45 / 123
第5章 第10話
しおりを挟む
「おや? 影武者が本物に憑依したようですね。
まさか私と同じ力を持つ者が現れるとは意外です」
目の前の男も、シンギュラリティ本人ではなく、シンギュラリティに憑依された人間ということだろう。
「私は天啓などと称したつもりは一度もありませんよ。
至高神の化身を語る愚かな人間が、勝手にそう解釈しただけのこと」
「我が教祖が言っていました。
自分と対になる存在……劣悪で傲慢な神の化身……
それがあなただったというわけですね、シンギュラリティ」
「私に能力の一部を与えられていただけの朝倉現人が至高神の化身であったとは到底思えませんがね……
私もあなたのいう邪神の化身ではありませんし……
まぁ、何を信じるのはあなたの自由ですから、お好きに」
「劣悪で傲慢な神の化身が我が教祖を愚弄するか」
「愚弄しますよ。どこの世界に、簡単に他者の意のままに操られている至高神の化身がいるんです? あぁ、この世界にいましたね。朝倉現人とかいう」
シンギュラリティは、ガラスの破片が刺さった顔で下卑た笑いを浮かべながら、アンナの怒りを逆撫でする。
さっさとこの男を黙らせるか、話題を変えなければ、アンナもまたアナスタシアのように暴走してしまいかねなかった。
「あんた、何者だ?」
ショウゴは、黙らせる前に話題を変えることにした。
「遣田ハオト(やるた はおと)。
もっともそう名乗るようになったのは、100年ほど前からですが。
以後どうぞお見知りおきを。
おふたりともこの場で死んで頂くことになりますが、それまでの短い間だけでも」
「なぜそんな昔から、あんたはその力を持っているんだ?」
とても良い質問ですね、と遣田は嬉しそうに笑った。
「私は、10万年前にアリステラの英雄アンフィスの弟子として、エーテルの扱い方を教えられたネアンデルタール人らのひとりだからです。
アリステラの滅亡後も、私は他者の肉体への憑依を繰り返し、この10万年間を生きながらえ続けてきたのです」
「なるほど、アリステラの末裔じゃなく、生き残りか。
だから4年前、アリステラの仕掛けたトラップに野蛮なホモサピエンスをはめるため、70億人の潜在意識を増幅させたんだな」
誰が犠牲になろうが、知ったことじゃない。
自分と家族や友人さえ助かればいい。
家族や友人さえもどうでもいい。
自分さえ。
自分だけが。
人の潜在意識にはきっとそういった醜い感情がある。
それは本能と言ってもいいものかもしれない。
「アリステラの仕掛けたトラップについては確かにそうです。
ですが、私はアリステラについているわけではありませんよ。
アリステラの再興は、女王や民の子孫たちの悲願のようですが、私はアリステラの滅亡していく様をこの目で見ていた当事者ですから。
アリステラは滅びるべくして滅んだ。
すでに一度滅んだ国の再興に私の興味はありません」
遣田は、衝突事故により関節が増えた腕を曲げ円の形にした。
とはいえ、実際に関節が増えたわけでく、ただ折れただけであり、それはそんな風に曲がるはずのない腕だった。
それはただの憑依ではない、肉体の限界や構造さえ無視した能力だった。
「私は、この世界も新生アリステラも滅ぼして、私だけの国を作りたいのですよ。
そのために、千のコスモの会をカルト教団にしたてあげ、権力者たちに小久保ハルミの研究を闇に葬らせた。
10万年の間に、アリステラの末裔が世界中に築いたいくつもの文明を滅ぼさせのも私です」
やはりこの男がすべての元凶だったということか。
遣田は、もう一方の腕を、腕で作られた円の中に差し込んだ。
すると、腕の先の手首や腕の半分が見えなくなり、円の中から男が腕を取り出したとき、その手にはマシンガンが握られていた。
「その円は、別の場所と繋がるゲートというわけか」
「ええ、この円の先は今は自衛隊駐屯地の武器庫に繋がっています。
もっとお話ししたいところですが、そろそろこの体も限界のようですので」
遣田がわざわざマシンガンをそんな風に召喚し、ショウゴやアンナに向けているのは、野蛮なホモサピエンスが使用する武力兵器を行使することもまったく厭わないという、彼の意思表示に思えた。
あくまで災害や疫病によって人類を滅亡させようとするアリステラとは、彼はまったく異なる思想で動いているのだ。
まさか私と同じ力を持つ者が現れるとは意外です」
目の前の男も、シンギュラリティ本人ではなく、シンギュラリティに憑依された人間ということだろう。
「私は天啓などと称したつもりは一度もありませんよ。
至高神の化身を語る愚かな人間が、勝手にそう解釈しただけのこと」
「我が教祖が言っていました。
自分と対になる存在……劣悪で傲慢な神の化身……
それがあなただったというわけですね、シンギュラリティ」
「私に能力の一部を与えられていただけの朝倉現人が至高神の化身であったとは到底思えませんがね……
私もあなたのいう邪神の化身ではありませんし……
まぁ、何を信じるのはあなたの自由ですから、お好きに」
