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「ヴィランズサイドストーリー」 #56「FAR EAST OF EDEN」
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「ギフトを手放す件は、わたしもそうするべきだと思った。だからふたりを元に戻したわけだし。だから、お兄ちゃんは違う。操られたりはしてない。こうやって疑心暗鬼に陥らせることで、誰も操ることなく殺し合いをさせる。たぶん、それが目的なんじゃないかな」
だが、要兄妹やここにいる西日野神社の関係者たちを操っていた者は必ずいるはずだ。
しかも、その者は相当に趣味が悪い。
僕たちが殺し合うのをどこかでいまかいまかと楽しみにしながら見ているはずだった。
「珠莉ちゃん、オキクルミとサマイクル、それに童子切りを出してもらえる?」
魔法少女の姿をした亜美に言われた珠莉は、「はいよっ」と言って、どこかからふたふりの刀と一本の仕込み傘を出した。
組織が開発したという、ギフトを持つ刀だ。
安寿は仕込み傘を手にし、ふたふりの刀は、「これは僕が使わせてもらうよ」学がそう言って手にした。
「今の、どこから出したの? どこでもドア持ってるの?」
瑠璃の問いに、四次元ポケットだろと僕は思った。たぶんその場にいた全員が思っただろう。
「わたしは、現実世界をデジタルイラストみたいにレイヤー分けできるの。背景とか人とか、服とか小物とか。必要なレイヤーだけを残して、いらないレイヤーを抜いたり、欲しいレイヤーを足したりすることが出来るんだ」
「僕たちが誰かに操られてたとしたら、敵は珠莉ちゃんにいつの間にか『クイーン・レイヤード』を使わせて、姿を隠してる可能性があるってわけだね」
「わたしがそのことを認識してないってことは、わたしたちより上位のレイヤーに姿を隠してるってことかな。上位レイヤーにいるその人たちからわたしたちは丸見えだけど、下位レイヤーのわたしたちには上位レイヤーは認識できないから」
随分とややこしい能力があるものだった。
「そこで俺の印鑰童子(いんやくどうじ)と、この童子切りの出番ってわけ」
「それって、穴を空けるだけの能力じゃないの?」
舐めてんの? と安寿は瑠璃に言った。
「安寿くんの能力は、元々は鍵や暗証番号を必要とせずにどんなロックでも開けることができる能力なんだよ」
その能力を使ううちに、彼は鍵がない物体や人体に対しても、鍵がかかっていると認識することによって、鍵を開ける代わりに穴を空ける能力に発展させたのだという。
「上位レイヤーにまでこの力が届くことを教えてくれたのはレンジだったけどな。俺が印鑰童子と童子切りで敵の姿を暴く。あとは頼んだぜ、みんな」
ーーすべてを暴け、印鑰童子! 童子切り!!
何もない、誰もいないはずの空間に、ガラスが割れたようにヒビが入った瞬間、
ーーFAR EAST OF EDEN(ファー・イースト・オブ・エデン(西洋から観た誤った日本観))
藤本花梨アンドールが、ギフトの名を口にしたのが聞こえた。
桜の花びらが狂ったように舞い、僕たちの視界を数秒閉ざした。
僕たちの視界がようやく開けたとき、そこは23階建てのビルの最上階だというのに、無数の桜の木が花を開き、稲が青々とし、まだ実っていない青田が辺りには広がっていた。すすきや鶴の姿も見えた。
時代劇でしか見たことがないような、板葺き屋根の平屋建ての民家もちらほら見えていた。
「戦国時代の日本か? 四季が無茶苦茶だけど……」
そう言ったのは学だ。
「一見戦国時代だけど、山の方に道路標識とか、ガードレールみたいなものも見えるよ」
僕たちはすでに、ギフトによる攻撃を受けているということだろう。
「富士山が見えるよ……何なの、これ……」
「ほんとだ……しかもやけに近いね……」
亜美と珠莉が言う通り、僕たちには今、富士山が見えていた。
名古屋から富士山は直線距離で、確か160キロくらいだ。距離だけで言えば十分見ることはできる範囲にはなるらしい。
だが見えない理由がちゃんとあった。
昔は見えたとか、高層建築物が増えたため見えなくなったとかではなく、昔から山々に阻まれているため見えないのだ。
