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「導かれなかった者たちへ」#22「要 雅雪編 4」
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ゲームの参加者を見分ける方法は簡単だ。
教室で大人しく席についているかどうかだ。まるでマネキンのように椅子に座る姿勢が良く、真っ直ぐ教師や黒板を見つめている。隣や前後の席の生徒と無駄話をしたりしない。
参加者は俺たちと同じように担任教師のスマホに入っている『キェルケゴール』の影響を受けていない。だから立てるし、教師や黒板以外の方に顔を向けることができる。
つまり、大和省吾もゲームの参加者だということだった。
そして、彼の手元に本が3冊あるということは、校内放送の男と襟足男もこの教室にいるということだ。
「1年の子? ちゃんと本は持ってきた?」
女の子の声がした。
ーー細切れ、インフラレッド・セクシービームス。
女の子のその声を合図に、教室内には赤外線のような赤い光の線が張り巡らされた。
怪盗が登場するアニメなんかで、宝石が盗まれないように警察が美術館に仕掛ける罠のように見えた。
だが、そんな生易しいものではないとすぐに気付かされた。
線上にいた生徒たちの体が貫かれ、力なく倒れたその体が細切れになり、サイコロステーキのように床に散らばったからだ。
「バイオハザードの映画かよ」
思わず俺は呟いていた。奇跡的になのか、意図的になのかはわからないが、赤い光の線は俺の体を避けてくれていた。
大和省吾の体も避けていたことから、それが意図的だということはすぐにわかった。
「これで、あなたはもう一歩も動くことはできないよ。サイコロステーキになりたくないでしょ?」
確かに一歩も動けそうになかった。
ユナイテッドアローズ・イグナイテッドを出すことは出来そうだが、矢を放つ動作までは出来そうになかった。
その声は、大和省吾にも「動いちゃダメだよ」と優しく告げた。
彼のすぐそばの席に座っていた男子が立ち上がり、俺にゆっくりと近づいてきた。
男子ではなく、男子の制服を着た背の高い女子だった。
どうやらこのギフトの持ち主らしく、彼女が赤い光の線に触れても、その体がサイコロステーキのようになることはなかった。
俺の胸ポケットから生徒手帳を取り出すと、
「1年2組の、要 雅雪くんって言うんだ? 綺麗な名前だね。私は2年3組の鞍田りゆ(くらた りゆ)。よろしく」
「あのママがヤンキーのガキみたいな、襟足の長い髪型はカツラだったわけだ」
「そうそう。なかなか似合ってたでしょ? それで、要くん、本はどこかな? もちろん、持ってきてるんだよね?」
「持ってきてると思うか?」
「よくない態度だなぁ~。わたし、一応先輩だよ? 悪い子にはお仕置きしないと。ね? いちほ」
いちほというのは、仲間の名前だろう。
「やっぱ、男はダメだね。頭悪すぎ。下半身でしか物を考えられないんだもんね。男はさ、男に生まれた時点で生まれてきた意味も生きる価値もないんだよ」
校内放送で聞いた男の声が、段々ハスキーボイスの女の子の声に変わっていった。蝶ネクタイもチョーカーもしていないところを見ると、元々男の声が出せる体質のようだった。
「わたしの父親とか男兄弟とか従兄弟も、全員キモオタのクソオスで犯罪者予備軍だし。てか、生きてるだけで犯罪者だし。マジで男には期待なんかしちゃだめなんだよ。こいつみたいに、本を受け取ることくらいしか出来ないの。持ってくることすらできないくらいの馬鹿。それが男って生き物なんだよ」
仲間が控えていることくらいはわかっていた。ただ、それが女だということには驚かされた。
そのくせ、ツイフェミみたいなことを言うものだから、俺の頭は情報の処理が追い付かなかった。
そういえば、ツイッターの名前が変わったが、今でもツイフェミと言うのだろうか。XフェミとかフェミXになってたりするんだろうか。
「わたしと同じ2年3組の柳谷いちほ(やなぎだに いちほ)ちゃん。ご覧の通り、ネットによくいるヤバイ思想の持ち主だよ」
鞍田りゆは、彼女を俺にそう紹介した。
教室で大人しく席についているかどうかだ。まるでマネキンのように椅子に座る姿勢が良く、真っ直ぐ教師や黒板を見つめている。隣や前後の席の生徒と無駄話をしたりしない。
参加者は俺たちと同じように担任教師のスマホに入っている『キェルケゴール』の影響を受けていない。だから立てるし、教師や黒板以外の方に顔を向けることができる。
つまり、大和省吾もゲームの参加者だということだった。
そして、彼の手元に本が3冊あるということは、校内放送の男と襟足男もこの教室にいるということだ。
「1年の子? ちゃんと本は持ってきた?」
女の子の声がした。
ーー細切れ、インフラレッド・セクシービームス。
女の子のその声を合図に、教室内には赤外線のような赤い光の線が張り巡らされた。
怪盗が登場するアニメなんかで、宝石が盗まれないように警察が美術館に仕掛ける罠のように見えた。
だが、そんな生易しいものではないとすぐに気付かされた。
線上にいた生徒たちの体が貫かれ、力なく倒れたその体が細切れになり、サイコロステーキのように床に散らばったからだ。
「バイオハザードの映画かよ」
思わず俺は呟いていた。奇跡的になのか、意図的になのかはわからないが、赤い光の線は俺の体を避けてくれていた。
大和省吾の体も避けていたことから、それが意図的だということはすぐにわかった。
「これで、あなたはもう一歩も動くことはできないよ。サイコロステーキになりたくないでしょ?」
確かに一歩も動けそうになかった。
ユナイテッドアローズ・イグナイテッドを出すことは出来そうだが、矢を放つ動作までは出来そうになかった。
その声は、大和省吾にも「動いちゃダメだよ」と優しく告げた。
彼のすぐそばの席に座っていた男子が立ち上がり、俺にゆっくりと近づいてきた。
男子ではなく、男子の制服を着た背の高い女子だった。
どうやらこのギフトの持ち主らしく、彼女が赤い光の線に触れても、その体がサイコロステーキのようになることはなかった。
俺の胸ポケットから生徒手帳を取り出すと、
「1年2組の、要 雅雪くんって言うんだ? 綺麗な名前だね。私は2年3組の鞍田りゆ(くらた りゆ)。よろしく」
「あのママがヤンキーのガキみたいな、襟足の長い髪型はカツラだったわけだ」
「そうそう。なかなか似合ってたでしょ? それで、要くん、本はどこかな? もちろん、持ってきてるんだよね?」
「持ってきてると思うか?」
「よくない態度だなぁ~。わたし、一応先輩だよ? 悪い子にはお仕置きしないと。ね? いちほ」
いちほというのは、仲間の名前だろう。
「やっぱ、男はダメだね。頭悪すぎ。下半身でしか物を考えられないんだもんね。男はさ、男に生まれた時点で生まれてきた意味も生きる価値もないんだよ」
校内放送で聞いた男の声が、段々ハスキーボイスの女の子の声に変わっていった。蝶ネクタイもチョーカーもしていないところを見ると、元々男の声が出せる体質のようだった。
「わたしの父親とか男兄弟とか従兄弟も、全員キモオタのクソオスで犯罪者予備軍だし。てか、生きてるだけで犯罪者だし。マジで男には期待なんかしちゃだめなんだよ。こいつみたいに、本を受け取ることくらいしか出来ないの。持ってくることすらできないくらいの馬鹿。それが男って生き物なんだよ」
仲間が控えていることくらいはわかっていた。ただ、それが女だということには驚かされた。
そのくせ、ツイフェミみたいなことを言うものだから、俺の頭は情報の処理が追い付かなかった。
そういえば、ツイッターの名前が変わったが、今でもツイフェミと言うのだろうか。XフェミとかフェミXになってたりするんだろうか。
「わたしと同じ2年3組の柳谷いちほ(やなぎだに いちほ)ちゃん。ご覧の通り、ネットによくいるヤバイ思想の持ち主だよ」
鞍田りゆは、彼女を俺にそう紹介した。
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