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「ヴィランズサイドストーリー」 #55「ヴィランズサイドストーリー 15」
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「僕もすでに操り人形にされている可能性があるからね。でも、君たちは僕と違って、僕以外に操られたりしないだろ? 要ひまりには操られてるふりをしてたみたいだけど」
ーーばれてたんだ?
「バレバレだよ。だって、本当に操られてるなら、君たちは僕を殺すことができたはずだからね」
ーーだから自分が操られる前に、俺たちに自由意思を与えたわけか。知恵を絞ったな、翡翠。
ーー君は本当にギフトに恵まれたね。戦争なんかよりもはるかに多くの人命を奪った疫病を自由自在に操るなんて、神にも悪魔にもなれるギフトだ。
「そうだね。僕が死んだ後、君たちが暴走しないように配慮して、ひとり孤独に死ななきゃいけないのは、我ながらかなり可哀想だと思うけど」
ーーその前に眷属である僕たちを全部使いきってしまえばいいんだよ。使った眷属はもう一度擬人化しない限り、君の眷属に戻ることはない。ただ疫病として人類によって淘汰されるだけ。誰も君には逆らえないような環境さえ作れれば、もうギフトを使う必要もなくなるだろ?
「僕に独裁者になれっていうのか?」
ーーそうだよ。そのために組織は春夏冬梨沙を生きたまま捕らえたんだろう? 宗教戦争の時代は間もなく終わり、すぐにマジョリティとマイノリティの戦争の時代が始まる。マジョリティが勝利した先にあるのは世界統一政府の樹立だ。その絵図を描いたのが藤本だか佳苗だか知らないけど、計画には春夏冬梨沙のギフトが必要不可欠だ。彼女のギフトを使えば、そんな夢物語のような世界を実現させることも不可能じゃない。
ーーその娘は今、誰の庇護下にある? お前だろ、翡翠。お前があの娘を預かったときから、こうなることは決まっていた。玉座にしてはセコイ椅子だが、体にはいいんだろ? パソコンばかりいじってるような社長の椅子ってのは。
ーー神になる者は、まず王になる必要があるからね。神話は王が部下に編纂させるものだし、王は神話を手に入れて、はじめて神の血を引く現人神になる。西日野神社の関係者にでも編纂させるといいんじゃないかな。彼女たちならそれっぽい神話を考えてくれると思うし、僕たちが知る君は、たとえ王になっても独裁者にはならないよ。
ーー夜中やさっきのお前は悪魔そのものだったけどな。悪魔なんてこの世界には山ほどいる。だからお前は神になれ、翡翠。
僕と眷属たちの会話は誰にも聞こえてはいない。それは幸いだと思った。
「お兄ちゃんがもし藤本社長か秘書の佳苗だったら、どうやってわたしたちを潰す? こういう時は、敵ならどうやってわたしたちを潰そうとするか、考えて対策を練るといいんだよ」
ここに全員を集めて、全員を操り人形にし、殺し合いをさせるとかだろうか。
「わたしがコレクションしてたギフトを、ふたつも元に戻させた人が怪しいと思うんだ」
「加藤麻衣のことを言ってるのか?」
「違うよ、お兄ちゃんだよ。夜中に重低音を響かせてた、化け物みたいなカップル、覚えてる? お兄ちゃん、あのふたりを殺しに行ったよね。まるで闇落ちしたみたいに」
瑠璃に見られていたとは思わなかった。
彼女は僕を疑っているのだろうか。
疑われても仕方がないことをしてしまったのだから、仕方がなかった。
「お兄ちゃんがそういう闇が深い性格だってことは、わたしも琥珀ちゃんもずっと前から知ってる。お父さんやお母さんが死んじゃった後の1、2年、大学を辞めて朝から晩まで働いてもわたしたちを食べさせていくだけで精一杯で、何度もわたしたちを捨てて逃げようとしてたことや、自殺しようとしたり、わたしたちと心中しようとしてたこととか、それくらいわたしたちが知らなかったと思う? 今さらそれくらい驚かないよ」
だから、わたしたちはお兄ちゃんが闇落ちしないように役割分担することにしたんだよ、と瑠璃は言った。
瑠璃も琥珀も、本当に僕のことをずっと見ていてくれた。理解してくれていた。
それが何よりも嬉しかった。
ーーばれてたんだ?
