あふれ出す花の匂い

いちみりヒビキ

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(9)大事な話

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ことの顛末は、僕が警察の事情聴取を受け家に帰ってから悠真さんに教えてもらった。
父も何も知らされておらず、僕と一緒に話を聞いた。

まず羽鳥についてだけど、羽鳥の父親はこの町ではいわゆる闇社会の名の通った弁護士らしい。

暴力団の抗争に関係していたらしいということ。
その抗争は警察当局で数か月前からマークをされていたのだけど、今回は羽鳥の息子と僕の誘拐を機に、踏み込むことが決断されたとのことだ。

「おそらく、警察の手を借りた羽鳥の父親はもうこの町ではやっていけないだろう」

そう、だから羽鳥からは解放されるはずだよ。
そうゆう意味を含めて、僕と羽鳥の関係を察した悠真さんは僕に言った。

現に、この事件以降 羽鳥は学校に現れなくなった。
可哀そうな気もしたが、すぐに頭から消えた。

それで肝心の悠真さん。
まず、悠真さんは最初に、

「ごめん。騙すつもりはなかったんだ」

と謝った。
どうも、悠真さんはうちで働く前は刑事だったらしい。

詳細は分からないが、刑事をやめた後、少しのあいだフリーランスとして元同僚達の手伝いをしていて、今回の事件もその手伝いのひとつだったようだ。

ひょんなことで、この事件の関係組織の拠点の一つが、うちの店の近くだとわかり、それがうちの店で働くきっけかとなったのだと。

そういえば、悠真さんが空を見上げていたのは、あの事件のあったマンションを見ていたのかもしれない。
きっとそうだ。

「ということなんです。黙っていて申し訳ない」

悠真さんはそう言い、「でも」と、つづけた。

「この店で働くことはとても楽しいし、事件とはまったく関係ないです。本心です。そう、それに……」

悠真さんは父の顔を見た。

「ナギさんを愛しているのも本心です」

真剣なまなざしで、そう言った。
父は、顔を赤らめ、しばらく口をつぐんでいた。

しかし、父は僕の顔を一瞥し意を決したように答えた。

「私もです。悠真さん」

そして、僕に向かって言う。

「ごめんなさい、ユウ。お姉ちゃん、大事な話を言いそびれてしまったのだけど……」



僕の察した通り『大事な話』はやはりこの事だったのだ。
でも、そんな話を聞いてからではだめだ。

「まって!」

僕はだまっていられずに声を出した。
もう、止まれない。

悠真さんには、羽鳥との関係も知られてしまった。
だから、僕を汚れものとして思っているかもしれない。

でも、そんな風に思われてもいい。
もう自分に嘘はつけない。

僕は、はっきりと言った。

「僕も悠真さんを愛しています」




悠真さんと父は、目を見開いた。
僕は、構わずに続けた。

「実は、ずっと前から悠真さんのことは好きでした。でも本当に愛していると気が付いたのはつい最近です」

悠真さんも父もだまって聞いてくれる。

「悠真さんと姉さんが愛しあっているのも……その、知っていました……」

僕は唇をかみしめ、そして小さく息を吸った。
そして、真っすぐ悠真さんの目をじっと見つめた。

「姉さんを愛していてもいいんです。僕が悠真さんを愛していてはいけませんか?」

しばらく、時間が止まった。
悠真さんが言った。

「そんな風に俺のことを思っていてくれたのは嬉しいよ。もちろんいいよ。俺もユウの気持ちに応えれるように努力をするよ」

僕は目の前にぱっと光がさした。
あぁ、僕もそうだ。

こっちのまぶしい世界に来れたんだ。
僕は、悠真さんの胸に飛び込み、そして抱きかかえられるうちに泣き崩れた。



その後で、父は僕と二人のときこう言った。

「もう、ユウも悠真さんを好きになっちゃうなんて……でも、悠真さんの良さを分かりあえるなんて、やっぱり、親子、いや姉弟ね」

父は微笑んだ。
そして、「でも、私からもひとつ条件があります」と、続けた。

「悠真さんはきっと、ありのままのユウを受け入れてくれます。でも、悠真さんに、その、抱かれるときは、女になりなさい。いいわね」

父は、タンスから自分の服を見繕って僕に手渡した。

「たぶん、サイズは問題ないはずよ」

あと、お化粧は私が手伝うわと、自ら勝手出た。
なんだか楽しそうだ。

なぜ、父がこうまで女装にこだわるのか分からない。
本当に悠真さんに気を使ったのか、それとも、同じ男を愛する女仲間が欲しかったのか、はたまた、恋のライバルに差があってはフェアではないと考えたのか。

きっと、そのどれでもないかもしれない。
そんな風に思った。

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