ひとりの少女を守るために70億の命を犠牲になんてできないから、ひとりの少女を犠牲にしてみた結果、事態がさらに悪化した件。

あめの みかな

文字の大きさ
43 / 123

第5章 第8話

しおりを挟む
 アリステラは4年前、野蛮なホモサピエンスに対し、ひとつの選択を迫った。
 その結果、エーテルを雨と共に世界に撒きはじめたというのが本当なら、アンナの能力はその別の存在が持っていたか作り出したかしたエーテルに似た何かによって、与えられたもの、という可能性があった。

 それは、つまり、

「私の能力は、我が教祖や教団をカルト教団と死刑囚に貶めた存在に与えられた……?」

 ということになる。なってしまう。

 アンナの顔が青ざめていた。身体が小刻みに震え、目に涙を浮かべていた。

「まだそうだと決まったわけじゃないです」

 ショウゴが慌ててアンナをフォローしようとすると、

「ねぇ、アンナ。さっきからずーっと、ふたりの話がよくわからないのだけれど、それってこういうことなのかしら?」

 アナスタシアがそう言って、アンナの興味を自分に向けた。

 彼女は手のひらをロビーの窓の方に向けていた。
 その手のひらに翡翠色の光が集まり、テニスボールほどの大きさになっていく。

「アナスタシア様……?」

「それ、何かな……うん……アナスタシアさん……それ、何だろうね……」

 どう見てもエーテルだった。
 アナスタシアの手のひらに集束され、テニスボール大の球体に凝縮されたエーテルは、ボッという音と共に炎を上げて燃え上がった。
 火球は縦3メートル横2メートルはあるであろう大きな窓に向かって飛んでいく。

「アンナさん、なんかやばそうですよ……」

「アナスタシア様、大和さん、伏せて!」

「え? 全然だいじょうぶだと思うんだけど?」

 ショウゴとアンナは、嫌がるアナスタシアに覆い被さるようにして、ソファーを盾に身を伏せた。

 その瞬間、轟音と共に窓が割れ、マンションの前にあった大きな木が一本、一瞬で全焼した。

 その光景をアンナとショウゴは呆然と見ていた。
 アンナとアナスタシアに怪我はない。自分もどうやら大丈夫そうだ。

 安堵するアンナとショウゴを尻目に、アナスタシアはふふんと鼻を鳴らして立ち上がった。

「今のはメラゾーマではない。メラだ」

 何故か勝ち誇った様子だったが、

「アナスタシア様! あなた一体どこの大魔王様ですか!?」

「だってだって! 何だか出来そうだったんですもの!!
 一度でいいから言ってみたいセリフのナンバー8だったんですもの!!」

 アンナに思いっきり叱られると、目に涙を溜めて、そう反論した。
 というか、まだ上に7個もあるのか。全部大魔王クラスのセリフでないことを祈るばかりだった。
 二度と生き返らぬよう、そなたらのはらわたを食らい尽くしてやろう、とかは本当に怖い。やめてほしい。
 世界の半分をくれてやろう、くらいが丁度いい。

「まったく……いつからそんなすごいことできたんですか?」

「え? 物心ついたときからずっとだけど? 知らなかった?」

「知りませんでした。すみませんね!」

 今までアンナに能力を見せなかったのも、今になって見せる気になったのも、きっとアナスタシアなりの優しさなのだろう。

 アンナの顔に笑顔が浮かんでいた。


 トラックがマンションの一階ロビーに突っ込んできたのは、アンナの顔に笑顔が浮かんだ瞬間のことだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

処理中です...