「劣悪で傲慢な神の化身が我が教祖を愚弄するか」
「愚弄しますよ。どこの世界に、簡単に他者の意のままに操られている至高神の化身がいるんです? あぁ、この世界にいましたね。朝倉現人とかいう」
シンギュラリティは、ガラスの破片が刺さった顔で下卑た笑いを浮かべながら、アンナの怒りを逆撫でする。
さっさとこの男を黙らせるか、話題を変えなければ、アンナもまたアナスタシアのように暴走してしまいかねなかった。
「あんた、何者だ?」
ショウゴは、黙らせる前に話題を変えることにした。
「遣田ハオト(やるた はおと)。
もっともそう名乗るようになったのは、100年ほど前からですが。
以後どうぞお見知りおきを。
おふたりともこの場で死んで頂くことになりますが、それまでの短い間だけでも」
「なぜそんな昔から、あんたはその力を持っているんだ?」
とても良い質問ですね、と遣田は嬉しそうに笑った。
「私は、10万年前にアリステラの英雄アンフィスの弟子として、エーテルの扱い方を教えられたネアンデルタール人らのひとりだからです。
アリステラの滅亡後も、私は他者の肉体への憑依を繰り返し、この10万年間を生きながらえ続けてきたのです」
「なるほど、アリステラの末裔じゃなく、生き残りか。
だから4年前、アリステラの仕掛けたトラップに野蛮なホモサピエンスをはめるため、70億人の潜在意識を増幅させたんだな」
誰が犠牲になろうが、知ったことじゃない。
自分と家族や友人さえ助かればいい。
家族や友人さえもどうでもいい。
自分さえ。
自分だけが。
人の潜在意識にはきっとそういった醜い感情がある。
それは本能と言ってもいいものかもしれない。
「アリステラの仕掛けたトラップについては確かにそうです。
ですが、私はアリステラについているわけではありませんよ。
アリステラの再興は、女王や民の子孫たちの悲願のようですが、私はアリステラの滅亡していく様をこの目で見ていた当事者ですから。
アリステラは滅びるべくして滅んだ。
すでに一度滅んだ国の再興に私の興味はありません」
遣田は、衝突事故により関節が増えた腕を曲げ円の形にした。
とはいえ、実際に関節が増えたわけでく、ただ折れただけであり、それはそんな風に曲がるはずのない腕だった。
それはただの憑依ではない、肉体の限界や構造さえ無視した能力だった。
「私は、この世界も新生アリステラも滅ぼして、私だけの国を作りたいのですよ。
そのために、千のコスモの会をカルト教団にしたてあげ、権力者たちに小久保ハルミの研究を闇に葬らせた。
10万年の間に、アリステラの末裔が世界中に築いたいくつもの文明を滅ぼさせのも私です」
やはりこの男がすべての元凶だったということか。
遣田は、もう一方の腕を、腕で作られた円の中に差し込んだ。
すると、腕の先の手首や腕の半分が見えなくなり、円の中から男が腕を取り出したとき、その手にはマシンガンが握られていた。
「その円は、別の場所と繋がるゲートというわけか」
「ええ、この円の先は今は自衛隊駐屯地の武器庫に繋がっています。
もっとお話ししたいところですが、そろそろこの体も限界のようですので」
遣田がわざわざマシンガンをそんな風に召喚し、ショウゴやアンナに向けているのは、野蛮なホモサピエンスが使用する武力兵器を行使することもまったく厭わないという、彼の意思表示に思えた。
あくまで災害や疫病によって人類を滅亡させようとするアリステラとは、彼はまったく異なる思想で動いているのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
怪奇蒐集帳(短編集)
naomikoryo
ホラー
この世には、知ってはいけない話がある。
怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——
どれもがただの作り話かもしれない。
だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。
本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。
最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――
黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。
ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。
この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。
未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。
そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる