願いします!」
お姉さんは、沈黙した。
俺は頭を下げ続ける。
しばらくして、お姉さんの、ふぅっという溜息が聞こえてきた。
「そうね……良いわ。これが最後かもしれないし……心当たりを教えてあげる」
最後……?
その言葉が引っかかった。
でも、今は、お姉さんに教わった場所に一刻も早く辿り着かなくてはいけない。
俺は、お姉さんに頭を下げると、一目散に駆け出していた。
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