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第1章 第4話
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局地的な大災害が世界各地で立て続けに起き、世界中に未知の疫病が蔓延したのは、2022年の夏のことだった。
あらゆる災厄は、数百年前に滅亡したアリステラ王国によって仕組まれた。
アリステラの王族の血が途絶えることにより、災厄は終わりを告げる。
SNSに拡散されたそんな根も葉もない噂によって、雨野タカミの妹が世界の生け贄に選ばれた。
まるで魔女狩りだった。
中世の時代ならまだわかる。災害や疫病、飢饉を鎮めるために少女を生け贄に捧げることは珍しくなかったからだ。
だが、これだけ科学が発展した21世紀に、法治国家で起きる事とは到底思えなかった。
まだ14歳の少女の命を最初に狙ったのは、ユーチューバーや「無敵の人」と呼ばれるようになった人々だった。
死刑になりたいからという理由で殺人に手を染める、人生や社会に絶望し、自暴自棄になった人々のことだ。
かつては数年にひとり現れる程度だったが、年々増加傾向にあり年に数人現れるようになっていた。
それ以外の人々は、少女と、彼女を連れて逃げる少年の目撃情報を、面白半分にSNSに投稿する程度だった。
少女には早く死んでほしいが、自分の手は染めたくはない、ユーチューバーや無敵の人が少女を殺してくれるなら万々歳、そんな軽い感覚だったのだろう。
だが、ユーチューバーはすぐに、最終的に殺人動画になるようなものは、規約違反により収益化が見込めないことを悟り、収益化可能な動画に切り替えていった。
無敵の人も、簡単には少女を見つけて殺すことはできないと知り、次々と諦めるようになる。手近なところで無差別に殺人を犯し、本来の目的を果たしては逮捕されていった。
すると今度は、昨日まで普通の学生だったり、会社や役所勤めをしていた人や、パート勤めの子どもを持つ主婦のような、それまではSNSでの情報提供にとどまっていた人々が、ひとりまたひとりと少女の命を狙うようになっていった。
この頃には、テレビのワイドショーや字幕スーパーで少女の目撃情報が扱われるようになった。民放各局だけでなく国営放送まで、どんな番組でもリモコンのdボタンを押せば番組とは関係のない目撃情報を知ることができた。
少女も少年も、顔写真をはじめ氏名や生年月日といった個人情報から、家族の個人情報までが、テレビや新聞、ネットに晒された。
ネットでは少女に比べ彼女を連れて逃げる少年について、あまり本名で呼ばれることはなかった。
少年はSNSを中心に「セカイ系主人公」と揶揄され、「リアルシンジくん(破)」「天気の子の主人公」「ポニョのソースケ」とも呼ばれていた。
『こいつ、彼女の命さえ救えれば、マジで世界や自分がどうなってもいいとか考えてそうだよな』
『今は彼女のために頑張る自分に酔ってる感じなんだろ。夜中に書いた手紙みたいなテンションで生きてんだろな。後で死にたくなるパターン。てか今死ね』
『はた迷惑な破滅願望者』
『ポニョ、ソースケきらい!』
『こいつが一番「無敵の人」だろ』
『そろそろ疑似シン化形態になるんじゃね? いい加減やめとけ。人に戻れなくなるぞ』
『最初から人じゃないだろ。まともな人間なら普通真っ先に彼女殺すか見棄ててるだろ』
SNSではそんな呟きが無数に見られた。
人はここまで醜い生き物だったのかと、改めて思い知らされたのをタカミはよく覚えている。
タカミや彼の両親までが命を狙われ始めたのはこの頃からだ。
次に人としてのタガが外れたのは、未知の疫病に対処していた医療従事者たちや、局地的な大災害に対処していた自衛隊員、そして警察官らだった。
彼らは職務を放棄して、少女と少年の命を狙うようになり、患者や被災者たちは見棄てられた。