「バレバレだよ。だって、本当に操られてるなら、君たちは僕を殺すことができたはずだからね」
ーーだから自分が操られる前に、俺たちに自由意思を与えたわけか。知恵を絞ったな、翡翠。
ーー君は本当にギフトに恵まれたね。戦争なんかよりもはるかに多くの人命を奪った疫病を自由自在に操るなんて、神にも悪魔にもなれるギフトだ。
「そうだね。僕が死んだ後、君たちが暴走しないように配慮して、ひとり孤独に死ななきゃいけないのは、我ながらかなり可哀想だと思うけど」
ーーその前に眷属である僕たちを全部使いきってしまえばいいんだよ。使った眷属はもう一度擬人化しない限り、君の眷属に戻ることはない。ただ疫病として人類によって淘汰されるだけ。誰も君には逆らえないような環境さえ作れれば、もうギフトを使う必要もなくなるだろ?
「僕に独裁者になれっていうのか?」
ーーそうだよ。そのために組織は春夏冬梨沙を生きたまま捕らえたんだろう? 宗教戦争の時代は間もなく終わり、すぐにマジョリティとマイノリティの戦争の時代が始まる。マジョリティが勝利した先にあるのは世界統一政府の樹立だ。その絵図を描いたのが藤本だか佳苗だか知らないけど、計画には春夏冬梨沙のギフトが必要不可欠だ。彼女のギフトを使えば、そんな夢物語のような世界を実現させることも不可能じゃない。
ーーその娘は今、誰の庇護下にある? お前だろ、翡翠。お前があの娘を預かったときから、こうなることは決まっていた。玉座にしてはセコイ椅子だが、体にはいいんだろ? パソコンばかりいじってるような社長の椅子ってのは。
ーー神になる者は、まず王になる必要があるからね。神話は王が部下に編纂させるものだし、王は神話を手に入れて、はじめて神の血を引く現人神になる。西日野神社の関係者にでも編纂させるといいんじゃないかな。彼女たちならそれっぽい神話を考えてくれると思うし、僕たちが知る君は、たとえ王になっても独裁者にはならないよ。
ーー夜中やさっきのお前は悪魔そのものだったけどな。悪魔なんてこの世界には山ほどいる。だからお前は神になれ、翡翠。
僕と眷属たちの会話は誰にも聞こえてはいない。それは幸いだと思った。
「お兄ちゃんがもし藤本社長か秘書の佳苗だったら、どうやってわたしたちを潰す? こういう時は、敵ならどうやってわたしたちを潰そうとするか、考えて対策を練るといいんだよ」
ここに全員を集めて、全員を操り人形にし、殺し合いをさせるとかだろうか。
「わたしがコレクションしてたギフトを、ふたつも元に戻させた人が怪しいと思うんだ」
「加藤麻衣のことを言ってるのか?」
「違うよ、お兄ちゃんだよ。夜中に重低音を響かせてた、化け物みたいなカップル、覚えてる? お兄ちゃん、あのふたりを殺しに行ったよね。まるで闇落ちしたみたいに」
瑠璃に見られていたとは思わなかった。
彼女は僕を疑っているのだろうか。
疑われても仕方がないことをしてしまったのだから、仕方がなかった。
「お兄ちゃんがそういう闇が深い性格だってことは、わたしも琥珀ちゃんもずっと前から知ってる。お父さんやお母さんが死んじゃった後の1、2年、大学を辞めて朝から晩まで働いてもわたしたちを食べさせていくだけで精一杯で、何度もわたしたちを捨てて逃げようとしてたことや、自殺しようとしたり、わたしたちと心中しようとしてたこととか、それくらいわたしたちが知らなかったと思う? 今さらそれくらい驚かないよ」
だから、わたしたちはお兄ちゃんが闇落ちしないように役割分担することにしたんだよ、と瑠璃は言った。
瑠璃も琥珀も、本当に僕のことをずっと見ていてくれた。理解してくれていた。
それが何よりも嬉しかった。
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