ディスカウントショップで兄がわたしを18禁コーナーに連れていこうとしています。完全版

あめの みかな

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第三部「おにーちゃんとみかなの新婚生活」

「そして、ようやくわたしたち家族の本当の物語がはじまる。①」

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「あの子のことを、ぼくは一生忘れられないと思う。
 忘れたいけど忘れられないんだ。

 ぼくの全部はあの子に一度あげてる。

 だから、ごめんね、みかな。
 みかなにあげたのは、その残りカスみたいなものなんだ」


 おにーちゃんは言いました。


「もう、黙れよ」

 佳代ちゃんが、拳をテーブルに叩きつけて、言いました。

「これ以上、みかなを傷つけるな」


「黙らせたかったら、ぼくを殺せばいい。
 さっき朝ごはんを作ってくれた包丁で、ぼくを刺せばいい」


 その言葉を聞いた瞬間に、わたしの五感は聴覚以外のすべてが、何も感じなくなりました。

 心因的なストレスから突発性難聴になるのは聞いたことがありましたが、わたしの場合はなぜかその逆で、耳だけが、聴覚だけが生き残って、残りはすべて活動を止めてしまいました。

 目の前が真っ暗闇になったわけじゃなくて、ほんの数センチ先すらも見えないほどに深い深い霧がかかってしまったような……

 佳代ちゃんがわたしを抱きしめてくれていたはずなのに、その体の温もりも、怒りで小刻みに震えていた体も、わたしは感じることができませんでした。

 ただ、ふたりの声だけが、聞こえてくるだけ。


「佳代ちゃん、殺人者はどうして人を刺して殺すとき、何度も刺すか知ってる?」

「知るわけないでしょ? 知りたくもない」

「想像してるより、手応えがないんだって。
 だから、最初の一刺しで致命傷だったとしても、動かなくなるまで刺さないと不安になるんだって」

「ねぇ、聞いてた? わたしの話。そんな話聞きたくないの」


「だから、ぼくを殺すときは気をつけてね」


「ねぇ、なんで? なんで、急にそんな風になるの?」

「言ったよね? さっき。ぼくは人に優しくされたいから、優しくしてきただけだって」

「じゃあ、今は、死にたいから、殺されたいから、みかなやわたしの心を殺そうとしてるわけ?」


「あぁ……そっか、そういう風にも考えられるね。
 気づいてなかったけど、そうかもしれないね。
 ぼくは今、すべてがどうでもよくなってるから、自分じゃもう何を考えてこんなことをしゃべってるのかさえわからないんだよ」


「あんたみたいな人を傷つけることしかできない男をずっと好きだった自分が情けないよ」


「お前も、みかなも、勝手に自分の理想をぼくに押し付けて、そうじゃないとわかって勝手に失望してるだけだろ?」


 おにーちゃんが、誰かのことを「お前」と呼ぶのを、わたしはそのときはじめて聞きました。


「みかな、もうこんなやつ、ほっといて、わたしのうちにいこ?」

 佳代ちゃんはたぶんそのとき、立ち上がってわたしの手を引っ張ったのだと思います。

 でも、わたしは、それすらも感じることができませんでした。


「みかな? ねぇ、聞いてる? 聞こえてる?」

 わたしは、すぐそばにいるはずの佳代ちゃんが、どこにいるのかさえわからなくて……

「みかな? ねぇ、だいじょうぶ?」

 わかるのは、佳代ちゃんがおにーちゃんに対して覚えていた怒りは、怒りをすでに通り越してしまって、もうおにーちゃんに対して何の感情も抱いていないということ。

 それから、わたしはこのとき、どこを向いていたのかさえわからないのだけれど、わたしのことをすごく心配してくれているということだけ。

 佳代ちゃんについて、わかったのは、それだけでした。


 だけど、おにーちゃんについて、たぶん世界でわたしだけにしかわからないことが、わたしはわかってしまっていて、

「お……にー……ちゃ……」

 わたしは、なんとか声を絞りだそうとしましたが、たったそれだけ絞り出すことができただけで、それ以上声を絞り出すことができませんでした。


 目は見えない。

 体を動かすこともできない。


 言わなくちゃいけないことがあるのに。

 今言わないと大変なことになるのに。

 本当に取り返しがつかなくなるのに。

 どうしたら……どうしたら、佳代ちゃんに、おにーちゃんに伝えられる?



「かんたんだぞ、みかな。じゃなかった、まま」

 りさちゃんの声が聞こえました。

 その声は、わたしの声にすごくよく似ていていました。

「みかな?」

「りさか……」

 佳代ちゃんとおにーちゃんにも、その声が聞こえていることがわかりました。


「かよ、っていったか? おまえ。
 いま、ままは、ちょっとしゃべれなくなってる。
 ぱぱがまたやらかしたからな。
 ほんとうに、ぱぱはしかたがないなー」

 りさちゃんが、わたしには使えなくなってしまっていた、わたしの声帯を使ってしゃべっていました。

「あんただれ? みかなじゃないの?」

「りさは、りさだぞ。
 かよは、ぱぱのことすきだったくせに、りさのことしらないのか?
 もぐりか?
 やらせ、じゃなくて、ゆとりでもなくて、えーっとなんだっけ? あみ」

「にわか、ですわ」

「それだ! にわかだ!!」

 あみちゃんも助けにきてくれました。

 そっか、おにーちゃんのことがちゃんとわかるのは、わたしだけじゃなかったんだ。

 りさちゃんたちがいたんだ。


「はじめましてですわ、佳代さん。
 あみとりさちゃんは、おとうたまとおかあたまの枕元にいつもいる、くまのぬいぐるみだって言えば、わかっていただけますか?」


「なに? なんなの? みかな、ふざけてるの?」


「どうする? あみ。
 かよは、りさたちのこと、まったくしらないみたいだぞ」

「しかたがありませんわ。
 とりあえず、佳代さんには、おかあたまがおふざけしてることじゃないことだけはお伝えしておきますわ」

「りさたちしかしらないような、かよがじぶんしかしらない、だれにもみられてない、っておもってることをはなしたら、しんじてもらえるかな?」

「でも、そんなの、ゆうべ、佳代さんがおとうたまのざびえるちゃんと遊んであげてくれてたときのことくらいしかないですわ」

「ちなみに、ざびえるは、ぱぱのちんこのことだぞ。みかなが、じゃない、ままがめいめいした」

「佳代さん、ゆうべたしか、おとうたまのざびえるちゃんが、佳代さんがご想像してらしたものよりもずっと大きくなるものですから、うっかり歯を立てて、血がにじんでしまうようなことをなさいましたね?」

「え、なんで知って……え? え?」

「それから、

『ごめんね、お兄ちゃん、わたし、ほんとはまだフェラチオって一回もしたことないの』

 とか、いってたな~」


「な、な……なに? なんでしってるの? まさか、本当に枕元の……?」


「りさちゃん、駄目押しに、いつもおとうたまといっしょに、あみの講義を受けにくるときのあの台詞をお願いしますわ」


 え? それって、確か……


「かよちゃんせんせーは、しょじょですかー?」


 りさちゃんの質問に、佳代ちゃんの顔が真っ赤になりました。


「あー! やっぱり!! そのはんのう、あみとおんなじだ!!!」

 りさちゃんは、すっごく嬉しそうに、わたしの声帯を使って、そう言いました。

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