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しおりを挟む「それでは皆さん、今夜12時に」
「アリステラピノアさんが退会しました」
9月30日、わたしは他のクラスメイトたちのように自殺をすることはなかった。
彼氏だった水木十和は、比較的早い段階で、アリステラピノアを名乗り、紫帆先生のふりをする藤本花梨に洗脳されてしまった。
わたしはそれを間近で見ていたから、彼や他のクラスメイトたちが近々本当に自殺するだろうということはわかっていた。
わたしはそんな十和に見きりをつけ、いざというときには、わたしも自殺をしたということにできるよう、要雅雪先生に近づいておくことにした。
花梨は自分のスマホと先生のスマホで、自身とアリステラピノアという神を演じ分けていた。
だから、おそらくは自分の死を偽装するだろう。彼女の経済力なら、代わりの死体を用意することくらいはしてくるかもしれない。
わたしにはそこまでは出来ないけれど、要先生をうまく動かすことができれば、きっとわたしをかくまってくれるはずだった。
花梨や、クラスメイトの中で唯一グループチャットに参加しておらず、必ず生き残ることがすでに決まっている星野修司、それから警察や学校に対し、一時的にわたしも死んだことにしてくれるはずだ。
たぶん花梨とわたしは似ている。だから考えていることがなんとなくわかるのだ。
おそらく星野は、花梨から探偵役を与えられたのだろう。探偵には助手が必要だから、ワトソン役を要先生にさせるつもりだろう。
だが、花梨は気づいているのだろうか。
要先生がワトソン役を演じるには、ただ担任の教師だからというだけでは足りない。先生がグループチャットの存在を知っていなければ、助手足り得ない。
だったら、わたしは偶然ではなく必然的にグループチャットの存在を先生に教えることにしよう。
そのためには、誰かのスマホが必要だ。そしてそれは、わたしのスマホでよかった。
だからわたしは、9月30日の午後11時半、先生に通話をかけた。
洗脳されているふりをして、けれどその洗脳は不完全で、わたしは死にたくない死にたくないと先生に助けを求めるというシナリオだった。
先生はすぐに駆けつけてくれた。
わたしは先生にスマホを渡し、そして先生はわたしを自分の家に連れていくと、一晩中他の生徒たちを探し続けた。
わたしは先生の大きな持ち家にひとりではなかった。
先生は妹の真理さんとふたりで暮らしていたようだ。
彼女に事情をかいつまんで説明し、わたしの面倒を看るように言った。
どうやらそのまま朝を迎え、仕事に向かったらしかった。
真理さんは家で出来る仕事をしているらしく、ずっとわたしのそばにいてくれた。
「つらいと思うけど、よかったら何があったか話してくれる?」
「あの、口ではうまく説明できそうにないので、パソコンを借りてもいいですか?」
いいよ、と真理さんは言って、すぐにノートパソコンを持ってきてくれた。
優しい人だった。人を疑うということを知らない人に見えた。
馬鹿だなと思うと同時に少し羨ましくも思えたのは何故だろうか。わたしはこういう人になりたかったのだろうか。紫帆先生に雰囲気が似ているような気もした。
「グループチャット、だっけ? それってスマホの無料通話アプリのだよね? パソコンでも見れるものなの?」
わたしは真理さんのノートパソコンに、スマホで使っている無料通話アプリのパソコン用のものをインストールさせてもらうと、IDとなる電話番号とパスワードを入力してログインした。
先生が持っているわたしのスマホには、別の端末からのログインがあったことが表示されるはずだが、あくまでわたしのアカウントの不正ログイン対策のメッセージであり、藤本花梨が気づくことはないはずだった。先生には真理さんから事前に通話で説明してもらった。
「確かに、これは口では説明しづらいね」
真理さんは、半年分ほどはある膨大な量のグループチャットの、アリステラピノアとクラスメイトたちのやりとりに目を通すと、大きくため息をついた。
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