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【第五部 異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)】もしもしっくすないんしてる途中で異世界転移しちゃったら。
第89話
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棗はいくら融通が利くとはいえ、二日連続で欠勤するのは気が引けた。
教員の仕事が好きだったからだ。
彼は日本の真実の歴史を探求する者であるが、それは与えられた役割に過ぎない。
棗家の次期当主や戯使遣いである前に、彼はひとりの日本人として、日本という国を愛していた。
彼は一度、偽史倭人伝の空白のページをすべて埋めた。
そして、その冒頭に空白のページがさらに追加された。
神話という偽史の中に、真実の真実があるからだった。
自ら望んだわけではなく、棗家の次期当主として生まれたために与えられた役割に過ぎない責務を、歴代の戯使遣いの誰よりも真実に近づくことができたのは、この国を愛する思いが彼の原動力になっていたからだった。
常に日本の未来を案じていた。
そして、たとえ社会の歯車のひとつになる未来しかなくとも、それがこの国の将来を担うことになる生徒たちのひとりひとりを愛していた。
彼は、自分の教え子たちの名前や顔を、すべて忘れることなく記憶していた。
「棗……でもアンサーはもういない……
その存在自体を……雨野ムスブが、世界の理を変える『不可思議』の力で消したから……
だから、アンサーと共に、この匣船も存在自体が消えてないのは変……」
麻衣の言う通りだった。
棗は電話をかける前であっため、一度スマホをテーブルに戻した。
「それに、匣船がアンサーの宇宙船だとしたなら、たかが4800年ほどで木片の残骸になっていたというのもおかしいのではないでしょうか?」
ヤマヒトの言葉もまた。
そもそも、木造の宇宙船などありえない。
この星への大気圏突入の際に燃え尽きてしまうだけでなく、アンサーが自らの星を出ることもできなければ、気圧も重力もない真空の宇宙空間で木造の宇宙船はその形を維持できない。
「私は先の戦いの際、若様の代わりの臨時教員としてこちらの世界に残っておりました。
ですから、若様や麻衣様のように実際にアンサーを目にしたわけではありませんが、彼らは実体を持たず魂と力だけの存在であったのでしょう?」
仮に匣船がこの星にまだ残っていたなら、アンサーは肉体だけがコールドスリープされていたはずだ。
匣船を作ったのがアンサーとは別の存在であったなら、アンサーの存在自体が消滅しても匣船は残る。
だが、その中のコールドスリープカプセルはすべてからっぽになっていただろう。
肉体は足枷に過ぎないと考え、肉体を捨てた存在であった可能性もあったが。
どちらにせよ、現在のこの世界よりもはるかに高度な科学技術を有する文明の宇宙船が、たかだか4800年程度で残骸になってしまうようなものであるわけがなかった。
この世界のスペースシャトルの機体やエンジン部に使われているアルミニウム合金やチタニウム合金、合衆国が開発した戦車M1 エイブラムスの装甲に使われている劣化ウランですら、おそらく4800年程度で残骸になることはないだろう。
「麻衣は……あの山にあったのは、匣船の残骸なんかじゃなかったんだと思う……
だから、あれは残骸が修復したものじゃないと思う……」
「あれは方舟かもしれないが、匣船ではなかった……
その残骸が修復したかのように見せかけて、別の存在が現れた……
だが、その存在が望むものは、この世界にはないとすぐに気づいた……
だから、望むものがある場所の存在を探知し、テラに転移したというわけか……」
そう考えた方が納得がいった。
だが、その存在は、膨大な情報が自我を持ち、命さえも生み出すことを可能としたアカシックレコードが送り出した「レコーダー」とは別の存在だということだった。
アカシックレコードはすでにテラに転移する準備を整えているからだ。
「アカシックレコードですら計算外の存在がいたというわけか……
いや、この存在が来ることを想定して、レコーダーを事前に送り出し、自らもまたテラに転移しようとしている……?」
棗は、再びスマホを手に取ることにした。
