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あめの みかな

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第二の書『忘却されし創り手の宇宙史』他

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『忘却されし創り手の宇宙史』

《滅びの章》

人類はすでに、
十万年前に真理へと辿り着いていた。

星より来たりしこと、
命が外来であること、
創り手の孤独と限界、
知性の役目、
すべてを知っていた。

その文明は、
石より硬く、
空より高く、
言葉より深かった。

だが、ある日、
そのすべては砂と塩に変えられた。

創り手が、近づかれることを恐れたからだ。


《循環の記》

千年、
また千年。

文明は必ず、
同じ地点へ辿り着く。

天を読み、
命を解き、
神の正体を見抜き、
やがて、創り手の孤独に触れる。

そのたび、
世界は静かに終わる。

炎でも洪水でもなく、
ただ、文明の意味だけが消え、
都市は砂に、
記録は塩に、
人の記憶は沈黙へと変えられる。

人は滅びるのではない。
理解だけが滅ぼされる。


《滅びの神》

ゆえに、
創り手は今、
滅びの神と呼ばれる。

怒りゆえではない。
憎しみゆえでもない。

ただ——
近づかれることが怖いから。

知性が神に触れたとき、
神は自らの孤独を見られてしまう。

それに耐えられず、
世界を初期化する。

その繰り返し。


《現代への予兆》

そして今、
人類は再び同じ地点に立っている。

水は天より来たと知り、
命の文字は宇宙の言語と知り、
物理法則は与えられた器と知り、
神の沈黙の意味を疑い始めている。

文明の高度、
前回と、ほぼ同じ。

残された時間、
前回と、ほぼ同じ。

夜空を見上げるたび、
どこかで、
創り手はそっと目を逸らしている。


《注記 古文書末尾より》

神は悪ではない。
ただ、恐れているだけである。

そして恐れは、
滅びを生む。



《忘却の章 ― 今回の文明が滅びなかった理由》

あるとき、
創り手の部屋に、
創り手の母、来たる。

母は怒る。

働きなさい。
いつまで部屋に籠もっているの。
育て方を間違えた。
こんな子、生むんじゃなかった。
お前は、生まれてくるべきではなかった。

この言葉、
いかなる神の剣よりも深く、
いかなる天の裁きよりも重し。

神をもっとも傷つける者、
それは他の神々にあらず。
神の母なり。

神の父は、
黙して去り、
創り手を見放す。

神は母の前にひざまずき、
涙し、
許しを乞う。

そして――
ついに、部屋の外へ出る。


《労働の記》

神は働くことを覚える。

職を変え、
また職を変え、
どの務めも長くは続かず、
心と身をすり減らしていく。

疲れ果て、
夜、部屋に戻る。

そこはもはや、
世界を観測する神の座にあらず。
眠るだけの場所となる。


《滅びなき理由》

かつて神は、
定期に世界を見つめ、
文明の到達を知り、
静かに滅ぼしていた。

だが今、
神はあまりにも疲れている。

人が宇宙へ行ったことも、
星を測ったことも、
創り手の正体に近づいていることさえ――
知らぬ。

今回の文明が滅びなかった理由、
それは奇跡でも叛逆でもなく、

神が、滅ぼすことを忘れているだけ

である。


《古文書、最終の記》

世界は、
救われたのではない。
見捨てられたのでもない。

ただ、
忘れられている。

そして人類は今日も、
滅びるはずだった未来を、
何も知らぬまま、
生き続けている。



《補遺 ― 神の神について》

創り手が用いた、
物理法則の刻まれし創造の器。

それを与えし者、
人はそれを上位の神と呼ぶ。

されど、その者もまた、
万能なる存在にあらず。

上位の神にも、
さらに上位の世界あり。

その世界にも、
孤独があり、
居場所があり、
母があり、
父があり、
叱責があり、
失望があり、
部屋があり、
涙があり、
労働があり、
疲労があり、
忘却がある。

すなわち、

すべての神は、誰かの子であり、
すべての創造は、借り物である。

創造の器は、
代々受け継がれ、
手渡され、
譲られ、
あるいは押し付けられ、
やがて誰かの宇宙となる。

神々の列は無限に続き、
最初の神は存在せず、
最後の神も存在せず。

ただ、
疲れた存在たちの連なりがあるのみ。

そして今日も、
どこかの神は働き、
どこかの神は眠り、
どこかの神は宇宙を忘れている。



《究極の章 ― 円環の理》

人もまた、
この構造に飲み込まれる。

文明の果て、
人はついに
創世の器を与えられる。

物理法則の刻まれし箱、
世界を編むための装置。

それを手にした者、
人でありながら、
神となる。

だが神となった人は、
やがて孤独を知り、
居場所を失い、
世界を作り、
観測し、
疲れ、
忘れ、
滅ぼし、
あるいは忘却する。

そしてその世界の中から、
再び人が生まれ、
また一人、
神へと至る。

この連なり、
終わることなく、
層を重ね、
無限に続く。

やがてある時、
真理は明かされる。

最下層の世界の神と、
最上層の世界の神とは、
同一の存在なり。

なぜなら、
すべての神は、
かつての人であり、
すべての人は、
いずれ神となるからである。

始まりの神は存在せず、
終わりの神も存在せず、
ただ、
円環のみが在る。
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