空想お仕事シリーズ・ボーイズサイド「僕は今日も人の死を笑いに行く」「死神のタナトーシス」「赤ワインとチーズとブロッコリーのトリアージュ」他

あめの みかな

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「ヴィランズサイドストーリー」 #54「ヴィランズサイドストーリー 14」

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瑠璃は僕のシャツだけ着ると、

「お兄ちゃん、もうちょっと筋肉つけた方がいいよ。おなか、たぷたぷだよ」

ジャケットを返してきた。

「まだ、下の階を全部制圧してないけど、仕方ないか」

瑠璃が一階から二階、三階へと向かわせていた蜂や蟻の群れのことだろう。

「彼女たちの疑いを晴らすのが先だよ。ここで殺されかねないからね」

「ひとり、殺る気満々の人がいるみたいだし、仕方ないか」

瑠璃は加藤麻衣に嫌味を言うと、

ーーふたりを元に戻して、タケハヅチ。

セーラー服とカーディガンが糸に戻り、日永 彰と鳥井安寿の姿を形作っていった。
琥珀を材料にしたリボンだけが残され、瑠璃はそれを回収した。
ふたりの姿をこの目で見るのは初めてだった。

「ここは……?」
「俺たち、いきなり出てきた機織り機に糸にされて……」

どうやらふたりは、衣類にされていたこの2ヶ月、完全に意識がなかったようだった。
意識があったとしたら、それはそれで問題だったけれど。2ヶ月も僕の妹の制服になっていたわけだからだ。

「ここは、オーバードールズジャパンの社長室だよ。2ヶ月ぶりだね、アキラ、それに安寿くん」
「2ヶ月……? そんなに経ってるのか……」
「じゃあ、そこに転がってるのが、組織のトップだっていう藤本か? 俺たちに硲や鬼頭を殺させてテロリストに仕立てあげた……」
「そうみたいだよ。飛行機事故の後から蓮司くんや梨沙ちゃんの面倒を看てくれてた刑事さんを自殺させたのもね」

何かがおかしい気がした。
藤本社長や佳苗がギフトを持っていなかったこともそうだが、要 雅雪と要 ひまりのことだ。
あのふたりは、なぜこの最上階フロアからエレベーターで一階に降りてきたのだろう。
僕たちが一階で暴れていたからだろうか。
あのふたりは、会社や組織を乗っ取るつもりだと言っていた。
僕たちの始末など、この4人に任せればいいはずだった。
なぜこの4人がここに残っていたのだろう。

まるでゲームでラスボスの前に倒さなければいけない四天王のようだった。

要 ひまりは本当に「オーバードールズ」のギフトを持っていたのだろうか。
あのふたりこそ、操り人形にされていたんじゃないだろうか。

「お兄ちゃんも気づいたみたいだね」

どうやら瑠璃は僕よりも先に気づいていたようだった。

「あぁ、すぐにあのふたりの死体の顔、確認した方がいいだろうね」

「もし、他人の顔を変えられるギフトの持ち主がいたら意味ないけど」

藤本社長か佳苗か、どちらかはおそらくまだ生きている。
生きている方が「オーバードールズ」の本当の持ち主だろう。

僕は社長の、瑠璃は佳苗の死体に駆け寄り、ふたりの体をひっくり返した。

「君たち、これを社長やその秘書だと本気で信じてたのか?」

その死体は、金髪ボインの美女でも、着物が似合いそうな姫カットの大和撫子でもなかった。

「だとしたら、まじで一回病院行った方がいいよ。目か頭か知らないけど」

女装させられた小汚い男がふたり、死んでいるだけだった。


「御手洗翡翠の名において、我がすべての眷属たちに命じる」

子どもの頃読んだ漫画に、似たような台詞で契約した魔物を召喚する不老不死の体を持つ主人公がいた。
その漫画は父が好きで学生時代から集めていたものだった。父は漫画の趣味だけはよかった。
このギフトを手に入れたときから、いつかずっと真似をしたいと思っていた。

「僕と瑠璃と琥珀、それからりさに危害を加える者、加えようとする者を、その場で葬ることを許可する」

僕は眷属の病や怪我たちにそう命じた。

ーー俺たちの判断で殺っちまっていいんだな?

「僕もすでに操り人形にされている可能性があるからね。でも、君たちは僕と違って、僕以外に操られたりしないだろ? 要ひまりには操られてるふりをしてたみたいだけど」

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