19 / 58
私立スク水女学園高等部 #19
しおりを挟むスク水を着て、猫耳カチューシャもつけてからリビングに下りてくるようナノカに言うと、ユズナは一足早く部屋を出ることにした。
ドアを開けた瞬間、
「昼間からお楽しみでしたね」
目の前に兄がいたので、
「ドラクエ1の宿屋の主人かワリャー!!」
ユズナはまた思わず足が出た。
生まれて初めての、壁を使った二段ジャンプからの飛び蹴りだった。
後に、ユズナ兄・ユイトは、「あれはね、まるでストリートファイターのチュンリーのようでしたよ」と、述懐することになる。
ぼくがガイルだったらサマーソルトキックをかましていたところですが、残念ながらぼくはガイルじゃなかったんです、と。
ユズナが振り返ると、ナノカは今にも泣きそうな顔を、湯気が出そうなくらい顔を真っ赤にしていた。
兄にはすぐに車を準備するように頼み、早々にその場から立ち去ってもらうことにした。
ナノカにはあまりギフトを使いたくなかったけれど、ユズナは彼女の今の恥ずかしさだけをゼロにすることにした。
羞恥心自体をゼロにしてしまえば、ナノカは禁断の果実を食べる前のアダムやイブのように街を全裸で歩くようになってしまう。
だから慎重に今の恥ずかしさだけを取り除いた。
ユズナのギフト「±(ギブ・オア・テイク)」は、プラスをマイナスに、マイナスをプラスに変えることができる力がある。
プラスもマイナスもゼロに変えることもできた。
そのギフトを使って、彼女は理想の体重だけでなく、理想の体型、理想の胸の大きさ、理想の身長を維持したりもしていた。
ユズナの156cmという身長は、兄に昔「156cmになったら嫁にしてやる」と言われたことがあったからだった。
その元ネタが、漫画好きの父の部屋の本棚に今もある「南国少年パプワくん」だったことを知ったときは絶望したりもしたけれど。
それだけでなく、ユズナはプラスのものをさらにプラスにしたり、マイナスのものをさらにマイナスにすることもできたから、テストの点数を改竄することも出来た。
たぶん、それが彼女のギフトの一番ストレートな使い道だったが、それを思い付いたのは中学受験のさらに後、中2の学年末試験が終わった後だった。
ユズナが知る限り、テストというものはどんなものも大体0点から100点の範囲内にあり、マイナスの点がつくことはなく、101点以上もない。
だから、ユズナは試験中に大体何点取れそうかを考え、50点くらいならプラス40点(そんなことはまずなかったが)、70点くらいならプラス20点、80点くらいならプラス10点になるようにし、最終的に各教科90点前後にしていた。
そうやって、彼女は中3の最初のテストから、毎回学年10位以内に入るようにしていた。
食事のカロリーをゼロにしたり、身長や体重を維持したりすることは毎日していたけれど、テストの点数の加算は2~3ヶ月に1度くらいしか使わない方法であり、何が起きるかわからなかったため、テストはどの教科も必ずわかる範囲で回答し、白紙で提出したりはしなかった。
カンニングよりも悪いことをしているという自覚はあったから、普段から授業をちゃんと受け、予習や復習もした。テスト勉強も徹夜などの無理こそしないものの、ちゃんと勉強をした上での点数の加算だった。
私立に行くよう勧めてくれたのは両親や兄であり、お金の心配はいらないと言われていた。それでも家族にあまり負担はかけたくなかったから、ユズナは特待生になりたかった。学費の全額免除は無理でも、一部免除になるためだった。
なんて言ったところで、誰も、家族ですら納得するわけがないことはわかっていたから、その秘密は墓場まで持っていくと決めていた。
ギフトでプラスする点数は100点を超えないようにしていたが、一度だけ加減を間違えて100点を超えてしまったことがあった。
だが、どうやら上限があるものについてはそれ以上の数値になることはないようだった。下限もまた同じなのだろう。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
