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第7章 第1話
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ショウゴがアナスタシアを連れて最上階の部屋に戻ってから一時間程が過ぎた頃、タカミもまた部屋に戻った。
その手には、USBメモリが握られていた。
管理人室にあったUSBメモリに先ほど観た映像をコピーしたのだ。
一条にすぐに見せるためのものであり、鳳アンナの二度目の死を知らないアナスタシアにいつか見せるためのものだった。
タカミはことわざや本から引用されるような言葉が、自分の言葉で何も語ることが出来ない者たちによってあまりに濫用され、意味を履き違えられたりもしていることからあまり好きではなかったが、百聞は一見に如かずという言葉に関して言えば、超能力や魔法としか説明がつかないようなことほど、そのことわざにぴったりな事象は他にはないのではないかと思った。
タカミがどれだけ言葉を紡いだところで、ショウゴやアナスタシアが持つ能力や、アンナや遣田ハオトという男が持っていた能力を、一条は信じられはしないだろう。
だがこの映像を一度見れば、信じるしかなくなる。
ショウゴがうまく説明できないと言い、監視カメラの映像を観るように言ったのは、おそらくそう考えたからだ。
タカミが彼らの特殊な能力を信じられたのは、あの映像のおかげだった。
有無を言わせないだけの説得力が、あの映像にはあった。
リビングのソファーで眠るアナスタシアと、そのすぐそばの床で眠るショウゴの手は、どちらが無意識にそうしたのか指をからめるように繋がれていた。
アナスタシアは確か13年前に父親が逮捕されたとき小学校に上がったばかりで確か7歳だったから、今は二十歳だ。
映像を観た限り、あえてお馬鹿さんを演じているのではないのなら、アナスタシアの精神年齢はあまり高くない。きっと教団の人間やアンナが甘やかしすぎたせいだろう。
男より女の子の方が精神年齢は高いというが、ショウゴはまだ18歳だが彼の方がしっかりしている。むしろ彼は、9歳年上のタカミよりもしっかりしていた。
とはいえ、ふたりとも成人こそしているものの、タカミから見ればまだ子どもだ。その様子は微笑ましく見えた。
タカミはアナスタシアに、かつてのユワを重ねて見ていた。
アナスタシアがショウゴを好いているのは映像を観て知っている。
ショウゴに彼女の気持ちに応えるつもりがあるのなら、いつまでもユワに縛られていなくてもいいと思った。
ここでふたり、世界が終わるまで幸せに暮らせばいい、と。
アリステラの女王が、千年細胞によって蘇生処置を施されたユワである可能性は高い。
だが、その人格がユワである可能性は低いだろう。
見た目は同じでも身体中の細胞が千年細胞に入れ替わり、それは脳細胞も例外ではない。
ユワは一度死んでいる。肉体の死が精神の死と必ずしも同時ではないことは、アンナの例の見れば明らかだった。
一度死に、蘇生処置が施されたユワは、アンナとは逆に肉体だけが死を免れ、その精神は死んだまま、新たに生まれた人格がアリステラによって育てられた可能性が十分考えられた。
もはやそれはユワとは言えない。
ユワの精神の欠片のようなものが女王の中に残っているのなら、なんとしてもユワを取り戻すべきだろう。
ユワを取り戻し、アリステラには本来存在すべき異世界に帰ってもらう。
どうすればそれができるかは、タカミの中にもう応えがあった。
アナスタシアが人類を救う鍵だ。
彼女は手のひらにエーテルを集束・凝縮させ、それを火球に変えることができる。おそらく彼女は古代アリステラ人のように、エーテルを炎だけでなく、氷や土、風、雷に変えることも可能だろう。
物心ついたときにはエーテルの扱いにすでに長けていたという彼女ならば、遣田ハオトが使って見せた片腕で作った円状のゲートを、自衛隊駐屯地の武器庫に繋ぎ、そこからマシンガンを拝借するといったことも訓練次第で出来るかもしれない。
アナスタシアが、異世界に繋がるゲートを作り、アリステラを異世界に帰す。
ユワの遺体を蘇生させ、女王に担ぎ上げたアリステラ人の末裔らが潜伏する建物か、あるいは街、あるいはヤルダバという中東の国家ごと、異世界に帰ってもらう。
もはやそれしか人類が助かる道はなかった。
野蛮なホモサピエンスにはもはや軍事力と呼べるものは残されてはいない。
電力を取り戻した世界中の国家が、国家や軍の再編をいくら急いだところで、アリステラの天変地異さえも起こすことが可能な力にはかなわない。
タカミは一条に映像を見せ、その作戦について話し合おうて考えていたが、彼の姿は最上階の部屋のどこにもなかった。
タカミの自室の窓が大きく割れていた。
割れたというよりは、割られていたというべきか。そこから飛び降りたとしか考えられなかった。
飛び降り自殺を図ったのだとしたら、それは彼から小久保ハルミを追いかけるという目的を物理的に奪ってしまった自分たちのせいだろう。
