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第3章 第1話
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災厄により国内すべての発電所が停止してからというもの、テレビ放送はすでに行われてはいなかった。
テレビは自家発電が可能なごく一部の富裕層が、過去に録画した番組やDVDやブルーレイを観るためや、テレビゲームを遊ぶためのものでしかなかった。
パソコンやスマホ、タブレットも、その使い道はネットを使用しないものに限られていた。
携帯ゲーム機の類いもそうだ。
スマホは通話することもできなくなっていた。
タカミと少年が住むマンションでは、テレビやパソコンはコンセントから電源ケーブルが抜かれていたし、スマホやタブレットは充電が切れてからは、充電することなくほったらかしにされていた。
にも関わらず、それらに一斉に電源が入り、少女に瓜二つの少女が映し出されたのだ。
少年がかつてのクラスメイトを藤公園に埋葬してから数日後、それは突然起きた。
「ユワ……?」
少年はテレビに向かって少女の名前を呼んだ。
雨野ユワ。
雨野家の養女となる前の旧姓は、神代(かみしろ)。
数年間一度も声を発することができなかった少年の口から発せられた声は、ひどくかすれていた。
だが、生前の彼女の名前を呼んでいたときのように、優しい呼び方だった。
テレビに映る少女は、ゴシックロリータにスチームパンクを掛け合わせたような荘厳な衣装に身を包んでいた。
その顔は、間違いなく少年が愛し、その手にかけた少女のものであり、そして、間違いなくタカミの妹のものだった。
「あり得ない……」
タカミは思わずそう呟いていた。
そう、あり得ないことがいくつも起きていた。
彼の妹は死んだはずなのだ。
その死亡は少年だけでなく、彼自身も確認し、その場に居合わせた一条刑事も確認している。
行方不明になっていたとはいえ、遺体は遺体だ。
冷凍保存された遺体を解凍したところで、妹が生き返るわけはなかった。
生きた人間をコールドスリープし解凍するのとはまるで違うのだ。
あり得ないのはそれだけではない。
テレビは電源ケーブルが抜かれたままなのだ。電源が入るはずがなかった。
これが国内すべて、いや、世界全体で起きているとしたら、電力を必要とせずあらゆる電子機器が動くという、世界の理から外れた現象が起きていることになる。
それはもはや、神の神業だった。
「わたしは、新生アリステラ王国の女王、アリステラピノア」
顔だけでなく、声までがユワと同じだった。
「かつて極東の島国に住み、アリステラの王族の最後の末裔として、雨野ユワと呼ばれていた者です」
違うのは話し方だ。
その口調は、いかにも高貴な身分の人物のものであり、タカミが知るユワとは明らかに異なっていた。
表情もまるで違っていた。
9歳の年の差や、タカミ自身が引きこもりだったこともあり、学校などの家以外の場所でのユワがどんな女の子だったのか、彼は知らなかった。
だが、世界中の人々が彼女の命を狙い始めるまでは、ユワはどんなときも明るい性格で、タカミをいつも元気にしてくれた。
あのユワの、明るく元気な女子中学生らしさは、口調からも表情からも感じられなかった。
「ユワ……生きていたんだね……」
しかし、少年の目からは大粒の涙が零れていた。
タカミには彼女がユワであるはずがないと論理的に判断できたが、少年は違っていた。
数年間、ユワを殺してしまったことを悔やみ続けてきた彼にとっては、彼女がユワであることこそが救いなのだ。
その証拠に、彼は失った声を取り戻している。
「まずは、世界中の皆さんと、皆さんを代表して雨野ユワを殺害してくださったひとりの少年、大和ショウゴさんに、心からの感謝の意を表明します」
大和ショウゴ。
それがタカミの横で涙を流す少年の名前だった。
テレビは自家発電が可能なごく一部の富裕層が、過去に録画した番組やDVDやブルーレイを観るためや、テレビゲームを遊ぶためのものでしかなかった。
パソコンやスマホ、タブレットも、その使い道はネットを使用しないものに限られていた。
携帯ゲーム機の類いもそうだ。
スマホは通話することもできなくなっていた。
タカミと少年が住むマンションでは、テレビやパソコンはコンセントから電源ケーブルが抜かれていたし、スマホやタブレットは充電が切れてからは、充電することなくほったらかしにされていた。
にも関わらず、それらに一斉に電源が入り、少女に瓜二つの少女が映し出されたのだ。
少年がかつてのクラスメイトを藤公園に埋葬してから数日後、それは突然起きた。
「ユワ……?」
少年はテレビに向かって少女の名前を呼んだ。
雨野ユワ。
雨野家の養女となる前の旧姓は、神代(かみしろ)。
数年間一度も声を発することができなかった少年の口から発せられた声は、ひどくかすれていた。
だが、生前の彼女の名前を呼んでいたときのように、優しい呼び方だった。
テレビに映る少女は、ゴシックロリータにスチームパンクを掛け合わせたような荘厳な衣装に身を包んでいた。
その顔は、間違いなく少年が愛し、その手にかけた少女のものであり、そして、間違いなくタカミの妹のものだった。
「あり得ない……」
タカミは思わずそう呟いていた。
そう、あり得ないことがいくつも起きていた。
彼の妹は死んだはずなのだ。
その死亡は少年だけでなく、彼自身も確認し、その場に居合わせた一条刑事も確認している。
行方不明になっていたとはいえ、遺体は遺体だ。
冷凍保存された遺体を解凍したところで、妹が生き返るわけはなかった。
生きた人間をコールドスリープし解凍するのとはまるで違うのだ。
あり得ないのはそれだけではない。
テレビは電源ケーブルが抜かれたままなのだ。電源が入るはずがなかった。
これが国内すべて、いや、世界全体で起きているとしたら、電力を必要とせずあらゆる電子機器が動くという、世界の理から外れた現象が起きていることになる。
それはもはや、神の神業だった。
「わたしは、新生アリステラ王国の女王、アリステラピノア」
顔だけでなく、声までがユワと同じだった。
「かつて極東の島国に住み、アリステラの王族の最後の末裔として、雨野ユワと呼ばれていた者です」
違うのは話し方だ。
その口調は、いかにも高貴な身分の人物のものであり、タカミが知るユワとは明らかに異なっていた。
表情もまるで違っていた。
9歳の年の差や、タカミ自身が引きこもりだったこともあり、学校などの家以外の場所でのユワがどんな女の子だったのか、彼は知らなかった。
だが、世界中の人々が彼女の命を狙い始めるまでは、ユワはどんなときも明るい性格で、タカミをいつも元気にしてくれた。
あのユワの、明るく元気な女子中学生らしさは、口調からも表情からも感じられなかった。
「ユワ……生きていたんだね……」
しかし、少年の目からは大粒の涙が零れていた。
タカミには彼女がユワであるはずがないと論理的に判断できたが、少年は違っていた。
数年間、ユワを殺してしまったことを悔やみ続けてきた彼にとっては、彼女がユワであることこそが救いなのだ。
その証拠に、彼は失った声を取り戻している。
「まずは、世界中の皆さんと、皆さんを代表して雨野ユワを殺害してくださったひとりの少年、大和ショウゴさんに、心からの感謝の意を表明します」
大和ショウゴ。
それがタカミの横で涙を流す少年の名前だった。
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