「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな

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【第二部 異世界転移奇譚 RENJI 2 】「気づいたらまた異世界にいた。異世界転移、通算一万人目と10001人目の冒険者。」

第143話 10番目の精霊 ④

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 ステラはレンジの顔を見た瞬間、信じられないという顔をした。
 青い瞳から大粒の涙がこぼれた。

「迎えに来るのが遅くなってごめんね、ステラ」

 レンジも泣いていた。

「本当にレンジなの……?
 わたしは確か、ピノアといっしょにあなたを追いかけて、あなたの世界に……」

 そうだ。そのはずだったのに、ゲートを通り抜けると、彼女はエウロペ城の謁見の間にいた。
 そばにピノアはおらず、彼女ひとりだけだった。

「本当だよ、ステラ。
 本物のレンジだよ。
 それに、わたしもいるよ」

「ピノア……もう会えないと思ってた……」

 ふたりは抱き合い、泣き合った。

「ごめんね、ステラ。ごめんね。
 わたしはあのとき、最初からステラだけをレンジの世界に送るつもりだったの。
 ステラとレンジが永遠に離れ離れになるなんてだめだと思ったから。
 アンフィスとわたしで、エウロペはなんとかなるって思ったんだ。
 だから、ステラがちゃんとレンジの世界に行けたかどうかも確かめないで戻ってきちゃったんだ」

「そう……だから、あのとき、ピノアはそばにいなかったのね……」


 ステラがゲートをくぐった先は、ただのエウロペ城の謁見の間ではなかった。
 そこにいるはずのない国王が玉座に座っており、そしてその男は彼女が知る国王ではなかった。
 リバーステラにレンジが帰したはずの、レンジの父だった。

 何かがおかしい。
 そこがエウロペ城の謁見の間であることは間違いなかったが、彼女が知る世界とは異なる世界の同じ場所なのだと気づいた。

 考えられる可能性はひとつしかなかった。
 だが、それは起きるはずがないことだった。
 何故それが起きてしまったのか、彼女にはわからなかった。

 なぜ、あなたがその玉座に座っているのか?
 彼女は国王に尋ねたが、国王は自分が何者なのかを知らなかった。

 やはり私は国王ではないのだね、と淡々と事実を受け止めているように見えた。

 国王は、それだけではなく、彼女のことも知らなかった。

 国王は、君は前の世界の記憶を持っているのか、と尋ねた。
 彼女を「神に仇なす者」と呼び、まさか神に仇なす者が直接ここにやってくる者がいるとはね、と言った。

 だから、本当に起きるはずのないことが起きたのだと理解した。

 前の世界の記憶を持っているんじゃない、と彼女は言った。
 前の世界からここに来たのだと。

 それが本当だとしたら、と国王は言った。
 君は神に仇なす者たちの中で最も危険な存在だ、と。

 彼女は身構えたが、国王は彼女の話を聞きたがった。
 自分が何者なのか、彼女が何者なのか、自分が知らない、だが彼女が知っていることのすべてを聞きたがった。

 しかし、謁見の間のすぐ外にいた衛兵が異変に気づき、中に入ってきてしまった。
 彼女は捉えられてしまった。
 衛兵は、兵長や大臣らを呼び、彼女の処遇は国王ではなく大臣が決め、兵長に指示を出していた。

 逃げることは簡単だった。魔法を使えばどうにでもできた。

 だが、彼女はそうはしなかった。

 お腹の中のレンジの子に何かがあってはならないと、この子と自分の身を守ることだけを今は考えよう、と。
 そのためだけに、魔法を使った。

 そして、彼女は聖書にあるバベルの塔だと言われている、エウロペからはるか西、遠く離れたクライという国にあるエテメンアンキへと移送された。

 移送される途中で、彼女は国王に風の精霊の魔法の伝書鳩を送った。

 もし自分のように、今後も前の世界から今の世界にやって来た者が現れたなら、そしてそれが秋月レンジという名前の少年であったなら、その少年があなたが何者かということを教えてくれる、と。


 それから先のことは覚えてはいなかった。

「わたしは、ステラをレンジの世界に送ったつもりでいた。
 それから1ヶ月くらい経った頃、アンフィスの誕生日に、大厄災が起きたの」

「誰が大厄災を起こしたの?
 わたしたちが倒したのは、お父さんの、ブライ・アジ・ダハーカのオリジナルじゃなかったの?」

 ステラの問いに答えたのは、レンジだった。

「大厄災を起こしたのは、父さんだった」

 レンジは悲痛な表情をしていた。
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