10 / 123
第2章 第2話
しおりを挟む
数日前に街に出たとき、少年は暴徒に襲われそうになっていたひとりの少女を助けた。
駅前の通りにある、とうに閉店した薬局店のシャッターが無理矢理こじ開けられており、その中に少女と暴徒がいた。
暴徒に背後から近づき、後頭部に銃口を突きつけると間髪入れず引き金を引いた。
暴徒には命乞いをさせても無駄だ。その場でもう二度としないと約束をしても、次の日にはまた人を襲う。背後を見せた途端に命を狙ってくる。だから暴徒には一刻の猶予も与える必要はない。
そんなことよりも、少年が考えなければいけないのは、頭蓋骨を弾が貫通した場合、助けたい相手にその弾が当たらないような場所を瞬時に判断し撃つ、ということだけだった。
暴徒を殺した後はすぐに銃をしまうこと、自分はあなたを襲うことはない、と警戒心を解くことも忘れてはいけない。
そうしないと、せっかく助けた相手がその場から逃げ出して別の暴徒に殺されてしまうからだ。少年はそんな風に人も死なせてしまったことが過去に何度かあった。
「あ……ありがとう……ございます……」
恐怖に体と声を震わせて少年を見上げた少女の顔に、少年は見覚えがあった。
言葉を失ってしまった少年は、しゃべることができない代わりに、雨合羽のフードに隠れていた顔を少女に見せた。
「あっ……」
少女もすぐに少年に気づいたらしかった。
少年の名前を呼ぶと、
「何年振りかな……元気に……は、してないよね……」
と、少年を気遣うように言葉を紡いだ。
数年振りに再会したその少女は、山汐リンといい、少年や少年の恋人の中学時代のクラスメイトで、特に少年の恋人とはとても仲が良かった。
「学力テストで毎回学年上位の成績を取る秀才!
おまけにFカップの巨乳美少女!!
ただし、見ての通りの超童顔とこんなにちっちゃいせいで、誰が見ても小学生にしか見えない!!!
何この妖精、全身ぺろぺろしたい!!!!
誰かランドセルと、ブルマか旧式のスク水持ってきて!!!!!」
少年の恋人は、リンのことをそんな風に変態的な表現をして絶賛し、「国民の血の繋がらない妹」と呼んでいた。
自分がタカミの血の繋がらない妹であったことを、その頃の彼女は知らなかったわけだが、血の繋がらないという表現には、性行為が可能という意味が含まれていそうで闇が深かった。
今考えると少年の恋人は少し、いや、かなりヤバい子だった。
リンは、少年と同い年だからすでに成人しているはずだが、あの頃と全く見た目が変わっていないように見えた。
舌足らずの声も相変わらずだ。
髪型が少し変わったくらいだろうか。
セーラー服を着ているところしか見たことはなかったが、私服が手に入りづらいからなのか、彼女が着ているのは小学生が着ていそうな、いわゆる女児服というやつだった。
きっと彼女が生きていたなら、今度こそ全身ぺろぺろされていたことだろう。
そんなことを思うと、自然に笑みがこぼれた。
「あっ、今、このロリ巨乳、全然見た目変わってないなって思ったでしょ!?」
頬を膨らませてぷんすかと怒ったふりをするリンに、少年はジェスチャーで、言葉を話せなくなってしまったことを伝えた。
「そっか……やっぱり大変な思いをしたんだね……」
涙ぐむリンに、ロリ巨乳についてはそっくりそのまま思ったことを伝えた。
「むしろ合法ロリ巨乳に進化しただとーー!!」
そこまでは思ってない。いや、思った。
リンは、同じく中学時代の同級生のマヨリと行動を共にしているということだった。
マヨリという少女も、少年の恋人の友人だった。学級委員をしたり生徒会に入ったり、しっかりした性格で面倒見の良い美人だった。
マヨリはどこかとジェスチャーで尋ねると、
「あのね、わたしね……」
リン曰く、何日か前に彼女は野犬にかまれてしまい、マヨリとふたりでこの薬局に消毒薬や鎮痛剤などがないか探しに来たということだった。
だが、店内には医薬品の類いはどこにもなかったという。
災厄前にすでに閉店していた店だから、あらかじめなかったか、あるいはすべて持ち出されたかまではわからなかった。
その後マヨリはひとりでリンのために医薬品を探しに行ったのだが、何日たっても戻って来ないという。
少年はマヨリはすでに暴徒に殺されてしまっているのだろうと思った。
しかし、そんなことはリンには伝えられなかった。
