空想お仕事シリーズ・ボーイズサイド「僕は今日も人の死を笑いに行く」「死神のタナトーシス」「赤ワインとチーズとブロッコリーのトリアージュ」他

あめの みかな

文字の大きさ
209 / 349

「人質の身代わり山羊(スケープゴート)」#43「明晰夢 4」

しおりを挟む
「なんか、綾波シリーズみたいだね。最近多いよね、そういう設定。そもそも、フィクションってさ、このキャラクターはあのキャラクターを好きになるって、作り手がはじめから決めてるのに、何故かわざわざそういう設定にしたがるよね」

僕はそんな疑問を口にした。

「そうだね。メタ的な要素を入れたいんだろうね。好きになるきっかけのストーリーを考えるのが面倒なだけなのかもだけど。君は綾波シリーズの初期ロットみたいなもので、梨沙はグリッドマンの新条アカネみたいな感じかな」

でも、だから何だというのだろう。

「そんなことをわざわざ言いに来たの? それを聞いたところで、僕が梨沙を嫌いになるなんてことはないくらい、『僕』ならわかるよね?」

たとえ僕のオリジナルが、今僕の目の前にいる「僕」であり、僕が彼を元にして梨沙だけを愛するように作り直された存在であったとしても、そんなことはどうでもいいことだった。
梨沙を愛することや彼女に愛されることは、僕にとってこれ以上ないほどの幸福だったからだ。
その気持ちは全く揺らいだりしなかった。むしろ梨沙にお礼を言いたいくらいだった。

僕の問いに、「僕」はスマホを取り出すと、その画面を見せた。
そこには『RINNE』の友だちリストが表示されていて、僕のアイコンと名前があった。

「これは梨沙のスマホだよ。僕のギフトは他人のスマホに入ってる『RINNE』でも使えるんだ。
   『僕』は君の存在を抹消しに来たんだよ」

『僕』は、僕にそう言った。
彼は慣れた手つきで僕を非表示にすると、次はブロックして見せてくれた。

「これで君は、僕にはもう何の手出しも出来ないよ。もう少し話をしたいから声だけは届くようにしてあげたけど」

「僕」は勝ち誇った顔をしていた。
その顔はなんだかヒキガエルみたいで、僕と同じ顔をしているとは思えないほど下品だった。

本当にこれは夢なのだろうか。
これが夢でないとしたら、ここは一体どこなのだろう?
墜落した飛行機の中にいて、客席に梨沙がいるということは、3ヶ月近く前のあの事故の現場にタイムスリップさせられたのだろうか。
『RINNE』を使うギフトなら、ネットニュースやSNSにアップされた事故当時の写真を元に、それが起きた時間と場所に飛べるのかもしれない。
だとしたら、目の前にいる「僕」は何なのだろうか。
「僕」が僕になる前の「僕」を、僕の前に立たせるのは、「僕」の写真があったとしても無理だ。「僕」を復元できるのは「僕」だけだからだ。
他のギフトの持ち主が復元したとしか考えられなかったが、今は目の前の「僕」をどうするかだけを考えるべきだろう。

今の状況は僕にはとてもありがたかった。
「僕」には、僕の声は届いても、僕の姿は見えていない。だから僕がこれから何をしようとしても彼は気づけない。
それに彼は僕をブロックまでしてくれていた。絶対的な安全地帯にいる彼は、きっと舐めプをかましてくれているに違いなかった。

「後は君を『友だち削除』するだけだ。最期に言い残したことはあるかな?」
「僕の存在自体が消されるんだろ? だったら、その言葉もあんたの記憶から消えるんじゃないのか?」

そうだけど生きてるうちに一度は言ってみたかった言葉ってあるよね、と「僕」は言った。

「タクシーに乗って、『前の車を追ってください』とか?」
「『私を疑ってるなら証拠持ってきてよ、しょ・う・こ』とか」
「『ヤフーチャット万歳』とか?」
「チェーンソー持って『二位のYouTuberナメとったらあかんぞ、おらぁ!!全世界配信じゃ!!』とか」
「今、僕の残機を48個、君の体の目や耳や鼻、それに腕や脚、48箇所に移したよ」

ん? と、「僕」は首をかしげた。
何を言っているのかわからない、そんな顔をしていた。

「どうやら、ご自慢のブロックは、ギフトには通用しないみたいだね」

僕は彼を真似て勝ち誇った笑いをした。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

異世界召喚されたが無職だった件〜実はこの世界にない職業でした〜

夜夢
ファンタジー
主人公【相田理人(そうた りひと)】は帰宅後、自宅の扉を開いた瞬間視界が白く染まるほど眩い光に包まれた。 次に目を開いた時には全く見知らぬ場所で、目の前にはまるで映画のセットのような王の間が。 これは異世界召喚かと期待したのも束の間、理人にはジョブの表示がなく、他にも何人かいた召喚者達に笑われながら用無しと城から追放された。 しかし理人にだけは職業が見えていた。理人は自分の職業を秘匿したまま追放を受け入れ野に下った。 これより理人ののんびり異世界冒険活劇が始まる。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

処理中です...