少女の命を奪うことこそが、患者や被災者の命を真に救うことになる、というのが彼らの主張であり、それに対し政府もまた何の対処も行わなかった。
あらゆる災厄は、数百年前に滅亡したアリステラ王国によって仕組まれた。
アリステラの王族の血が途絶えることにより、災厄は終わりを告げる。
SNSに拡散されたそんな根も葉もない噂によって、雨野タカミの妹が世界の生け贄に選ばれた。
まるで魔女狩りだった。
中世の時代ならまだわかる。災害や疫病、飢饉を鎮めるために少女を生け贄に捧げることは珍しくなかったからだ。
だが、これだけ科学が発展した21世紀に、法治国家で起きる事とは到底思えなかった。
まだ14歳の少女の命を最初に狙ったのは、ユーチューバーや「無敵の人」と呼ばれるようになった人々だった。
死刑になりたいからという理由で殺人に手を染める、人生や社会に絶望し、自暴自棄になった人々のことだ。
かつては数年にひとり現れる程度だったが、年々増加傾向にあり年に数人現れるようになっていた。
それ以外の人々は、少女と、彼女を連れて逃げる少年の目撃情報を、面白半分にSNSに投稿する程度だった。
少女には早く死んでほしいが、自分の手は染めたくはない、ユーチューバーや無敵の人が少女を殺してくれるなら万々歳、そんな軽い感覚だったのだろう。
だが、ユーチューバーはすぐに、最終的に殺人動画になるようなものは、規約違反により収益化が見込めないことを悟り、収益化可能な動画に切り替えていった。
無敵の人も、簡単には少女を見つけて殺すことはできないと知り、次々と諦めるようになる。手近なところで無差別に殺人を犯し、本来の目的を果たしては逮捕されていった。
すると今度は、昨日まで普通の学生だったり、会社や役所勤めをしていた人や、パート勤めの子どもを持つ主婦のような、それまではSNSでの情報提供にとどまっていた人々が、ひとりまたひとりと少女の命を狙うようになっていった。
この頃には、テレビのワイドショーや字幕スーパーで少女の目撃情報が扱われるようになった。民放各局だけでなく国営放送まで、どんな番組でもリモコンのdボタンを押せば番組とは関係のない目撃情報を知ることができた。
少女も少年も、顔写真をはじめ氏名や生年月日といった個人情報から、家族の個人情報までが、テレビや新聞、ネットに晒された。
ネットでは少女に比べ彼女を連れて逃げる少年について、あまり本名で呼ばれることはなかった。
少年はSNSを中心に「セカイ系主人公」と揶揄され、「リアルシンジくん(破)」「天気の子の主人公」「ポニョのソースケ」とも呼ばれていた。
『こいつ、彼女の命さえ救えれば、マジで世界や自分がどうなってもいいとか考えてそうだよな』
『今は彼女のために頑張る自分に酔ってる感じなんだろ。夜中に書いた手紙みたいなテンションで生きてんだろな。後で死にたくなるパターン。てか今死ね』
『はた迷惑な破滅願望者』
『ポニョ、ソースケきらい!』
『こいつが一番「無敵の人」だろ』
『そろそろ疑似シン化形態になるんじゃね? いい加減やめとけ。人に戻れなくなるぞ』
『最初から人じゃないだろ。まともな人間なら普通真っ先に彼女殺すか見棄ててるだろ』
SNSではそんな呟きが無数に見られた。
人はここまで醜い生き物だったのかと、改めて思い知らされたのをタカミはよく覚えている。
タカミや彼の両親までが命を狙われ始めたのはこの頃からだ。
次に人としてのタガが外れたのは、未知の疫病に対処していた医療従事者たちや、局地的な大災害に対処していた自衛隊員、そして警察官らだった。
彼らは職務を放棄して、少女と少年の命を狙うようになり、患者や被災者たちは見棄てられた。
少女の命を奪うことこそが、患者や被災者の命を真に救うことになる、というのが彼らの主張であり、それに対し政府もまた何の対処も行わなかった。
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