地上60メートルの高さにタカミの部屋はある。ここから飛び降りれば確実に即死だ。
死体を確認するべきだろうか。
タカミは割れた窓から下を覗いたが、雨のせいでよく見えなかった。
その手には、USBメモリが握られていた。
管理人室にあったUSBメモリに先ほど観た映像をコピーしたのだ。
一条にすぐに見せるためのものであり、鳳アンナの二度目の死を知らないアナスタシアにいつか見せるためのものだった。
タカミはことわざや本から引用されるような言葉が、自分の言葉で何も語ることが出来ない者たちによってあまりに濫用され、意味を履き違えられたりもしていることからあまり好きではなかったが、百聞は一見に如かずという言葉に関して言えば、超能力や魔法としか説明がつかないようなことほど、そのことわざにぴったりな事象は他にはないのではないかと思った。
タカミがどれだけ言葉を紡いだところで、ショウゴやアナスタシアが持つ能力や、アンナや遣田ハオトという男が持っていた能力を、一条は信じられはしないだろう。
だがこの映像を一度見れば、信じるしかなくなる。
ショウゴがうまく説明できないと言い、監視カメラの映像を観るように言ったのは、おそらくそう考えたからだ。
タカミが彼らの特殊な能力を信じられたのは、あの映像のおかげだった。
有無を言わせないだけの説得力が、あの映像にはあった。
リビングのソファーで眠るアナスタシアと、そのすぐそばの床で眠るショウゴの手は、どちらが無意識にそうしたのか指をからめるように繋がれていた。
アナスタシアは確か13年前に父親が逮捕されたとき小学校に上がったばかりで確か7歳だったから、今は二十歳だ。
映像を観た限り、あえてお馬鹿さんを演じているのではないのなら、アナスタシアの精神年齢はあまり高くない。きっと教団の人間やアンナが甘やかしすぎたせいだろう。
男より女の子の方が精神年齢は高いというが、ショウゴはまだ18歳だが彼の方がしっかりしている。むしろ彼は、9歳年上のタカミよりもしっかりしていた。
とはいえ、ふたりとも成人こそしているものの、タカミから見ればまだ子どもだ。その様子は微笑ましく見えた。
タカミはアナスタシアに、かつてのユワを重ねて見ていた。
アナスタシアがショウゴを好いているのは映像を観て知っている。
ショウゴに彼女の気持ちに応えるつもりがあるのなら、いつまでもユワに縛られていなくてもいいと思った。
ここでふたり、世界が終わるまで幸せに暮らせばいい、と。
アリステラの女王が、千年細胞によって蘇生処置を施されたユワである可能性は高い。
だが、その人格がユワである可能性は低いだろう。
見た目は同じでも身体中の細胞が千年細胞に入れ替わり、それは脳細胞も例外ではない。
ユワは一度死んでいる。肉体の死が精神の死と必ずしも同時ではないことは、アンナの例の見れば明らかだった。
一度死に、蘇生処置が施されたユワは、アンナとは逆に肉体だけが死を免れ、その精神は死んだまま、新たに生まれた人格がアリステラによって育てられた可能性が十分考えられた。
もはやそれはユワとは言えない。
ユワの精神の欠片のようなものが女王の中に残っているのなら、なんとしてもユワを取り戻すべきだろう。
ユワを取り戻し、アリステラには本来存在すべき異世界に帰ってもらう。
どうすればそれができるかは、タカミの中にもう応えがあった。
アナスタシアが人類を救う鍵だ。
彼女は手のひらにエーテルを集束・凝縮させ、それを火球に変えることができる。おそらく彼女は古代アリステラ人のように、エーテルを炎だけでなく、氷や土、風、雷に変えることも可能だろう。
物心ついたときにはエーテルの扱いにすでに長けていたという彼女ならば、遣田ハオトが使って見せた片腕で作った円状のゲートを、自衛隊駐屯地の武器庫に繋ぎ、そこからマシンガンを拝借するといったことも訓練次第で出来るかもしれない。
アナスタシアが、異世界に繋がるゲートを作り、アリステラを異世界に帰す。
ユワの遺体を蘇生させ、女王に担ぎ上げたアリステラ人の末裔らが潜伏する建物か、あるいは街、あるいはヤルダバという中東の国家ごと、異世界に帰ってもらう。
もはやそれしか人類が助かる道はなかった。
野蛮なホモサピエンスにはもはや軍事力と呼べるものは残されてはいない。
電力を取り戻した世界中の国家が、国家や軍の再編をいくら急いだところで、アリステラの天変地異さえも起こすことが可能な力にはかなわない。
タカミは一条に映像を見せ、その作戦について話し合おうて考えていたが、彼の姿は最上階の部屋のどこにもなかった。
タカミの自室の窓が大きく割れていた。
割れたというよりは、割られていたというべきか。そこから飛び降りたとしか考えられなかった。
飛び降り自殺を図ったのだとしたら、それは彼から小久保ハルミを追いかけるという目的を物理的に奪ってしまった自分たちのせいだろう。
地上60メートルの高さにタカミの部屋はある。ここから飛び降りれば確実に即死だ。
死体を確認するべきだろうか。
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