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第3章 第7話
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どんなに仲良くなっても、タカミにはハルミに聞けないことがあった。
千年細胞のことだ。
あれは本当に世紀の大発見ではなく、彼女は希代の詐欺師だったのだろうか。
タカミには彼女がそんな人間だとはどうしても思えなかった。
そんな人間であったなら、いくら学生時代からの友人だったとはいえ、一条刑事が彼女が紹介したタカミに捜査協力を依頼するようになっただろうか。
彼女は詐欺師などではない。
だから、一条刑事も自分を信じてくれたのだ。
だからタカミは意を決し、ハルミに尋ねてみることにした。
「あれは、発見してはいけない細胞だったの」
ハルミは、タカミにそう告げた。
どうして? と尋ねた彼に、
「世界中の科学者が、誰ひとりあの細胞を再現できなかったというのは嘘。
あの細胞以上のものを作り出した科学者もいるの。
ただの不老不死というだけじゃなく、身体的に最も優れた年齢まで肉体を若返らせたり、欠損した体の一部を何度でも再生することができたり、死後数時間以内なら死んでしまった人を蘇生させることも可能な細胞が作られたの。
けれど、一部の権力者たちが、それらの細胞を独占しようとした結果、わたしや世界中の科学者たちの研究は闇に葬られてしまったの」
世界中の人間が不老不死になるようなことが起きれば、世界の人口は数十年で200億を超えてしまうようになる。100年後には1000億を超えてしまう。
地球は100億の人間が目一杯。
これ以上の人口増加に対応するには、月や火星のテラフォーミングや、起動エレベーターを建造して宇宙空間にスペースコロニーのようなものを作らなければいけない。
だからハルミの研究は、一部の権力者だけが独占することになったのだという。
だけどね、とハルミはパソコンのモニターのビデオ通話のウィンドウの中で笑って、
「わたしの体の中に千年細胞は生きているの。
いつか君にもわたしの千年細胞を分けてあげる。
、、、、、、、、、、
かわいい妹さんにもね」
それから間もなくして、ハルミとは連絡がつかなくなった。
一条刑事にもこの10年以上その行方はまったくわからないということだった。
小久保ハルミが千年細胞を発見した14年前、彼女は28歳だった。
今テレビに映る、42歳になったはずの彼女は、当時よりも若々しく美しく見えた。
それは、化粧やスキンケア、美容整形に疎いタカミにも、美魔女というレベルのものではないことはすぐにわかった。
彼女にはそんなものは必要ないのだ。
より改良された千年細胞によって、身体的に最も優れた年齢まで肉体を若返らせたのだ。
「あの小久保ハルミという科学者は、死後数時間以内の遺体なら蘇生させることが可能な細胞を持っている」
そして4年前、ユワはその死後数時間以内に遺体を冷凍保存された可能性があった。
それは一条刑事に確認すれば、すぐにわかることだろう。
冷凍保存されたユワの遺体は、一年前の輸送中の飛行機がハイジャックされた際に、行方不明になっていた。
小久保ハルミはきっと、あのときのハイジャックに関与している。
ユワに瓜二つのアリステラの新たな女王。そのそばに今、彼女がいることがその証拠だ。
回収した遺体を解凍し、千年細胞によって蘇生措置が施されたのだとしたら。
「あれはユワだ。ユワは生きている」
タカミがそう告げると、ショウゴの涙が止まった。
だが、一度死に、何年も冷凍保存され、その体の細胞のすべてが千年細胞に入れ換えられたユワは、タカミやショウゴが知るユワと言えるのだろうか。
まるでテセウスの船だな、とタカミは思った。
だが、自分たちの身体もまた、この世界に生まれ落ちたばかりの頃の細胞はひとつも残ってはいない。
人に限らず、細胞の分裂と増殖によって身体を成長させ維持する生命体は、すべてテセウスの船なのだ。
千年細胞のことだ。
あれは本当に世紀の大発見ではなく、彼女は希代の詐欺師だったのだろうか。
タカミには彼女がそんな人間だとはどうしても思えなかった。
そんな人間であったなら、いくら学生時代からの友人だったとはいえ、一条刑事が彼女が紹介したタカミに捜査協力を依頼するようになっただろうか。
彼女は詐欺師などではない。
だから、一条刑事も自分を信じてくれたのだ。
だからタカミは意を決し、ハルミに尋ねてみることにした。
「あれは、発見してはいけない細胞だったの」
ハルミは、タカミにそう告げた。
どうして? と尋ねた彼に、
「世界中の科学者が、誰ひとりあの細胞を再現できなかったというのは嘘。
あの細胞以上のものを作り出した科学者もいるの。
ただの不老不死というだけじゃなく、身体的に最も優れた年齢まで肉体を若返らせたり、欠損した体の一部を何度でも再生することができたり、死後数時間以内なら死んでしまった人を蘇生させることも可能な細胞が作られたの。
けれど、一部の権力者たちが、それらの細胞を独占しようとした結果、わたしや世界中の科学者たちの研究は闇に葬られてしまったの」
世界中の人間が不老不死になるようなことが起きれば、世界の人口は数十年で200億を超えてしまうようになる。100年後には1000億を超えてしまう。
地球は100億の人間が目一杯。
これ以上の人口増加に対応するには、月や火星のテラフォーミングや、起動エレベーターを建造して宇宙空間にスペースコロニーのようなものを作らなければいけない。
だからハルミの研究は、一部の権力者だけが独占することになったのだという。
だけどね、とハルミはパソコンのモニターのビデオ通話のウィンドウの中で笑って、
「わたしの体の中に千年細胞は生きているの。
いつか君にもわたしの千年細胞を分けてあげる。
、、、、、、、、、、
かわいい妹さんにもね」
それから間もなくして、ハルミとは連絡がつかなくなった。
一条刑事にもこの10年以上その行方はまったくわからないということだった。
小久保ハルミが千年細胞を発見した14年前、彼女は28歳だった。
今テレビに映る、42歳になったはずの彼女は、当時よりも若々しく美しく見えた。
それは、化粧やスキンケア、美容整形に疎いタカミにも、美魔女というレベルのものではないことはすぐにわかった。
彼女にはそんなものは必要ないのだ。
より改良された千年細胞によって、身体的に最も優れた年齢まで肉体を若返らせたのだ。
「あの小久保ハルミという科学者は、死後数時間以内の遺体なら蘇生させることが可能な細胞を持っている」
そして4年前、ユワはその死後数時間以内に遺体を冷凍保存された可能性があった。
それは一条刑事に確認すれば、すぐにわかることだろう。
冷凍保存されたユワの遺体は、一年前の輸送中の飛行機がハイジャックされた際に、行方不明になっていた。
小久保ハルミはきっと、あのときのハイジャックに関与している。
ユワに瓜二つのアリステラの新たな女王。そのそばに今、彼女がいることがその証拠だ。
回収した遺体を解凍し、千年細胞によって蘇生措置が施されたのだとしたら。
「あれはユワだ。ユワは生きている」
タカミがそう告げると、ショウゴの涙が止まった。
だが、一度死に、何年も冷凍保存され、その体の細胞のすべてが千年細胞に入れ換えられたユワは、タカミやショウゴが知るユワと言えるのだろうか。
まるでテセウスの船だな、とタカミは思った。
だが、自分たちの身体もまた、この世界に生まれ落ちたばかりの頃の細胞はひとつも残ってはいない。
人に限らず、細胞の分裂と増殖によって身体を成長させ維持する生命体は、すべてテセウスの船なのだ。
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