愛しいお前が堕ちるまで

いちみりヒビキ

文字の大きさ
4 / 5

4 秘めた思い

しおりを挟む
俺の敗北宣言を聞いたサトシは怒鳴った。

「待て!! サヨナラってどうしてだ! どうして、そんな事を言うんだ?」

「お前、いつもイクとき、泣いているだろ? 悔しいんだろ? 無理矢理いかされるのが」
「ち、違う! オレは嬉しいと、つい涙が出てきちまうんだ……」

「何だと? いつも流す涙、それは嬉し涙だとでもいうのか?」
「あ、ああ……それが恥ずかしくて。子供っぽいからな……」

「……つまり、お前は俺とするとき、嬉しいっていうのか?」
「あ、ああ……」

上目遣いで、チラチラと俺の顔色を覗き込む。
時折恥ずかしそうに、下を向いた。

「まぁいい。では、なぜ、お前は俺に心を開かないのだ」

俺の核心を突く問いに、サトシは、目を大きく見開いた。
手を握り締めて、叫んだ。

「開いていたよ!! 最初から!!」
「な、それはどういう事だ? お前は俺に抱かれるのを嫌がっていたとしか思えない」

「そ、そう見えていたかもしれない。でも仕方なかった……だって、オレは、ヒロミ、お前の事を大好きだから!!!」

サトシは、そう言ってから、頬を真っ赤に染めて恥ずかしそうにうつむいた。

サトシは語った。

「……どんな自分でいればいいのか分からなかった。ヒロミはどんなオレが好きなのか分からなかったし……男を喜んで受け入れてしまうエッチなオレは嫌いなのかとも思った……不安だった、心配だった、どうしたらいいか分からなかった……」

サトシはそこまで語ると、ううう、嗚咽を吐き、そして最後には、涙をポロポロ流した。
我慢していたものが、堰を切って溢れ出したのだ。
 
「だって、ヒック……ヒロミに嫌われたくなかった。だから……ヒック……」 

しゃっくりを堪えながら必死に訴えるサトシ。
俺は、全身の力が抜けるのを感じた。

「……何だよ、これ……」

つまり、俺が戦っていたものはただの幻想で、はなっから敵などいなかったということになる。

「くくく、笑えるな……あはははは」
「……ひ、ヒロミ?」

俺は、自分をあざけるように笑った。
笑うだけ笑うと、スッキリした。

不思議そうに俺を見るサトシに、俺は言った。

「いいか、サトシ。お前は全てを曝け出していい。例え、お前が男でしか感じないエッチな体でも俺は一向に構わない」
「本当に、嫌いにならないか?」

「ならない。何度も言わせるな」
「本当だな!」

サトシは、一転、パッと顔を明るくした。
弾む声で言った。
 
「実は、オレは最初からヒロミの事が好きで付き合いたいって思っていた。もちろんエッチな事もしたいと思っていたから、ヒロミに誘われたときどんなに嬉しかった事か。前の日の夜は、ドキドキして寝れなかったし、入念にお風呂で体を洗ったし、下着とかだって気を使ったし、エッチな男専門のサイトを見て予習とかもしたぜ!」
「ちょ、ちょっと待て! ゆっくり話せ!」

「ったく! ずっと我慢してたんだぞオレは。だから、オレの話、しっかり聞けよ!!」

サトシは、目をキラキラさせて興奮気味。

「……それでな。オレ、ヒロミとのエッチ、すごく気持ちよくて最高なんだ……実はオレ、いつも家に帰ってからその日の事を思い出して一人エッチしてる! こうやってヒロミに触られたとか、こんな風に囁いてくれたとか。ふふふ、オレってエッチだろ? オレ、今もヒロミとする事思い浮かべるだけで、ゾクゾクして変な気分になっちまうんだ……しかしな、ヒロミがオレに優しくて、お前すげぇカッコいいから、ヒロミのせいでもあるんだからな!!」
「おい、サトシ! もういい、分かったから!」

「それでな、オレがヒロミの何処が特に好きかと言うとな……」

サトシの話は終わる気配がない。

(なんてお喋りなんだ。こんな一面もあったんだなサトシは。でも、これはクラスで見るサトシに近い。まぁ、そんな事はこの際どうでもいいのだが……)
 
「なぁ! ヒロミ! ちゃんとオレの話、聞いてるか!!」
「ああ 聞いている。だが、その前に……」

「キスだろ? しようぜ!! オレ、実は、ヒロミとのキス、大好きなんだ!! 知らなかっただろ!!」

さすがにそれは知っていた。
そう答える前に、サトシは、俺に抱き付いてきた。

「チューー!! んっはぷっ!!!」

甘いキス。
吸い付き吸われ、唾液がぐちょぐちょに混ざり合う。
快楽に浸り、トロトロになったサトシの体。
俺は、サトシの体をゆっくりと引き離した。

「はぁ、はぁ……ヒロミ? どうしたんだ?」
「なぁ、サトシ。一つ確認させてくれ」

「ああ、何でも聞いてくれ」
「俺に誘われる前から、俺の事を好きだと言ったな。どうして、告白して来なかった」

「そ、それは……お前が」

口ごもるサトシ。

やっぱりな。
口ではどうとでも言える。
クラスで一番の人気者と、俺のような落ちこぼれとじゃ全く釣りあっていない。
男同士って事以上に、不自然。
周りからは変な目で見られるだろう。

それに耐えられなかった。
俺への気持ちはその程度って事だ。

俺は軽く失望した。
だがそれは、続くサトシの言葉でひっくり返った。

「……実は、オレ、お前に何度も告白してたんだ……」
「なんだと? 本当か?」

「ははは。やっぱりな……」

照れながら悲しい顔をした。
目には少し涙を浮かべてる。

「いつだよ? 言ってみろよ」
「バレンタインデーとか、誕生日とか、クリスマスとかに……プレゼントを……」

俺は、はっとした。
思い当たる節がある。

それは、こっそりと鞄に入っていた小さな紙袋。
可愛い字で、「好きです」の文字が並び、手作りのお菓子が添えられていた。
間違いなく女だろう。

しかし全く思い当たる節がない俺は、これはストーカーの仕業に違いないと、ちゃんと中身を確認せずにゴミ箱に捨てていた。

「ま、まさか……お前だったのか……」
「ああ……オレ、お菓子作り教室にこっそりと通ったりしたんだ……でも、その様子だと食べてもらえてなかったようだな……そうか」

今まで見たことない悲しい顔をした。
俺は返す言葉が見つからなかった。

「……いいんだよ。オレ、片想いも嫌いじゃ無かったから……」

サトシはぐすりの鼻を啜った。

こいつ俺の事をそこまで……。
だからこいつの目を見て俺はすぐに惹かれた。
俺を真剣に見てくれていたからだ。

「サトシ、悪かったな」
「へへへ、いいって事よ!」

「いいわけないだろ!!」
「え!?」

俺は、サトシをギュッと抱きしめた。

「……気が付いてやれなくて、ごめん。悪かった。本当にすまん……」

サトシは、呆気に取られていたが、しばらくして笑みを浮かべた。

「……ありがとう、ヒロミ。オレ、嬉しいよ……」
「……幸せにしてやるぜ、サトシ。これからずっと……」

「……ああ。よろしく頼むぜ……ヒロミ」

俺は、ゆっくりとシートを再び倒し始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~

マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。 王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。 というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。 この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

処理中です...