駅前の通りにある、とうに閉店した薬局店のシャッターが無理矢理こじ開けられており、その中に少女と暴徒がいた。
暴徒に背後から近づき、後頭部に銃口を突きつけると間髪入れず引き金を引いた。
暴徒には命乞いをさせても無駄だ。その場でもう二度としないと約束をしても、次の日にはまた人を襲う。背後を見せた途端に命を狙ってくる。だから暴徒には一刻の猶予も与える必要はない。
そんなことよりも、少年が考えなければいけないのは、頭蓋骨を弾が貫通した場合、助けたい相手にその弾が当たらないような場所を瞬時に判断し撃つ、ということだけだった。
暴徒を殺した後はすぐに銃をしまうこと、自分はあなたを襲うことはない、と警戒心を解くことも忘れてはいけない。
そうしないと、せっかく助けた相手がその場から逃げ出して別の暴徒に殺されてしまうからだ。少年はそんな風に人も死なせてしまったことが過去に何度かあった。
「あ……ありがとう……ございます……」
恐怖に体と声を震わせて少年を見上げた少女の顔に、少年は見覚えがあった。
言葉を失ってしまった少年は、しゃべることができない代わりに、雨合羽のフードに隠れていた顔を少女に見せた。
「あっ……」
少女もすぐに少年に気づいたらしかった。
少年の名前を呼ぶと、
「何年振りかな……元気に……は、してないよね……」
と、少年を気遣うように言葉を紡いだ。
数年振りに再会したその少女は、山汐リンといい、少年や少年の恋人の中学時代のクラスメイトで、特に少年の恋人とはとても仲が良かった。
「学力テストで毎回学年上位の成績を取る秀才!
おまけにFカップの巨乳美少女!!
ただし、見ての通りの超童顔とこんなにちっちゃいせいで、誰が見ても小学生にしか見えない!!!
何この妖精、全身ぺろぺろしたい!!!!
誰かランドセルと、ブルマか旧式のスク水持ってきて!!!!!」
少年の恋人は、リンのことをそんな風に変態的な表現をして絶賛し、「国民の血の繋がらない妹」と呼んでいた。
自分がタカミの血の繋がらない妹であったことを、その頃の彼女は知らなかったわけだが、血の繋がらないという表現には、性行為が可能という意味が含まれていそうで闇が深かった。
今考えると少年の恋人は少し、いや、かなりヤバい子だった。
リンは、少年と同い年だからすでに成人しているはずだが、あの頃と全く見た目が変わっていないように見えた。
舌足らずの声も相変わらずだ。
髪型が少し変わったくらいだろうか。
セーラー服を着ているところしか見たことはなかったが、私服が手に入りづらいからなのか、彼女が着ているのは小学生が着ていそうな、いわゆる女児服というやつだった。
きっと彼女が生きていたなら、今度こそ全身ぺろぺろされていたことだろう。
そんなことを思うと、自然に笑みがこぼれた。
「あっ、今、このロリ巨乳、全然見た目変わってないなって思ったでしょ!?」
頬を膨らませてぷんすかと怒ったふりをするリンに、少年はジェスチャーで、言葉を話せなくなってしまったことを伝えた。
「そっか……やっぱり大変な思いをしたんだね……」
涙ぐむリンに、ロリ巨乳についてはそっくりそのまま思ったことを伝えた。
「むしろ合法ロリ巨乳に進化しただとーー!!」
そこまでは思ってない。いや、思った。
リンは、同じく中学時代の同級生のマヨリと行動を共にしているということだった。
マヨリという少女も、少年の恋人の友人だった。学級委員をしたり生徒会に入ったり、しっかりした性格で面倒見の良い美人だった。
マヨリはどこかとジェスチャーで尋ねると、
「あのね、わたしね……」
リン曰く、何日か前に彼女は野犬にかまれてしまい、マヨリとふたりでこの薬局に消毒薬や鎮痛剤などがないか探しに来たということだった。
だが、店内には医薬品の類いはどこにもなかったという。
災厄前にすでに閉店していた店だから、あらかじめなかったか、あるいはすべて持ち出されたかまではわからなかった。
その後マヨリはひとりでリンのために医薬品を探しに行ったのだが、何日たっても戻って来ないという。
少年はマヨリはすでに暴徒に殺されてしまっているのだろうと思った。
しかし、そんなことはリンには伝えられなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる