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第3章 第2話
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テレビに映る新生アリステラ王国の女王アリステラピノアは、かつてのユワである。
だが、そのユワはショウゴが殺した。
アリステラピノアの言葉は大きく矛盾していた。
ショウゴがユワを殺したから、アリステラピノアが生まれた、ということだろうか。
だが、その場合、ユワの死は精神的、人格的なものでなければならないはずだ。
肉体的な死からは別人格は生まれない。
タカミには理解できないことばかりだった。
きっと今頃、一条刑事も困惑していることだろう。スマホが使えず、連絡が取れないことが歯がゆかった。
いや、もしかしたら使えるのかもしれない。
ショウゴを一瞬でもひとりにするのは不安だったが、タカミは自室にスマホを取りにいくことにした。
もう何年も触れることすらしなかったスマホを一体どこに置いたのか記憶になかったが、すぐに見つかった。スマホもタブレットも、パソコンのそばにあった。
電源ケーブルが抜かれたパソコンのモニターにも、同じ映像が流れていた。モニターだけではなくパソコン自体が起動していた。
スマホの画面にも同じだ。
だがスマホ充電は0%のままだった。充電されているわけではないが、電力とは別の方法で起動しているということだ。おそらくテレビやパソコンもまた。
4G回線にもWi-Fiにも繋がってはいないが、映像は何らかの手段で送られてきている。
だからといって、送ることができるかどうかは別問題だ。この通信手段はこちらが受けとることが可能なだけの一方的なものかもしれない。
だが、試してみる価値はあった。
ホームアイコンに触れると、映像からホーム画面に切り替わった。ハッキングされていて、映像を見ることしかできない可能性もあったが、どうやらそこまではされていないようだった。
無料通話アプリを開くと、一条刑事やユワだけでなく、懐かしい名前がそこにあった。
タカミにハッカーとしてのイロハを教えてくれた小久保ハルミだ。
直接会ったことはなかったが、彼女は一時期世間を賑わせた有名な科学者であり、本人である証明としてビデオ通話をしてくれたこともあった。タカミの初恋の相手だった。
ユワから紹介されたマヨリやリンという友達の名前もあった。
「わたしは皆さんに謝罪しなければいけないことがあります。
それは、数年前から起きている世界中のあらゆる災厄についてです」
パソコンのモニターやタブレットでは、アリステラピノアの演説は続いていた。
懐かしさに耽っている場合ではなかった。
『一条さん、テレビかスマホを観ているか?』
タカミは一条刑事にチャットメッセージを送信した。
すぐに既読になり、返事があった。
『観ている。まさかスマホが使えるとは思わなかった。君の柔軟な発想には毎度驚かされるよ』
チャットだけでなく通話も可能だったが、一条刑事にも何が起きているのか全くわからないということだった。
警察という組織自体がもはやあってないようなものであるため、警視庁公安部の所属であった彼は今、実家に戻り自警団のような活動を個人でしているという。
無給で暴徒を鎮圧し、か弱い人々を助けているということだろう。赤の他人のために無給で命をかけられる彼を、タカミは心から尊敬した。
「同じ県内だ。少し時間はかかるだろうが、一度そちらに向かう」
「もし車のカーナビにも映像が映っていたら、たぶん車も動くと思う」
「そうか。一度試してみる」
一条刑事はそう言って通話を切り、タカミはスマホを片手にリビングに戻った。
ショウゴはテレビにかじりつくようにして、アリステラピノアの演説を聞いていた。
「災厄は、確かに数百年前に滅亡を迎えたアリステラ王国が仕組んだものでした。
そして、雨野ユワは間違いなくアリステラの王族の最後の末裔でした。
しかし、雨野ユワを殺し、アリステラの王族の血を途絶えさせればあらゆる災厄が終わるというのは、わたしの部下たちが流したデマです」
いつの間にか、彼女のそばにはひとりの女が立っていた。
その女をタカミは知っていた。
電力もなしでテレビやパソコンを起動させる方法はともかく、世界中の映像端末を同時にハッキングするくらいのことは、彼女にとっては容易いことだろう、と納得してしまう自分がいた。
彼女が、現代人ではなくアリステラの側についた理由も理解できた。
「アリステラの王族の最後の末裔の死によって、あらゆる災厄は加速し、肥大化し、世界は終焉を迎える。
それが、滅亡を間近に控えたアリステラが仕組んだプログラムでした。
あなたたちにこれまで通りこの世界を任せるか、アリステラが再び世界を治めるか、一体どちらがふさわしいか。
それを見定めるために、我々はあなたたちにひとつの選択を迫り、あなたたちの資質を試したのです」
それが、ひとりの少女のために70億の命を犠牲にするか、あるいは70億の命のためにひとりの少女を犠牲にするかという選択だったということだろう。
「この世界の誰もが、ひとりの少女の死を望みました。
犠牲になる少女が、もし自分であったなら、もし自分の家族や恋人が犠牲にならなければいけなくなったなら、とは考えもしなかった。
あなたたちひとりひとりが、犠牲になる少女やその恋人、家族の立場に立って考えるということを放棄した」
あなたたちは自ら滅びの選択をしたのです、
とタカミがよく知る女性は語った。
アリステラと彼女が仕掛けたブービートラップに、現代人はまんまと引っ掛かってしまったというわけだ。
だが、そのユワはショウゴが殺した。
アリステラピノアの言葉は大きく矛盾していた。
ショウゴがユワを殺したから、アリステラピノアが生まれた、ということだろうか。
だが、その場合、ユワの死は精神的、人格的なものでなければならないはずだ。
肉体的な死からは別人格は生まれない。
タカミには理解できないことばかりだった。
きっと今頃、一条刑事も困惑していることだろう。スマホが使えず、連絡が取れないことが歯がゆかった。
いや、もしかしたら使えるのかもしれない。
ショウゴを一瞬でもひとりにするのは不安だったが、タカミは自室にスマホを取りにいくことにした。
もう何年も触れることすらしなかったスマホを一体どこに置いたのか記憶になかったが、すぐに見つかった。スマホもタブレットも、パソコンのそばにあった。
電源ケーブルが抜かれたパソコンのモニターにも、同じ映像が流れていた。モニターだけではなくパソコン自体が起動していた。
スマホの画面にも同じだ。
だがスマホ充電は0%のままだった。充電されているわけではないが、電力とは別の方法で起動しているということだ。おそらくテレビやパソコンもまた。
4G回線にもWi-Fiにも繋がってはいないが、映像は何らかの手段で送られてきている。
だからといって、送ることができるかどうかは別問題だ。この通信手段はこちらが受けとることが可能なだけの一方的なものかもしれない。
だが、試してみる価値はあった。
ホームアイコンに触れると、映像からホーム画面に切り替わった。ハッキングされていて、映像を見ることしかできない可能性もあったが、どうやらそこまではされていないようだった。
無料通話アプリを開くと、一条刑事やユワだけでなく、懐かしい名前がそこにあった。
タカミにハッカーとしてのイロハを教えてくれた小久保ハルミだ。
直接会ったことはなかったが、彼女は一時期世間を賑わせた有名な科学者であり、本人である証明としてビデオ通話をしてくれたこともあった。タカミの初恋の相手だった。
ユワから紹介されたマヨリやリンという友達の名前もあった。
「わたしは皆さんに謝罪しなければいけないことがあります。
それは、数年前から起きている世界中のあらゆる災厄についてです」
パソコンのモニターやタブレットでは、アリステラピノアの演説は続いていた。
懐かしさに耽っている場合ではなかった。
『一条さん、テレビかスマホを観ているか?』
タカミは一条刑事にチャットメッセージを送信した。
すぐに既読になり、返事があった。
『観ている。まさかスマホが使えるとは思わなかった。君の柔軟な発想には毎度驚かされるよ』
チャットだけでなく通話も可能だったが、一条刑事にも何が起きているのか全くわからないということだった。
警察という組織自体がもはやあってないようなものであるため、警視庁公安部の所属であった彼は今、実家に戻り自警団のような活動を個人でしているという。
無給で暴徒を鎮圧し、か弱い人々を助けているということだろう。赤の他人のために無給で命をかけられる彼を、タカミは心から尊敬した。
「同じ県内だ。少し時間はかかるだろうが、一度そちらに向かう」
「もし車のカーナビにも映像が映っていたら、たぶん車も動くと思う」
「そうか。一度試してみる」
一条刑事はそう言って通話を切り、タカミはスマホを片手にリビングに戻った。
ショウゴはテレビにかじりつくようにして、アリステラピノアの演説を聞いていた。
「災厄は、確かに数百年前に滅亡を迎えたアリステラ王国が仕組んだものでした。
そして、雨野ユワは間違いなくアリステラの王族の最後の末裔でした。
しかし、雨野ユワを殺し、アリステラの王族の血を途絶えさせればあらゆる災厄が終わるというのは、わたしの部下たちが流したデマです」
いつの間にか、彼女のそばにはひとりの女が立っていた。
その女をタカミは知っていた。
電力もなしでテレビやパソコンを起動させる方法はともかく、世界中の映像端末を同時にハッキングするくらいのことは、彼女にとっては容易いことだろう、と納得してしまう自分がいた。
彼女が、現代人ではなくアリステラの側についた理由も理解できた。
「アリステラの王族の最後の末裔の死によって、あらゆる災厄は加速し、肥大化し、世界は終焉を迎える。
それが、滅亡を間近に控えたアリステラが仕組んだプログラムでした。
あなたたちにこれまで通りこの世界を任せるか、アリステラが再び世界を治めるか、一体どちらがふさわしいか。
それを見定めるために、我々はあなたたちにひとつの選択を迫り、あなたたちの資質を試したのです」
それが、ひとりの少女のために70億の命を犠牲にするか、あるいは70億の命のためにひとりの少女を犠牲にするかという選択だったということだろう。
「この世界の誰もが、ひとりの少女の死を望みました。
犠牲になる少女が、もし自分であったなら、もし自分の家族や恋人が犠牲にならなければいけなくなったなら、とは考えもしなかった。
あなたたちひとりひとりが、犠牲になる少女やその恋人、家族の立場に立って考えるということを放棄した」
あなたたちは自ら滅びの選択をしたのです、
とタカミがよく知る女性は語った。
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