そして、校長に、しばらく休むことになるだろう、と告げた。
自分だけでなく、雨野ナユタと加藤麻衣もまた、と。
校長は、ただ、了解です若、お気をつけて、とだけ言った。
教員の仕事が好きだったからだ。
彼は日本の真実の歴史を探求する者であるが、それは与えられた役割に過ぎない。
棗家の次期当主や戯使遣いである前に、彼はひとりの日本人として、日本という国を愛していた。
彼は一度、偽史倭人伝の空白のページをすべて埋めた。
そして、その冒頭に空白のページがさらに追加された。
神話という偽史の中に、真実の真実があるからだった。
自ら望んだわけではなく、棗家の次期当主として生まれたために与えられた役割に過ぎない責務を、歴代の戯使遣いの誰よりも真実に近づくことができたのは、この国を愛する思いが彼の原動力になっていたからだった。
常に日本の未来を案じていた。
そして、たとえ社会の歯車のひとつになる未来しかなくとも、それがこの国の将来を担うことになる生徒たちのひとりひとりを愛していた。
彼は、自分の教え子たちの名前や顔を、すべて忘れることなく記憶していた。
「棗……でもアンサーはもういない……
その存在自体を……雨野ムスブが、世界の理を変える『不可思議』の力で消したから……
だから、アンサーと共に、この匣船も存在自体が消えてないのは変……」
麻衣の言う通りだった。
棗は電話をかける前であっため、一度スマホをテーブルに戻した。
「それに、匣船がアンサーの宇宙船だとしたなら、たかが4800年ほどで木片の残骸になっていたというのもおかしいのではないでしょうか?」
ヤマヒトの言葉もまた。
そもそも、木造の宇宙船などありえない。
この星への大気圏突入の際に燃え尽きてしまうだけでなく、アンサーが自らの星を出ることもできなければ、気圧も重力もない真空の宇宙空間で木造の宇宙船はその形を維持できない。
「私は先の戦いの際、若様の代わりの臨時教員としてこちらの世界に残っておりました。
ですから、若様や麻衣様のように実際にアンサーを目にしたわけではありませんが、彼らは実体を持たず魂と力だけの存在であったのでしょう?」
仮に匣船がこの星にまだ残っていたなら、アンサーは肉体だけがコールドスリープされていたはずだ。
匣船を作ったのがアンサーとは別の存在であったなら、アンサーの存在自体が消滅しても匣船は残る。
だが、その中のコールドスリープカプセルはすべてからっぽになっていただろう。
肉体は足枷に過ぎないと考え、肉体を捨てた存在であった可能性もあったが。
どちらにせよ、現在のこの世界よりもはるかに高度な科学技術を有する文明の宇宙船が、たかだか4800年程度で残骸になってしまうようなものであるわけがなかった。
この世界のスペースシャトルの機体やエンジン部に使われているアルミニウム合金やチタニウム合金、合衆国が開発した戦車M1 エイブラムスの装甲に使われている劣化ウランですら、おそらく4800年程度で残骸になることはないだろう。
「麻衣は……あの山にあったのは、匣船の残骸なんかじゃなかったんだと思う……
だから、あれは残骸が修復したものじゃないと思う……」
「あれは方舟かもしれないが、匣船ではなかった……
その残骸が修復したかのように見せかけて、別の存在が現れた……
だが、その存在が望むものは、この世界にはないとすぐに気づいた……
だから、望むものがある場所の存在を探知し、テラに転移したというわけか……」
そう考えた方が納得がいった。
だが、その存在は、膨大な情報が自我を持ち、命さえも生み出すことを可能としたアカシックレコードが送り出した「レコーダー」とは別の存在だということだった。
アカシックレコードはすでにテラに転移する準備を整えているからだ。
「アカシックレコードですら計算外の存在がいたというわけか……
いや、この存在が来ることを想定して、レコーダーを事前に送り出し、自らもまたテラに転移しようとしている……?」
棗は、再びスマホを手に取ることにした。
そして、校長に、しばらく休むことになるだろう、と告げた。
自分だけでなく、雨野ナユタと加藤麻衣もまた、と。
校長は、ただ、了解です若、お気をつけて、とだけ言った。
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