名古屋から富士山を見るためには、高さ1000メートルのタワーが必要だと聞いたことがあった。
このビルはせいぜい100メートル程度だ。
四季がごちゃ混ぜな上、道路標識やガードレールが存在するその景色は、ここから見えるはずのないものまでが見えていた。
だが、要兄妹やここにいる西日野神社の関係者たちを操っていた者は必ずいるはずだ。
しかも、その者は相当に趣味が悪い。
僕たちが殺し合うのをどこかでいまかいまかと楽しみにしながら見ているはずだった。
「珠莉ちゃん、オキクルミとサマイクル、それに童子切りを出してもらえる?」
魔法少女の姿をした亜美に言われた珠莉は、「はいよっ」と言って、どこかからふたふりの刀と一本の仕込み傘を出した。
組織が開発したという、ギフトを持つ刀だ。
安寿は仕込み傘を手にし、ふたふりの刀は、「これは僕が使わせてもらうよ」学がそう言って手にした。
「今の、どこから出したの? どこでもドア持ってるの?」
瑠璃の問いに、四次元ポケットだろと僕は思った。たぶんその場にいた全員が思っただろう。
「わたしは、現実世界をデジタルイラストみたいにレイヤー分けできるの。背景とか人とか、服とか小物とか。必要なレイヤーだけを残して、いらないレイヤーを抜いたり、欲しいレイヤーを足したりすることが出来るんだ」
「僕たちが誰かに操られてたとしたら、敵は珠莉ちゃんにいつの間にか『クイーン・レイヤード』を使わせて、姿を隠してる可能性があるってわけだね」
「わたしがそのことを認識してないってことは、わたしたちより上位のレイヤーに姿を隠してるってことかな。上位レイヤーにいるその人たちからわたしたちは丸見えだけど、下位レイヤーのわたしたちには上位レイヤーは認識できないから」
随分とややこしい能力があるものだった。
「そこで俺の印鑰童子(いんやくどうじ)と、この童子切りの出番ってわけ」
「それって、穴を空けるだけの能力じゃないの?」
舐めてんの? と安寿は瑠璃に言った。
「安寿くんの能力は、元々は鍵や暗証番号を必要とせずにどんなロックでも開けることができる能力なんだよ」
その能力を使ううちに、彼は鍵がない物体や人体に対しても、鍵がかかっていると認識することによって、鍵を開ける代わりに穴を空ける能力に発展させたのだという。
「上位レイヤーにまでこの力が届くことを教えてくれたのはレンジだったけどな。俺が印鑰童子と童子切りで敵の姿を暴く。あとは頼んだぜ、みんな」
ーーすべてを暴け、印鑰童子! 童子切り!!
何もない、誰もいないはずの空間に、ガラスが割れたようにヒビが入った瞬間、
ーーFAR EAST OF EDEN(ファー・イースト・オブ・エデン(西洋から観た誤った日本観))
藤本花梨アンドールが、ギフトの名を口にしたのが聞こえた。
桜の花びらが狂ったように舞い、僕たちの視界を数秒閉ざした。
僕たちの視界がようやく開けたとき、そこは23階建てのビルの最上階だというのに、無数の桜の木が花を開き、稲が青々とし、まだ実っていない青田が辺りには広がっていた。すすきや鶴の姿も見えた。
時代劇でしか見たことがないような、板葺き屋根の平屋建ての民家もちらほら見えていた。
「戦国時代の日本か? 四季が無茶苦茶だけど……」
そう言ったのは学だ。
「一見戦国時代だけど、山の方に道路標識とか、ガードレールみたいなものも見えるよ」
僕たちはすでに、ギフトによる攻撃を受けているということだろう。
「富士山が見えるよ……何なの、これ……」
「ほんとだ……しかもやけに近いね……」
亜美と珠莉が言う通り、僕たちには今、富士山が見えていた。
名古屋から富士山は直線距離で、確か160キロくらいだ。距離だけで言えば十分見ることはできる範囲にはなるらしい。
だが見えない理由がちゃんとあった。
昔は見えたとか、高層建築物が増えたため見えなくなったとかではなく、昔から山々に阻まれているため見えないのだ。
名古屋から富士山を見るためには、高さ1000メートルのタワーが必要だと聞いたことがあった。
このビルはせいぜい100メートル程度だ。
四季がごちゃ混ぜな上、道路標識やガードレールが存在するその景色は、ここから見えるはずのないものまでが見えていた。
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