「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな

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第47話 謁見の間で待つ者は

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 謁見の間。

 そこにいたのは、レンジの父でも大賢者でもなかった。

 レンジが知らない男であり、その男はステラやピノアがよく知る国王だった。

 国王は手に初期型のスマートフォンを持っていた。
 動画を観ているようだった。

「随分遅かったな……」

 国王は動画を止めると、顔を上げた。

「君がサトシの息子か……
 二日前に来てほしかった……
 あのときなら、まだこの国を……
 いや、結果は変わらなかったか……」

 だが会えて良かった、と彼は言った。

 君たちに会えて良かった、とレンジやステラ、ピノア、ニーズヘッグの顔を見て言った。

 四人とも、何も言葉を発することができなかった。
 そのような魔法がかけられているわけではなかった。
 彼の言葉を、二日前に聞かなければいけなかった言葉を、一言一句聞き漏らしてはいけない、それがわかったからだった。

「君たちはおそらく、私はすでに殺されていると思っていたのだろうね。
 ここには、魔王になったサトシが私になりすまして玉座に座っていると。
 そして、君たちが一度倒したが、サトシがダークマターの時の魔法で肉体の時を遡らせ復元させた大賢者ブライがいると。
 ふたりが、君たちを待ち構えている、と。

 だが、ふたりならもういない。

 ダークマターを浄化する、あの結界のようなもの……
 あれはレオナルドが作ったものだったな……
 サトシだけではなく、私は彼にも申し訳ないことをしてしまった……

 あれを君たちが発動させ、その範囲が城下町だけではなく城にまで及ぶとわかると、ふたりは私を残してどこかへ消えてしまったよ……」


 彼の身体は腹部に大剣が突き刺さっており、それは玉座さえも貫いて、そこから動けないでいた。


「私は、彼らにただ利用されていただけだったようだ。
 いや、サトシは違うな……。
 確か、君はレンジという名前だったね?

 レンジ、君の父親は、城下町のはずれにあるゲートのそばに、あのATMとかいうマキナが出現する日までは、君がやってくるほんの数日前までは、身体が魔王となってもその心は人であり続けていた。

 彼はブライの前では魔王を演じていたが、私の前ではずっと人でありつづけていてくれた。
 200年近い私の人生で、彼はたったひとりだけできた、大切な友達だった。

 ブライはそんなサトシに気づいていた。
 サトシはブライに利用されているに過ぎなかった。
 だが、サトシはブライが気づいていることも、彼に利用されていることも知っていた。
 だから、サトシもまた、ブライを利用していた。ブライがそれに気づいていたかどうかまではわからないがね。

 レオナルドは、いや、この国の民のほとんどが、私をバカ国王と呼んでいたようだけれど、私は魔人であることが自分でも疑わしいくらいに、本当に頭が悪いんだよ。

 サトシとブライの騙し合いは、相手の言動を何千手先までも読み合っているようで、私には何も理解できなかった。何もすることができなかった。

 その結果がこの有り様だ。
 罪もない民を死なせ、国は滅び、私は間もなく死ぬ。

 だが、私が生きているうちに君たちは来てくれた。
 だから、私は国王の器ではなかったけれど、最期の最期にようやく国王らしいことができる……」


 彼は、王に即位して以来、いや、幼い頃からずっと王子や国王でありながら、大賢者の言いなりだったという。
 言いなりという表現は間違っているのかもしれない。

 言葉巧みに操られ、操られていることさえも気づかずに、この百数十年、自らの意思で政(まつりごと)を行ってきたのだと信じこまされていたという。

 大賢者だけではなく、唯一の友人であったレンジの父・サトシが人の心を失い、完全に魔王となってしまった今、大賢者と魔王がどういった関係にあるのかさえわからないとのことだった。

 彼らに利用されていただけだったと気づいたのは、ついさっきだったという。

 国王は、手にもっていたスマートフォンをレンジに差し出した。


「私が先ほどまで見ていたのは、サトシから君への伝言だ。
 勝手に観てしまって、すまない。
 最期に、私が大好きだったサトシが見たかった。

 君たちの世界のマキナというものは本当に素晴らしいね。
 このように自分の姿や声を、映像として残すことができるのだから。

 それを観終わったら、君たちはランスに向かってくれ。
 おそらくはエウロペで起きた惨劇がランスでも起きる。

 世界を頼んだよ、救厄の聖者たち……」


 国王はそう言い終え、レンジがスマホを受け取るのを見届けると、息を引き取った。


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